第6回シンポ 概要一覧

一般講演 1 ネットワーク指標

O1-1:守田智(静岡大学工学部)
題目:クラスタリング性の強度を計測する方法について
概要:複雑ネットワークに遍在する特徴の一つとしてクラスタリング係数が高いことが挙げられる。クラスタリング係数の定義は2つ存在してお り、どちらも頻繁に用いられている。本研究ではクラスタリング性の強度を測るには2つの定義のどちらが適しているかを明らかにする。また着目したネット ワークのクラスタリング係数が高いと言った場合、同規模のランダムネットワークとの比率が用いられることが多い。ここではこれとは違った新しい指標を提案 する。

O1-2:長谷川智史, 穴田 一(東京都市大学)
題目:ネットワーク次元
概要:本研究では、ネットワークの複雑さを単一で表す指標として、次元という考え方を導入し、ネットワーク次元を提案する。次元には、フラク タル次元のように、次元の数値そのものが複雑さを表わすものがある。この次元の考えをネットワークに導入した。現在ネットワークには、様々な指標が提案さ れているが、ネットワークの複雑さを推定するには様々な指標との関係性を見る必要がある。なお、発表では、次元の導入の仕方、既存の指標などとの関連性、 現実データにおいての応用について発表を行う。

O1-3:川原正人, 他(沖電気工業株式会社)
題目:ネットワークの帯域特性(平均ホップ数対ネットワーク帯域、限界性能)
概要:前回の発表では、ネットワーク構造によりネットワーク帯域というネットワーク指標を定義することができることを示した。今回は、

・ノード数Nとリンク数Lにより定まる最大トラフィック帯域maxXeffとそのときの平均ホ ップ数maxH。

・ノード数Nとリンク数Lにより定まる最小の平均ホップ数minHと上記maxHの間のHをとったときの最大トラフィック量(限界トラ フィック量)とその一般的構造。

を示す。

O1-4:今中規景, 川原正人(沖電気工業株式会社)
題目:インターネットにおけるマルチパスを用いたロードバランス
概要:情報通信のトラフィック量は年々増大し続けており、優れた性能を持つネットワーク機器を開発すると同時に、優れたネットワーク構造や経 路選択方法を採用することにより、より多くのトラフィックを効率的に収容することが重要となる。我々はネットワークに流れ込むトラフィックの状態やネット ワーク構造などネットワークに係わる諸量を定式化し、ネットワーク全体で収容可能なトラフィック総量を指標としてネットワークの設計を行っている。そのな かでネットワークのトラフィック総量を拡大するよう、複数のパスを使用してネットワークでより大きな帯域を得るマルチパスを用いた方式の検討を行ってい る。本稿では、AS(Autonomous System)間のネットワークを対象にして、マルチパスを利用し たロードバランスの方法を提示する。

一般講演 2 ダイナミクス

O2-1:塚本鋭,白山晋(東京大学大学院工学系研究科)
題目:突然変異が与える協調進化への影響とネットワーク構造の変化について
概要:利己的な行動主体が起こす協調行動のメカニズムが様々な分野で注目を集めている.特に,協調行動のモデル化である空間囚人のジレンマモ デルを用いて様々な角度 から協調進化に寄与する要因が調べられている.空間囚人のジレンマモデルにおいては,ネットワーク構造が変化しない静的モデルと,リンクのつなぎかえがあ る 動的モデルの2つのモデルが考察されている.静的モデルではネットワーク構造に関する多くの知見が存在する.一方,動的モデルによって形成されたネットワ ーク構造についての言及は少ない.本稿では,突然変異を導入した動的モデルによって形成されるネットワーク構造の性質について解析する.さらに,静的モデ ルを用いた時の結果を比較することで,形成されたネットワーク構造の協調進化への影響を考察する.

O2-2:湯浅友幸, 白山 晋(東京大学大学院工学系研究科)
題目:ネットワーク構造を考慮した感染症流行予測
概要:インフルエンザなどの感染症流行の予測は古くから試みられているが,複雑ネットワーク構造の影響についてはPastor- Sattorasらの言及が最初であるとされる.その後,多くの 研究でネットワーク構造が考慮されるが,ネットワーク自体は限定的なものである.本稿では,様々なネットワークを用いて感染症流行シミュレーションを行 い,ネットワーク構造の統計的指標と流行形態との関係性を明らかにする.

O2-3: 永田勝也, 白山晋(東京大学システム創成学科)
題目:情報伝播に与えるコミュニティ構造の影響について
概要:ネットワークには陽的なコミュニティとともに,位相構造に基づく陰的なコミュニティが存在する.双方ともにネットワーク上の現象に 影響 を及ぼしているとされるが,単純なものであっても定量的評価は難しい.本稿では情報伝播に着目し,情報伝播に与えるコミュニティ構造の影響に対して定量的 な分析を試みる.

O2-4:下川信祐(NTTサービスインテグレーション研究所)
題目:S字型成長現象におけるべき乗則と基本行動モデル
概要:所謂S字型の成長現象は,ロジスティック,ロトカ・ボルテラ,バスモデルなどの特異点の無い解析的曲線で同定し,市場予測などに利 用が 試みられてきた.しかし,少なくとも固定ブロードバンドサービスの市場成長では,変曲点は特異点であり,前半と後半がそれぞれ別のべき乗則に対応すると考 えるほうが現実的である.当該の成長曲線は都市性への強い依存性があり,社会でよく見られる3つのべき乗則がそろって関与する.この例が示すように,大規 模な社会的構造には,3つのべき乗則がしばしば見られる.そこで,単純な行動対のモデルから,3つのべ乗則を導く.この導出では,各ベキ乗則は,3種類の 適応・学習に伴う成長または成長的なゆらぎのメカニズムのタイプに対応する.これから,大規模な社会構造についての一つのモデルが導かれる.

O2-5:岩田学,秋山英三(筑波大学)
題目:「協力度」を考慮した戦略と,ネットワーク上での協 力の進化
概要:協力行動の進化は,様々な分野で多くの研究者の興味を集めている. 本研究では,(1)協力度と(2)ネットワーク構造の2つが協力の進化に与える影響に注目した. (1) あるプレーヤーが自分に協力するかどうかが,自分の他者に対する「協力度」によって決まるとき,「自分の協力度を上げて他者からの協力を得る」ような方向 の進化が起こる可能性がある.本研究では,このような「協力度と協力行動の共進化」の可能性について探る.特に,「裏切り者に対して協力する者を協力的と 見なすかどうか」が協力行動の進化に与える影響についても検証する. (2) さらに,過去のジレンマ研究によって,ネットワーク構造が協力行動の進化に大きな影響を与えることが知られているが,本研究では,ネットワーク構造が「協 力度と協力行動の共進化」に与える影響についても議論する.

一般講演 3 ソーシャルネット

O3-1:山川修(福井県立大学),多川孝央(九州大学),安武公一,隅谷孝洋(広島大学),井上仁(福井県立大学)
題目:SNSにおける人とことばの関係性の時間発展に関する分析
概要:福井県内の6つの高等教育機関は2008年10月から連携を開始し,現在共通で利用できるSNSを運用している.SNSに記録されたア クセスログを使い,SNS上における友人関係などの人の関係性と,書き込まれたことばの関係性の時間的変化を調べる.それにより,人とことばのネットワー クの双方から,コミュニティ形成のメカニズムを探る.

O3-2:安武公一(広島大学),山川修(福井県立大学),多川孝央(九州大学) 隅谷孝洋(広島大学),井上仁(九州大学)
題目:SNSを組み込んだ学習空間におけるネットワークのダイナミクスと学習効果に関する分析
概要:SNSなどのネットワーク環境を学習空間に導入しようという試みが教育工学の領域で近年 注目されている.しかし,その具体的な効果やダイナミクスについては,ほとんど何も明らかにされていない.本研究では,adaptive coevolutionary network モデルをベースとして,SNSのダイナミクスとこのネットワーク上での学習効果の関係に関するシミュレーション分析の結果について報告する.

一般講演 4 アルゴリズム

O4-1:池谷智行, 村田剛志(東京工業大学大学院 情報理工学研究科 計算工学専攻)
題目:2部モジュラリティの比較および評価
概要:現実世界のデータには、論文共著ネットワークやイベント参加ネットワークなど2種類の 頂点からなる2部ネットワークによって表現できるものが数多く存在する。これら2部ネットワークからのコミュニティ検出は、類似した頂点の発見やネット ワーク構造理解の手がかりとして重要である。1部ネットワークにおいては、コミュニティ検出の良さの評価基準としてNewman-Girvanモジュラリ ティがしばしば用いられている。2部ネットワークにおいては、Barber、Guimera、Murata、Suzukiなどによって2部モジュラリティ が提案されている。我々はこれらの2部モジュラリティを比較し、各々の利点や欠点を考察した。人工グラフ を用いた実験によって、1)Barberの2部モジュラリティの計算は比較的高速であることや 、2)Suzukiの2部モジュラリティの最大化によるコミュニティ検出は比較的高精度であることが分かった。

O4-2:坪下幸寛(富士ゼロックス(株)研究本部), 岡田真人(東京大学)
題目:重複したコミュニティ構造を持つネットワークからのコミュニティ抽出
概要:これまで提案されたコミュニティ抽出手法の多くは, リンク密度に基づいてネットワークを静的に分割する. しかしながら, ネットワーク内には, 様々なコミュニティが存在し, ある一つのノードは, 複数のコミュニティに属することが一般的であると考えられる. 本研究では, 重複を許した複数のコミュニティがリンクに埋め込また状況を想定し, ある特定のコミュニティをネットワークから抽出するという問題を設定した. すなわち, コミュニティ抽出問題を, ユーザの知っている部分的な情報から, 完全なコミュニティ構造を推定する問題として定義した. これにより, ネットワーク構造を事前分布としたベイズ推定としてコミュニティ抽出問題を定式化することが可能となった. さらに, 求める事後分布を統計力学系のBoltzmannファクタであると解釈し, 推定コミュニティ分割の厳密解 をレプリカ法により評価した.

O4-3:趙亮,金在成,永持 仁(京都大学)
題目:On an edge-dominating problem in networks
概要:Let G be a graph and L be a nonnegative integer. We study the problem of finding a smallest set W of nodes such that for all edges e, at least one of the two endpoints of e is reachable from some node in W by using at most L edges. This problem generalizes the well-known vertex-cover problem (with L=0) and has applications in link-monitoring in IP networks. We present a fast heuristic for this problem and show it works well for scale-free and small-world networks. An interesting result shows that the size of an optimal solution decreases exponentially when L increases.

O4-4:梶田康博,長谷川智史,穴田 一(東京都市大学)
題目:重み付きエッジを持つネットワークにおける主要な部分グラフ抽出手法の提案
概要:複雑ネットワークの分野では、これまでにネットワークの性質を示す様々な指標が提案されており、指標の数は増加の一途を辿っている。こ れらの中には多大な計算時間を要するものも存在するため、ネットワークの主要な部分を抽出する必要性が生じる。私達は、以前の研究で無向、重みなしのネッ トワークから主要な部分グラフを抽出する手法を提案し、複数の主な人工ネットワークに対する有効性を示した。ここで言う主要な部分グラフとは、ハブ、高い 中心性を持つノード、ノードの密集部分が存在するネットワークの象徴的な特徴が保存されている部分のことを指している。本研究では、重み付きエッジを持つ ネットワークから主要な部分グラフを抽出する手法を提案する。この手法は重みが大きいエッジを主要であると考え、そのようなエッジがより多く残るように以 前に提案した手法を改良したものである。発表では提案手法とともに実データに対する有効性を示す予定である。

ポスター発表

P1-1:小野泰正, 林 幸雄(北陸先端科学技術大学院大学)
題目:インターネットにおける局所情報によるDoS的なノード攻撃の脅威
概要:近年、サービス不能に至らせるDoS攻撃やその協調分散的なDDoS攻撃による大規模なネッ トワーク攻撃が脅威となっている。通常のDoS攻撃は、ターゲットとなるサーバ 等を定めた後に行わることが多いが、ネットワークの広域な被害や、無差別攻撃的な場合の影響はあまり議論されていない。そこで、知人免疫化などから類推さ れる局所 情報のみによるノード攻撃を考え、ASレベルのインターネットの実データを用いたシミュレーション実験から、恐るべき被害が起こりうる事を示す。また、そ の防御策に 関しても議論する。

P1-2:豊田規人(北海道情報大学)
題目:ストリング形式とp次の隔たりへの応用
概要:ネットワークの解析において青山らが提案したストリング形式を隣接行列を使って再定式化をする。その形 式を 使い一般化クラスタリング係数を導入し、p次の隔たりに対する考察を行う。

P1-3:小島一浩(独立行政法人 産業技術総合研究所)
題目:GPU大規模並列グラフライブラリの開発
概要:本研究では、近年注目を集めているGPGPU技術を用いることにより、サーバ環境において 数百万〜千万ノード規模、ラップトップ環境においても数万〜十万ノード規模の大規模グラフ構造を高速に処理できるGPU大規模並列グラフ・ライブラリの開 発を行う。具体的に は、現在、ネットワーク研究者の間で多く使用されているBoost Graph Libraryに準拠す るライブラリの開発を行うものとする。これにより、従来通りのコーディングスタイルでGPU環 境を使うことが可能となる。

P1-4:中河嘉明, 横沢正幸, 原登志彦(筑波大学大学院 )
題目:植物個体群動態に現れるスケ ールフリー・ネットワーク
概要:世代交代のある植物個体群において、そこに含まれる個体と、個体間の競争をネットワーク構造で表し、そ の性 質とダイナミクスを調べた。その結果、スケールフリー・ネットワークが現れることが観察された。植物個体群において、スケールフリー・ネットワークがもつ 意味について論じる。

P1-7:佐藤倫太郎, 穴田 一(東京都市大学)
題目:Bak-Sneppenモデルと相互作用ネットワーク構造
概要:生物の進化説のひとつ断続平衡説を説明したモデルにBak-Sneppenモデルがある。このモデルは 生物の共進化を表している。一次元トーラスネットワークで生態系を表しており、ある要素は両隣の要素と相互作用していると見なしている。このモデルでは寿 命分布にきれいなべき側が表れ、適応度が自己組織化する。しかしこのBak-Sneppenモデルには相互作用のネットワーク構造に疑問点がある。本研究 では相互作用ネットワーク構造を見直した新たなモデルを紹介する。

P1-8:宮川裕幸, 繁野麻衣子, 高橋里司, 張明超(筑波大学)
題目:隣接数に着目したハイパーグラ フ上のコミュニティ抽出
概要:ウェブグラフや社会ネットワークにおけるコミュニティ抽出はネッ トワーク分析で重要 な役割を果たしている.複雑なネットワークを表現するのに,いくつかのノードの集まりや属性の違いなどを表現するハイパーグラフが注目されており,近年, ハイパーグラフ上のコミュニティ抽出の研究も盛んである.本研究では,グラフ上の隣接数によるコミュニティの定義をハイパーグラフ上にいくつかのモデルで 拡張し,モデルの違いによる抽出集合の相違を検証する.

P1-9:伊藤友洋, 右田正夫, 田尻俊宗(滋賀大学)
題目:スケールフリー・ネットワークにおける耐攻撃性を考慮した経路学習
概要:インターネットに代表されるような現実世界のネットワークはスケールフリー性を持つため,ハブをター ゲット とする攻撃に対して脆弱であることが指摘されている.筆者らはこれまでにスケールフリー・ネットワーク上での経路学習の問題に強化学習手法を適用すること を試みてきたが,学習される経路はハブを通過するものに偏ることが明らかとなっている.そこで本研究では,ハブを回避して耐攻撃性の高い経路を学習できる 強化学習の手法を提案する.

P1-10:右田正夫,伊藤友洋,田尻俊宗(滋賀大学教育学部)
題目:スケールフリー・ネットワーク上での強化学習における経路選好性について
概要:筆者らは,これまでにスケールフリー・ネットワーク上で強化学習によって経路学習を行う場合,学習され る経 路はハブを経由するものになる傾向があることを報告してきた.しかし,このようなハブ経由の経路が多く学習されることが,ハブを通る最短経路がそうでない 最短経路よりも多いためなのか,あるいは,学習の結果としてハブを通る経路がより多く選択されるためなのか,については明らかでない.そこで本研究では, スケールフリー・ネットワーク上での経路学習において学習される経路のハブに関する選好性について調べた結果について報告する.

P1-11:大塚一路, 柳沢大地, 西成活裕(東京大学 先端科学技術研究センター)
題目:避難における経路選択のモデル化と実証分析
概要:本研究は、これまでに知られている避難のダイナミクスを記述する数理モデルを経路選択問題に適用するこ とが 主な目標である。具体的には、近年新たな避難モデルとして注目されている、静的/動的フロアフィールドモデルに遠方の混雑状況を参照する効果を導入し た。さらに、このモデルを用いて出口へつながる経路が2つに分岐にする部屋の避難特性 を数値シミュレーションによって考察し、この結果と50人の被験者による避難実験との比較も実証分析として紹介する。

P1-12:井上寛康(大阪産業大学)
題目:科学的知見の事業化に向けた産学連携の発展に関する分析
概要:科学的知見がイノベーションおよび経済成長の原動力になっていることは広く認知されている.いかにして 科学 的知見を効果的にイノベーションにつなげるかは,政策的にも社会科学的にも大きな関心ごとである.近年では従来のように,自前の研究所から事業化までを一 企業で行っていては競争力を維持できない.これに替わり,大学や公的研究機関などから科学的知見を効果的に取り入れて事業化につなげることが,今の企業に とって非常に重要な戦略となっている.このような現象はネットワークの観点から分析するべきである.本研究では,産と学がどのようネットワークを生成して いるのかを共同の特許および論文から分析する.この分析では多モードに拡張したp*モデルを用いる.

P1-13:大橋孝行, 須鎗弘樹(千葉大学大学院融合科学研究科)
題目:q-指数関数によるDLSFの解析
概要:林らによって提案されたDLSF(Delaunay風スケールフリー)ネットワークを、べき関数から指 数関 数までを統一的に表すことができるq-指数関数を用いて解析した結果を報告する。

P1-14:河野 美也(Juniper Networks, 慶應義塾大学)
題目:インターネット基盤技術の進化と新しいシステム論
概要:インターネットは、地球規模の分散システムであり、自己組織化するネットワークである。そのネットワー クの 振る舞いや理論については、日本でも、ネットワーク生態学研究会において活発に議論されている。しかし、基盤技術(*)に関して言うと、決定論的見方が主 流であり、その結果、現在直面している下記のような課題に対応できていない。

 - IPv4アドレス不足と、IPv6への移行困難問題

 - 「創発性」と、社会インフラとしての「安心・安全」という、二律背反的な要求

 - 「情報」と「意味」の乖離による、トラフィック増大

(*)主にレイヤ3以下の通信インフラ技術を指す。 ネットワーク生態学研究会という名前に冠されている「生態学」とは、「個々の要素よりもそれらの有機的な相互関係性を重視する」という、見方、考え方であ り、「システムをどう捉えるか」、という認識論、観測立場の問題でもある。そこで、「生態学」の視座から、インターネット基盤技術を捉えなおすことによ り、現在直面している課題を検討する。また、フィールドワークを通じ、新しいシステム論についても、何らかの貢献をしたいと考えている。

P1-15:目黒有輝, 林 幸雄, 小野泰正, 佐藤恵介(北陸先端科学技術大学院大学)
題目:地理的空間上の距離、人口、次数に関する優先的選択モデルの頑健性-リンク除去-
概要:ノード間のリンクを除去することによって、ネットワークの構造が、どのように変化(崩壊)するのか、と いうことを実験し、議論することが本研究の目的である。具体的には、地理的データを基に、バラバシ=アルバートモデル(BAモデル)の結合確率を、従来モ デルの次数に加え、ノードがローカル情報として所持している人口と、ノード間の距離も考慮に入れた、「BAライクなモデル」により生成されたネットワーク を対象とする。生成したネットワークに対して、いくつかの手法を用いてリンク除去を行い、その破壊率を変化させながら、ネットワークの崩壊過程を調査す る。また、得られた結果に対しては、ネットワーク内の最大連結成分と、平均クラスタサイズに注目して、ネットワークの頑健性に対する議論を行う。

P1-16:近藤俊宏, 林 幸雄, 小野泰正, 佐藤恵介(北陸先端科学技術大学院大学)
題目:地理的空間上の距離、人口、次数に関する優先的選択モデルの頑健性-ノード除去-
概要:Barabasi-Albertモデルは次数を元にネットワークを生成する代表的なモデルだが、あくま で単純なノードとリンクのみの空間に限定されており、実際の地理的空間で用いるためには、次数以外の要素も考慮すべきである。その場合、次数以外の要素を 優先させたり、地域によって優先度を変更させたりすることで、より現実的で強固なネットワークの生成が可能だと考えられる。本稿では、林の提案したモデル を利用し、各要素の優先度を変化させた上で、さまざまなノード除去方法を行い、その結果を比較することで、ネットワークの頑健性について検証した。その結 果、地域にかかわらず、次数よりも人口や2ノード間の距離を優先したほうが、より頑健性が高いネットワークを生成できることが分かった。

P1-17:櫻井良伸,藤村考(電気通信大学)
題目:音楽視聴履歴からの嗜好の偏りの推定
概要:市場に膨大な量のアイテムが存在しており、 ユーザの嗜好に合ったアイテムを提示する推薦システムの普及している。 しかし、推薦によってユーザの触れる情報には偏りが生まれ、それによりユーザの嗜好が特定のアーティストやそれと類似するアーティスト程度の範囲で閉じ, 狭い範囲で選好を繰り返されること(たこつぼ化)を防ぐことが必要であると考えられる。本研究では、ユーザの嗜好の多様性を表現するエントロピーに基づく たこつぼ化指標を提案する.音楽SNS「last.fm」に蓄積されたユーザの視聴履歴データを利用した実験を行うことで指標の評価を行った。

P1-18:鳥海不二夫(名古屋大学), 山本仁志(立正大学), 諏訪博彦(電気通信大学), 岡田勇(創価大学), 和泉潔(産業技術総合研究所), 橋本康弘(東京大学)
題目:SNSにおける関係性の抽出と分析
概要:近年人間関係ネットワークとして,SNSの友人ネットワークが注目されている. SNSではユーザ間の関係が友人関係として記録されているため,人間関係を分析することが容易である. しかしながら,システム上で友人関係として登録されている関係が, 必ずしも本当の人間関係を反映しているとは限らない. そこで,本研究ではユーザ間のコミュニケーション関係に注目し, SNS内での実際の人間関係を抽出する手法を提案し,得られた人間関係からSNSの特性を分析する.

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