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生物・無生物の自発運動の統一的理解と制御

濵田研究室 HAMADA Laboratory
講師:永井 健(Ken H. Nagai)

E-mail:k-nagaijaist.ac.jp
[研究分野]
生物物理、非線形非平衡物理
[キーワード]
生物運動、アクティブマター、自発運動、集団運動、自己 組織化、散逸構造

研究を始めるのに必要な知識・能力

統計物理、非線形物理、生物物理を学んだことがあると問題のバックグラウンドが理解しやすいです。また、微生物の運動や散逸構造・自己組織化に関する実験経験があれば、スムーズに研究が初められます。ただし、これらは必須ではなく、興味がある方は歓迎します。

この研究で身につく能力

生物物理学の研究手法や解析手法を学ぶことができます。特に熱統計力学や非線形物理などの一見生物とは関係なさそうな分野の手法を用いた研究展開を学ぶことが出来ます。化学・生物学の様々な分野の研究者と共同研究を行っているため、様々なバックグラウンドの研究手法を学ぶことができます。

【就職先企業・職種】大学研究員、食品、化学

研究内容

 魚と鳥は異なる生物種であるにもかかわらず、群運動には同様の構造が見られます。このような自発的に運動する自走粒子の集団に生物・無生物共に成り立つ普遍則があることが明らかになってきました。本研究室では様々な運動する物を使って自走粒子の統一原理を明らかにしていきながら、明らかになった原理を使った自走粒子の制御法確立を目指しています。将来的には傷の治癒時の細胞運動やバイオフィルムなど自走粒子の集団運動を通じた機能発現の制御を目指しています。具体的には下のような研究を行っています。

1.生物の運動

 様々な生物運動を観察および解析し、普遍則を幾つか明らかにしてきました。例えば大腸菌を使い、理論的に予言されながら20年以上現実の実験系では見られていなかった幾つかの普遍則の観 察に成功しました。また、現在線虫とシアノバクテリアの集団運動の研究を進めており、これらの異なる生き物の集団運動が共通の数理モデルで記述できることを明らかにしつつ有ります。
 今後は普遍原理の研究を続けながら、明らかになってきた普遍原理を使った生物集団の運動制御について研究していく予定です。 これまでに光遺伝学を用いて線虫集団に光刺激に対する応答性をもたせることに成功しています。また、植物の遊泳微生物であるクラミドモナスを用い、光刺激を通じた遊泳の制御を試みていま す。これらの運動の刺激応答を数理モデルのシミュレーションを使って予想し、実際の応答挙動と比較しながら制御アルゴリズムを組み立てていく予定です。

2.無生物の自走粒子

 生物・無生物の自発運動の統一原理と生物運動に特有の性質を明らかにするため、無生物で自発運動するシステムを構築し、生物運動と比較しています。
 これまでに脂質の自己組織化構造である人工細胞膜や水性ゲルの交流電場による自発運動を実現しました。また、ガラスに固定されたモータータンパク質に駆動される棒状タンパク質を使って集団運動を研究し、線虫など幾つかの生物集団と同様の構造を作ることを明らかにしました。これらの結果を足がかりに自走粒子の統一的な記述の導出を試みています。


図1. ガラスに固定された分子モーターに駆動される微小管の集団運動(左図)と
C. elegans の集団運動( 右図)。これらは共通の数理モデルでよく再現される。

主な研究業績

  1. D. Nishiguchi, et al., Long-range nematic order and anomalous fluctuations in suspensions of swimming filamentous bacteria. Phys. Rev. E, 95, 20601 (2017).
  2. K. H. Nagai, et al., Collective Motion of Self-Propelled Particles with Memory. Phys. Rev. Lett., 114, 168001 (2015).
  3. Y. Sumino, et al., Large-scale vortex lattice emerging from collectively moving microtubules. Nature, 483, 448–452 (2012).

使用装置

蛍光顕微鏡、位相差顕微鏡
共焦点レーザー顕微鏡
生物培養装置
大規模計算機

研究室の指導方針

本研究室での研究経験を様々な状況で活かすために、行っている研究を論理的に伝える能力の育成を目指します。そのために、こちらからただ指示を与えるのではなく、可能な限り議論をしながら研究の方向性を決めていきたいと考えています。議論の機会を確保するために毎週プログレスミーティングを開き、研究活動の一つ一つについてなぜ行うのかを確認しながら進めていきます。またミーティング以外でも日頃から難易を問わず研究の問題点を議論し、問題解決法をともに探していきたいと考えています。論理的に伝えるためにはバックグラウンドの知識も必要となりますので、実験方法を指導する際にはただやり方を教えるだけでなく、装置の原理や一つ一つの操作を行う理由を丁寧に説明していきます。

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