アクティビティ Activity

イノベーションデザインセミナー

Innovation Design Seminar

ビジネスエスノグラフィの実践と理論

ビジネスエスノグラフィの実践と理論 日時:2017年3月24日
講師:新井田統(KDDI総合研究所 研究員)
講師:水元(大戸)朋子(KDDI総合研究所 研究員)
講師:久保隅綾(GOB Incubation Partners株式会社 Co-Founder)
講師:伊藤泰信 (JAIST 准教授)

 前半は簡単な趣旨説明を伊藤泰信がおこなった後、水元(大戸)朋子氏から「人類学徒によるビジネスエスノグラフィ──企業内エスノグラファの視点から」、新井田統氏から「他分野の研究者が実践するビジネスエスノグラフィ」、久保隅綾氏から「ビジネスエスノグラフィ実践と現場のまなざしの変化──10年の活動の変遷とリフレクションから」、伊藤から「ビジネスエスノグラフィ概観──日本への導入と普及および協働をめぐって」と題して講演をおこなった。

 水元(大戸)氏は、人類学者として訓練を受けた自身がビジネスの現場でエスノグラフィを実践する際に経験する差異(アカデミアとビジネスという界の違いに起因するエスノグラフィ実践の差異や、ビジネスの現場でエスノグラフィを実践する際に生じるさまざまな制約)について考察しながら、エスノグラフィを企業で導入する際の工夫や課題について検討をおこなった。

 新井田氏は、テクノロジー中心の⻘年期から消費者中心の成熟期への概観をおこなった後、エスノグラフィの産業応用のKDDI総合研究所における実践事例(顧客理解、サービス評価、手法開発)が紹介され、文化人類学とは異なる分野の研究者の視点から見た、エスノグラフィのビジネス応用における特徴的な点について話題提供が行われた。

 久保隅氏は、実践事例等を紹介しつつ、自身のビジネスエスノグラフィとのかかわりの10年を振り返りながら、日本の産業界でのビジネスエスノグラフィの活用やまなざしの変化について、社会の要請と理論のせめぎ合いの中、現場を尊重し、真摯に向き合うことの重要性や、エスノグラフィが産業界に受け入れられ、認識され、活用されるようすを、実践事例を通じて紹介した。また、ユーザー理解にとどまらず、ステークホルダーやビジネス構造への理解、人材開発や組織開発での活用等、産業界でのエスノグラフィ応用についての拡がりや、エスノグラフィが持つインパクトやポテンシャルについても言及した。

 伊藤は、日本の産業界に導入され普及しつつあるエスノグラフィの歴史的経緯を概観した上で、1手法としてのエスノグラフィと人類学的なエスノグラフィとの差異を整理しつつ、実務上の諸制約のなかでのエスノグラフィ実践のもつ可能性や、企業研究者とアカデミック(人類学者)との協働のあり方をめぐって議論をおこなった。

 後半は、エスノグラフィの可能性と今後の展開、企業エスノグラファとアカデミックとの協働のあり方などをめぐって、聴講者を交えたフリーディスカッションの時間を設けた。学内・一般参加者を含め、44名の参加があり、時間を延長して活発なやりとりがおこなわれた。

(なお、本セミナーは、日本文化人類学会課題研究懇談会「応答の人類学」研究会の後援のもとにおこなわれた。)

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講師紹介

新井田 統(にいだすまる) KDDI総合研究所 研究員 
1996年KDD(現KDDI)に入社以来無線信号処理技術の研究に従事する。2006年よりコミュニケーションサービスのユーザー心理評価手法の研究に取り組む。現在は、心理学的知見に基づくユーザーセントリックなアプローチによるコミュニケーションサービスの品質評価、およびUCDによるサービス開発手法の研究に従事する。

水元(大戸)朋子(みずもと(おおと)ともこ) KDDI総合研究所 研究員 
2007年に北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)博士前期課程に入学して以来、伊藤泰信准教授の下で文化人類学を学ぶ。腐女子と呼ばれる女性たちに関する調査を約10年にわたって実施し、JAIST博士後期課程を単位取得後、2017年博士号(知識科学)取得。2015年KDDI研究所(現KDDI総合研究所)に入社以来、文化人類学的エスノグラフィを用いて顧客理解、コミュニティの帰属心形成に関する調査研究に従事する。

久保隅 綾(くぼすみあや)GOB Incubation Partners株式会社 Co-Founder
精密機器メーカーR&D部門研究所での生活者調査、ライフスタイル・ワークスタイル研究を経て、2010年4月より大阪ガス行動観察研究所にて行動観察やフィールドワークをベースとした調査研究、サービス現場の改善や製品サービスの機会領域発見、コンセプトデザイン作りなどに携わる。2014年よりGOB Incubation Partnersを立ち上げ、新規事業開発や商品開発のコンサルティング、リサーチ業務、イノベーションやリーダーシップ教育研修などに従事。他者理解と自己内省を通じて、個人や組織の機会や可能性を開発することを探求している。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。主な著書:橋元義明編・久保隅綾他共著『日本人の情報行動2010』東京大学出版会、2011年。

伊藤 泰信(いとうやすのぶ)JAIST 知識マネジメント領域・准教授