計算工学領域【松澤研究室】
■ 研究概要
本研究室では空気(気体)や水(液体)などの流体を対象をとし,流れの挙動を計算機で解析する数値流体力学(Computational Fluid
Dynamics: CFD)について研究を行っています。CFDは流れをモデル化し,モデルを支配する基礎方程式を導き,離散化し,流れの解を得ます。その際,モデル化とともに高精度かつ高速に解を得ること(並列処理などのハイパフォーマンスコンピューティング)が課題となります。CFDは自然現象の解明,自動車や航空機などの工学,さらには医療の分野など広範囲に研究が行われています。
■ より早く,便利に(グリッドコンピューティング)
近年,高速なネットワークを利用して,さまざまな計算リソースを共有するグリッドと呼ばれる技術の研究開発が盛んです。遠隔地に存在する大規模計算機や,大容量のファイルサーバーを,研究者が自分の机の上の計算機を利用しているかのように出来るシステム(グリッドあるいはグリッドコンピューティング)の構築が行われています。
「スーパーコンピュータネットワーク上でのリアル実験環境実現」,通称VizGridプロジェクトは,文部科学省の研究開発委託事業の一つで,JAIST(プロジェクトリーダー:松澤)が中心に産学官連携プロジェクトとして,グリッドミドルウェア(Globus,
Unicoreなど)上に,可視化を利用した遠隔協調環境の構築をめざしています。
■ 様々な流れを高精度で高速に得る
1.計算方法の関する研究
様々な流れを解析するためには,流れの現象をモデル化することが重要になります。さらにモデル化に対応した基礎方程式をどのように離散化し,どのようにアルゴリズムにするかも重要な課題です。本研究室では,離散化の方法や解法のアルゴリズムの研究を行っています。たとえば,流体粒子をそのままモデル化した格子ボルツマン法,計算には誤差の伴いため精度保証つき流れ計算などの研究をしています。
2.生体内流れ
動脈硬化症などの血液・血管病変には血液の流れによる力学的なストレスが原因の1つとされています。実際の患者のMRIやX線CTなどの医療画像から画像処理をして血管を再構築し,血液の流れおよび血管との相互作用を調べています。図には人体で最も太い血管である大動脈弓にコブができた大動脈瘤内の流れを示しています。また,人体の鼻腔内の流れも検討しています。

胸部大動脈瘤と呼ばれる大動脈血管に発生する疾患:左流線図,右圧力等値図
3.工業プラント内の流れ
平成13年度地域産学官連携「豊かさ創造研究開発プロジェクト」に参画し,ダイオキシンを出さない有機汚泥処理装置の検討を行っています。
■ 複雑な流れを見る
流れは非常に複雑であり目で見ることが重要です(流れの可視化)。没入型バーチャルリアリティ装置CAVE やプロジェクタ2台を用いた簡易VRシステムなどでステレオ視を用いた流れの可視化法の検討を行っています。
■代表的な著書・論文
- F. Gao, Z. Guo, M. Watanabe and T. Matsuzawa : Loosely Coupled
Simulation for Aortic Arch Model under Steady and Pulsatile
Flow, J. Biomechanical Science and Engineering, Vol. 1, No.
1, No. 2, pp.327-341, 2006
- S. Ishikawa, T. Nakayama, M. Masahiro, T. Matsuzawa : Visualization
of Flow Resistance in Physiological Nasal Respiration, J. Arch
Otolaryngol Head Neck Surg, Vol. 132, pp.1203-1209, 2006
- 奥田基,軽部行洋,松倉隆一,広田克彦,渡邉正宏,松澤照男:“分散処理による立体画像可視化システムの開発−可視化要件の異なるオブジェクトの立体可視化−”,可視化情報学会論文集vol.27,
No.7pp.61-68(2007.7)