ikeda lab

囲碁プログラム Nomitan

背景と目的

 チェスでは世界チャンピオンのカスパロフ氏が1997年にコンピュータプログラム敗れ, 将棋でも最近は一流棋士が敗れるほどに,ゲームAIの強さは向上しています. 囲碁はその盤面の広さにより探索が困難で,また石そのものに(飛車や歩のような)価値の差がないことなどから 評価関数を適切に定めることも難しく,棋力向上が遅れていました. モンテカルロ木探索という手法が用いられるようになって以降,2010年前後に大幅な棋力向上が達成され, さらにDeepLearningの活用により,2015年とうとうgoogleのプログラムがプロ棋士に勝ったことが報告されました.

一つの競争は終わりましたが,接待碁や指導碁の研究のためには これからも強い囲碁プログラムのための研究も進めていく必要があるでしょう.

アプローチと結果概要

 Nomitanは,2008年ごろに,飯田研の学生が中心になって開発されたプログラムで,多くの学生・教員が開発に携わりました (そのぶん,いろいろなところがツギハギでぐちゃぐちゃのプログラムになってしまってますが). 基本的にはRemi氏と似たようなアプローチによる,モンテカルロ木探索のプログラムです.

 毎年いくつかの大会に参加していますが,主だった良い成績としては以下のようなものがあります. 当初は19路盤は弱く,2012年,2013年ごろに強くなってきた感じです.
- 2009 CGFオープン 9路盤部門 優勝
- 2010 CEDEC 超早碁九路盤 優勝
- 2013 Computer Olympiad 9路盤部門 3位,13路盤部門 3位,19路盤部門 3位
- 2013 CGFオープン 9路盤部門 優勝,19路盤部門 準優勝
- 2014 CGFオープン 9路盤部門 優勝,19路盤部門 優勝
- 2015 UEC杯 4位,Zenに勝利
- 2015 CGFオープン 19路盤部門 準優勝


 現在の棋力は kgsで3d,普通の碁会所なら五段くらいだと思います. 2015年以降開発がストップしていますが,Deep Learningの練習用には適した課題だと思っています.

研究担当者,業績,リンク等

・本研究は池田心,Simon Viennotが主に担当しています.
・過去,多くの飯田研学生(野口・松井・土井・矢島・長谷川・橋本各位)が開発に参加しました.
・池田研では,立石真也(2013卒),本田拓朗(2013卒)が担当しました.
・本研究は多くの論文が採録・表彰されています.代表的なものは以下の通り.
 - 池田心,Viennot Simon:
  行動評価関数を用いたモンテカルロ木探索の重点化と見落としの抑制
  情報処理学会論文誌,Vol.55,No.11,pp.2377-2388,2014
 - J.Hashimoto, Kishimoto, Yoshizoe, K.Ikeda:
  Accelerated UCT and Its Application to Two-Player Games
  Advances in Computer Games 13 (ACG13), Springer LNCS, 1-12
 - 本田拓朗,Simon Viennot, 池田心:
  囲碁における大局観を実現する広域パターンマッチング
  第17回ゲームプログラミングワークショップ,pp.17-21, 2012-11
・Nomitanを用いた接待碁・指導碁の研究については【こちら】です.