ikeda lab

偏りがあるように思わせない(偏った)乱数生成

背景と目的

 遊技機やコンピュータゲームでは,トランプを配る・サイコロを振るなどの作業はすべてコンピュータが肩代わりするため,多くのゲームで疑似乱数が用いられています. 乱数列はコンピュータが勝手に作るため,しようと思えば操作が可能ですが,これらの行為はプレイヤにとって好まれず,不満が高くなる傾向にあります.   
なので,これらの疑似乱数の操作は大半のゲームでは行われていません.

 ところが,『カルドセプト』のサイコロの出目や,『ポケモン』の技の命中率など疑似乱数を操作していなくてもプレイヤが操作されていると感じるようなゲームも存在しています.   


本研究では,数学的な意味で優れた乱数と,見る人にとって自然な乱数は異なるという仮定をおき,どのような特徴を持たせれば自然に“見える”乱数が作れるのかを考察,実装しています.

アプローチと結果概要

 人はしばしば確率に対して誤った判断を下すことがあり,これを『認知バイアス』と呼びます.
私たちは擬似乱数に認知バイアスを取り入れることで,人に不満を与えにくい乱数を目指そうというコンセプトで研究を進めています.

研究の流れは
(ア) プレイヤの考える乱数らしさの傾向について調査する.
(イ) 調査により得られた傾向を満たす乱数列の評価関数を設計する.
(ウ) 乱数列の評価関数より最適化された調整乱数と通常擬似乱数の比較実験を行う.
(エ) 提案手法の改善,対象ゲームに提案手法を応用する.
となっています.

 (ウ)の比較実験では我々の考える乱数らしさで最適化した疑似乱数が通常の疑似乱数と比べて自然に見えるか確認することを目的として5段階評価を行いました.

・乱数列A(標準乱数):無作為に作成した標準の疑似乱数系列
・乱数列B(下位乱数):調査により得られた傾向に反する擬似乱数系列を選んだもの
・乱数列C(調整乱数):乱数列の評価関数より最適化を行ったもの



 5に近づくほど評価が高いのですが,結果として他の乱数と比べてC(調整乱数)は4,5(通常の擬似乱数である)の回答が28/48と特に多く, 結果として半数以上を通常の疑似乱数と正しく誤解させることに成功しました.

研究担当者,業績,リンク等

・本研究は野村 久光(2015卒), テンシリリックン シラが主に担当しています.
・本研究の代表的な論文は以下の通りです.
- 野村 久光, テンシリリックン シラ, 池田 心:
標準的なゲームプレイヤにとって自然に見える疑似乱数列の生成法
第18回ゲームプログラミングワークショップ,pp.27-34, 2013-11
- Sila TEMSIRIRIRKKUL, Hisamitsu Nomura, Kokolo Ikeda:
Biased Random Sequence Generation for Making Common Player Believe it Unbiased ,
IEEE-Games, Entertainment, & Media,pp.62-69, 2014-10.
- 野村 久光, Sila Temsiririrkkul, 池田 心:
不満を抱かせにくいゲーム用擬似乱数列の生成と利用
第9回E&Cシンポジウム,2015-03