ikeda lab

プレイヤの意図を汲み取るRPGの仲間AIの作成

背景と目的

 ドラゴンクエスト等のコマンド形式RPGで人間を楽しませるためには手強い敵の存在以上に自分と一緒に敵と戦う仲間の存在が重要です.
 仲間AIプレイヤは敵のように“強い”だけでは人間を楽しませるには不十分です.RPGではただ勝つのではなく「早く戦闘を終わらせたい」「MPを節約したい」「アイテムを温存したい」など様々な価値観が考えられ,これは人によって大きく異なるところです.
 上図のように人間プレイヤが早く戦闘を終わらせるために「敵に攻撃してほしい」と思っていても,仲間AIプレイヤは確実に勝つために人間プレイヤに回復を行うかもしれません.これでは人間プレイヤは思っていることとまったく違うことをされて不満に感じるでしょう.
 そこで人間プレイヤの意図や価値観を学習させることで,AIプレイヤの行動による人間プレイヤのストレスを軽減しようというのが主たる目的です.

アプローチと結果概要

 本研究では人間の意図や価値観を効用という考え方を用いて推測しています.
下図のように行動A,B,C,Dがとれるとき,人間プレイヤは行動Bを選択したとしましょう.仲間AIは4つの行動それぞれをとった場合の試合結果を探索により予測します.
その結果このようなことが分かりました.
 行動A 最もHPを温存できる
 行動B 最も早く戦闘を終わらせられる
 行動C 最もMPを節約できる
 行動D A,B,Cのバランスがとれている
これらの結果だけを見れば人間プレイヤは早く戦闘を終わらせたいのだろうと予測できます.
 実際には1回の行動だけでは明快な判断ができなかったり,人間プレイヤの気まぐれや勘違いも入ってしまうので,複数回の行動履歴を参照して,一番可能性の高い “プレイヤの好み” を統計学の手法を用いて推定します.


研究担当者,業績,リンク等

・本研究は吉谷慧(2013卒)が開始し,和田尭之(2015卒),佐藤直之が担当しました.
・本研究は研究会論文,国際会議論文が採録されています.
 - 吉谷慧,池田心:
   プレイヤの効用を学習し行動選択するチームメイトAIの構成
  第29回ゲーム情報学研究会,pp. 1-8, (2013-03)
- 和田堯之,池田心:
  少数の記録からプレイヤの価値観を機械学習するチームプレイAIの構成
  第33回ゲーム情報学研究会,pp. 1-8, (2015-03)
- 佐藤直之,池田心:
  Estimation of Player’s Preference for Cooperative RPGs Using Multi-Strategy Monte-Carlo Method
  IEEE CIG 2015, pp.51-59, 2015-08.