テクスチャの変化する自転球体の
単一カメラによるステレオ立体視化に関する研究


研究の目的

両眼立体視法(ステレオ立体視法)において、時間と共にテクスチャの変化す る自転球体(変化は緩やかで滑らかであるとする)を、単一の固定カメラで時 間差をつけて撮影して得る、一対の画像(ステレオ画像ペア)間には、テクス チャの変化による誤差が生じ、立体感を損ねてしまう。本研究では、この誤差 をテクスチャ解析により補正してステレオ画像ペアを再構成し、立体画像を良 好に再現することを目的とする。

テクスチャ解析の手法として、テクスチャ変化による誤差を含んだステレオ画 像ペアに対して、ステレオマッチングを行って対応点を見つけ出し、そのうち マッチング度が低い(すなわち信頼性が低い)領域を変化が起こったと判断し て検出する。次に、その領域にモルフォロジー処理を行って変化分を補正し、 ステレオ画像ペアを再構成する。また、その精度を評価して本手法の有効性を 確認する。


背景

立体画像を入力する方法には複数の固定カメラにより異なる視角を得る方法と、 単一のカメラを移動あるいはカメラを固定して物体を回転させる方法などがあ る。各々の手法には長短があり、表示環境、撮影条件などにより使い分けられ ているが、特に単一のカメラによるステレオ立体視は、複数のカメラによる場 合と比べてキャリブレーションの必要がなく、例えば人工衛星による天体観測 のように、複数カメラの設置が困難な場合に必要となる。

人工衛星「ようこう」による太陽観測は単一の衛星によって行われており、 「ようこう」が撮影した2次元の画像データから、太陽コロナなどの3次元的 な情報を得て解析を行うことが極めて重要な課題とされている。

対象となる天体が剛体の場合、自転の間に表面のテクスチャが変化しないので 正確なステレオ画像ペアが抽出できるが、太陽や地球のように表面のテクスチャ が変化すると、ステレオ画像ペア間に誤差が生じて立体感を損ねてしまう。こ のため、このテクスチャ変化が起こった部分を検出し、その部分にモルフォロ ジー処理を行って変化分の補正を試みる。モルフォロジー処理はテクスチャ変 化を移動、拡大、縮小の各要素の組合せで体系的に記述できるので、どのよう な要素による変化が起こっているかを抽出できれば観測に役立てるものと期待 している。


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北岡 良之 (KITAOKA Yoshiyuki)

kitaoka@jaist.ac.jp