木造仏像のX線CT画像解析に関する研究

概要


文化財には保存、修復の必要なものが数多く存在する。 中でも木造仏像はその組成、構造の特徴ゆえに破損や虫食 いなどの損傷を受けたものが多く、早急な修復が必要となっている。 修復は仏師らの手により行われるが、仏師には後継者不足もあり、 一人の仏師に多数の仏像修復の依頼が集中する。 そこで本研究では、 修復個所の診断や、複数の仏像の中で修復優先度などを決定するために、 修復に必要な情報を提供することを目的とする。 ここでは木造仏像の虫食による損傷に注目し、X線CT画像を画像解析するこ とにより、修復に必要な情報を提供する。
画像解析に用いる X線CT画像は断面像により内部を可視化できる という利点があるが、様々な原因から、X線CT画像解析に支障をきたす アーチファクト(人工産物)を発生するという問題点がある。 そこで、アーチファクトのない画像を 取得するために、X線CT画像とそのアーチファクトについての検討を行った。
さらに虫食いによる損傷に有効な情報を得るために、X線CT画像から 虫食い領域を抽出し、3次元構造をグラフ構造 抽出する方法について検討した。 また、得られた虫食い領域のグラフ構造からその仏像のダメージの度合いを、 ダメージ度として評価することや、修復が必要となる個所の可視化など、 修復に必要な情報の抽出、表現方法についても検討した。
OHP