「このシステムがどういうことに役立つかというと、超並列シミュレーションという分野。私は“人類のための超並列シミュレーション技術”と名づけています。今二つのプロジェクトが走っていますが、面
白いことに、ひとつは地球の気象現象のシミュレーションという大きな話、もう一つは原子や分子の運動をシミュレーションするというミクロの話です」。
1.「仮想地球」による地球シミュレータ
現在の気象予測よりさらに詳細なシミュレーションによって、100年前、100年後の地球の姿を知る。それが地球シミュレーションである(※1)。
地球シミュレータの実現には、体育館ひとつの広さに相当する、現在の100倍の大きさのスーパーコンピュータが必要とされる。しかし「スーパーコンピュータを100台用意すればいいということではありません。スーパーコンピュータは、高速処理はできてもデータのやり取りは苦手です。北極の氷河がエルニーニョに影響することもありますから、各地の気象データを結びつけて考える必要があります」。
超並列システムの導入によって、「体育館ひとつの広さ」は「ひと部屋のサイズ」に抑えられる。計算機上に100年後の仮想地球が浮かぶ日は、そう遠いことではないのかもしれない。
|
  |
2.分子動力学シミュレーション
“カーボンナノチューブ”という材料がある。これは炭素原子が筒状に並んだ分子で、直径は髪の毛の1万分の1に過ぎない。自然界には存在しないものだが、電子素子や壁掛けディスプレーなどへの応用が目される新素材である。しかしその生成については明らかでない点が多い。「でも材料というものは原子と分子だけでなっています。一つひとつの原子分子の力を計算してやり、温度などでどんな状態になるのかシミュレーションできるのです」。
さらに、既存の材料の生成構造を解明することができるならば、「次には新しい材料をつくることができる」という。これが分子動力学法シミュレーションである。分子原子の計算、と言葉にすると簡単だが、「1モル中に10の23乗個も存在する分子の動きを計算するのですから、気の遠くなるような作業」である。とても通
常のPCで解けるような計算ではない。超並列システムの導入に新たな材料創出の期待が寄せられている。
|