知識科学について

Q1 そもそも知識科学とはどんな学問ですか。なぜ今、知識科学なのですか?

 

知識科学とは、「知」をキーワードとし、個人、組織、社会、自然における「知」の創造、蓄積、活用および体系化のメカニズムを探求する新しい学問です。

訪れた「知識社会」

情 報化社会が一層進展する21世紀は、「知識」が、生産や商品流通などの経済活動をはじめ、さまざまな社会的活動 の中心となる時代だといわれています(P.F.ドラッカー、ダニエル・ベルなどによる)。実際に、最近のインターネットの急速な普及やバーチャルコーポ レーションの登場、知的所有権に対する意識の昂揚などに見られるように、知識の生産やイノベーションに高い価値が与えられるようになってきており、企業、 官公庁、非営利団体といった組織やその活動の形態、個人と組織、組織同士の関係などがダイナミックに進化しつつあります。知識を核として、世界的に産業構 造や社会システム全般の大変革が起き始めているのです。

新しい「知」の必要性

21世紀は、いわば「知識創造」が社会のキー コンセプトとなる「知識社会」に本格的に突入することとなるでしょ う。このような時代にこそ、個人や組織で生まれる知をはじめとして、生命体や自然現象における知、社会の知などの様々な「知」を集大成し、知識社会のニー ズに応える新しい理論や技術を産み出すこと、また同時に、知識社会のリーダーとして活躍できる新しいタイプの人材を養成することが必要となります。ところ が、残念ながらこうした教育研究を本格的に行う組織はこれまでありませんでした。新しい時代はすでに始まっています。今後、グローバリゼーションが進展 し、国際競争が一層激化する中で、企業戦略や国家戦略の観点からもわれわれには一刻の猶予も許されません。

古い「知」の閉塞状況

ま た、科学技術それ自体が、これまでの歴史の中でターニングポイントを迎えています。今世紀において飛躍的に発展 した科学技術は、人間の生活や社会にすみずみまで浸透し、測り知れない恩恵をもたらしました。しかし同時に、科学技術が極端に細分化・専門化したため、現 実社会で発生する大規模で複雑な諸問題への対応が難しくなっています。自然科学、社会科学といった学問分野別の分業的アプローチの限界のみならず、「徹底 した要素への分割」を基本とする近代科学の手法や、それに基づく人材養成の限界までもが指摘されています。こうした、ある種の閉塞状況を打ち破り、社会発 展の道筋を示す新しいパラダイムの出現が待望されているのです。

知識社会のパイオニア

われわれは、新しい「知識社会」時代 を迎える人類の繁栄・存続と科学技術のさらなる発展を目指さなければなりませ ん。そのためには、人間の思考や感性・行動などを踏まえて理工系と人文社会系の「知」の再編と融合を図ることにより、新しい「知」の体系、「知識科学」を 確立することが必要不可欠です。もちろんこれには、現実の社会や自然界で発生する大規模で複雑な諸問題に取り組むための理論や技術も含まれます。

同時に、この知識科学を背景として、理系・文系の枠を超えた幅広い知識、自由な発想と総合的判断力、深い洞察力やシステム思考の能力を有し、「知識創造」の担い手となる人材、すなわち「知識社会のパイオニア」を組織的に養成することが極めて重要となります。

以 上のような時代背景と問題意識により、世界でも類を見ない「知識科学研究科」という研究科が生まれました。われ われは、「人間・社会・自然と科学技術との調和」を目指して、「知」の理論と実践がスパイラル状に相互作用し合って発展していくような学問を構築したいと 考えます。人類の未来を「知識創造」によって切り拓く志のある人々がこの研究科の門をたたくことを心より待っています。

 

Q2 知識科学研究科は何をどのように研究し、教育するのですか。

 

知識科学研究科は、自然、個人、組織および社会の営みとしての「知識創造」という切り口で、物質科学、生命科学、認知科学、情報科学、システム科学から、 社会学、組織論や経営学、経済学にいたるまでの自然科学分野や社会科学分野の学問を再編、融合した教育研究体制を整備し、知識創造のメカニズムを探求しま す。同時に、将来の知識社会を担う問題発見・解決型人材、すなわち「知識社会のパイオニア」を養成することを目標とします。

研究対象としては、

自然界における「分子知識システム、カオスやフラクタルなどの複雑系など」
個々の人間の「認識や知能、遺伝子知識、知識システム、知識創造など」
組織や社会における「組織ダイナミックス、意思決定メカニズム、社会システム、創造性開発システム、研究開発プロセスなど」の領域を中心として、さらに は、 新しい社会現象としての「ネットワーク社会、サイバースペース、バーチャルラボラトリ、バーチャルコーポレーション、サイバーメトロポリス、知識社会な ど」
を広く視野に入れます。

また、研究活動においては、コンピュータ・ネットワークやシミュレーションなどの知的技術を多用すると同時に、日常生活、現実社会での事象、現象に関す る研究を重視する立場から地域の企業・団体から海外までを対象として共同研究、フィールドワークなどを積極的に実施します。

このような研究への取組みを背景に、自然科学・システム科学、情報科学・認知科学、経営学・組織論のそれぞれの「知」を融合した教育カリキュラムを編成 し、変貌する社会のニーズに対応する先端科学技術を創造・伝承する大学院大学として、新しい社会システムのデザイン、新技術の開発や知識創造のメカニズム の探求に携わる高度な専門能力や研究能力を有する人材を育てます。

 

他の学問との違い

Q1 情報科学と知識科学の違いについて教えてください(データベースと知識ベースとはどう違うのですか。)

 

情報科学は、コンピュータ等の情報処理技術の開発や情報システムの構築に関する研究を行うものです。一方、知識科学は、人間の思い、情報の意味的側面、主 観などを重視するとともに、個人、組織などにおける「知識」の創造や活用に関する研究を行います。また、単に情報を集積したものがデータベースであり、情 報だけでなく問題解決のための手続き、規則、ノウハウや技術体系などを蓄積し、「知の創造」の基礎となりうるものが知識ベースです。

 

Q2 既存の経営学と知識科学との違いについて教えてください。

 

知識科学においては、企業を含めた様々な組織や集団あるいは組織間における知的活動のメカニズムを探求するとともに、知的技術などを駆使して大規模複雑問 題に対処するための方法論の構築、新しいパラダイムの提唱を行います。例えば、知識科学において「企業」を対象にする場合は、いままでの経営学が企業を形 成する要素をヒト、モノ、カネとしていたのに対して、その要素を「知識」であると捉えます。その上で、企業が、「知識」の創造過程と蓄積形態をコントロー ルすることによって刻々と変化する技術環境、国際社会環境に適応するメカニズムや方策を研究する点で従来の経営学とは異なります。

 

Q3 これまで作られてきた、いわゆる「学際的な」学問とどこがどう違うのですか(「社会工学」なども社会科学と自然科学を融合した学問と言われていますが)。

 

地球環境など特定の現象面を捉えて、いままでの学問分野を超えたいわゆる学際領域を対象とする学問や、社会工学の例に見られるように異分野の理論や手法の 融合を目指した学問が発展してきているのも事実です。しかしながら、”知識”という切り口から、自然科学、情報科学、社会科学などの学問を融合し、問題発 見・解決型の学問を構築しようとする点で、知識科学は全く新しい観点に立った学問と言えます。

 

Q4 社会科学分野および自然科学分野の両方に通じる人間といっても、「二兎を追う者...」にはなりませんか。

 

情報科学の分野などで明らかなように、近年では、自然科学分野および社会科学分野の境界が明確ではなくなってきています。また、知識社会において高度な知 識と柔軟な発想を持つ職業人として活躍するためには、特定の分野の専門知識や技術だけではなく、コンピューティング・シミュレーション技術と実証的分析方 法論を基礎技術として身に付けた上で、複数の分野にまたがる複眼的視野を持つことが要求されます。

 

Q5 社会や人間との関連を強調されていますが、具体的に研究成果をどう還元されるのですか(学問上の究明だけでなく、実際に役立つことが可能なのでしょうか)

 

まず、知識科学研究科の修士課程の修了者がこれからの知識社会のリーダーとして活躍することが期待されます。また、知識科学研究科において行われる様々な 研究、すなわち、知識を創造する組織の研究、法的推論システムなどの個別知識システムの研究、地球環境・エネルギー問題といった大規模で複雑な問題の研究 などの成果を通じて、現実の社会、自然と人間との関わりの中で生じる複雑な諸問題の解決に貢献します。また、本学4番目の学内共同教育研究施設としての知 識科学教育研究センターや、他の研究機関との「連携講座」を設けることなどにより、様々な分野における国内外の他大学や研究機関との共同研究を積極的に進 め、人類共通の財産となる成果を生み出します。

 

Q6 地球環境・エネルギー・人口問題など大きな困難な問題については、それぞれの分野の専門家が横断的に研究すれば良いのではないですか。

 

大規模で複雑な問題を各分野の専門家が横断的に研究するといっても、それぞれの専門分野内のみで完結する理論に基づいた方法論の集合体となってしま い、現実の問題解決には有効とならない可能性があります。特に、横断的研究をまとめるナレッジデザイナーやシステムインテグレータが存在していない場合に は、特定の専門分野が研究の方向や結果に大きく影響を与える恐れがあります。

知識科学研究科では、他の専門分野の研究者と連携しながら、 知的活動のメカニズムの解明、知識データベース (フィールドワーク、観測などのデータを含む)の構築、知識活用の方法論(システム理論、シミュレーション技術など)の開発、知識を創造する組織や経営手 法の構築などに関する研究活動や研究成果を通じて、地球環境・エネルギー・人口問題などの大規模で複雑な諸問題への取組みや、知識社会における新しい組織 づくり、社会システムの構築に寄与します。

 

  • Facebook
  • twitter
  • Hatena