発表者:佐藤 尚(橋本研M2) タイトル:局所的相互作用としての信頼行動に基づく協調行動発生 アブストラクト:  自然界には蟻、蜂、魚、鳥、そして、我々人間など「群」をなして 生活する種が数多く存在する。それらは個体間で相互に情報伝達しな がら、一個体では成し得ない高度な振る舞いを見せる。このようなボ トムレベルでの相互作用によって発生する系の活動は、群を構成する 個体が互いに調整的関係を保つ調和ある活動と換言できる。この活動 は「協調行動」と呼ばれるものである。  協調行動については様々な分野で活発に研究されている。たとえば、 進化生態学や行動生態学では生物の協調行動の適応的意義が調べられ ている。工学では協調行動の応用方法ついて研究されている。また、 社会科学では互恵的利他行動の発生や進化、更に戦略のESS性について 繰り返し囚人のジレンマ・ゲームを用いた研究などがある。しかしな がら、それらの研究では協調行動の表面的な特徴や性質などが解明さ れただけであり、その行動がどのように発生するのかという根本的な メカニズムについては未だに解明されていない。  本発表では、人間の協調行動において観察される個々の振る舞いと しての「信頼行動」を協調行動の発生要因と仮定し、その信頼の意味 を壊さずにその概念を形式化することによって、信頼行動を人間以外 のあらゆる種においても適用可能なある種の「反応」に置き換えると いうアイディアについて、また、その形式化された信頼行動をとるマ ルチエージェントを用いたコンピュータシミュレーション実験および 今後行う予定の実験について紹介する。