Title 内部ダイナミクスを持つエージェントとミクロマクロ・ループによる 動的社会シミュレーション Abstract 本論では、社会構造の動的な変化を研究する際、社会の構成員を 内部ダイナミクスを持った認知エージェントと考えることが 必要であることを論じる。ここでは、エージェントの行動が依存する 内部状態の自律的な変化を「内部ダイナミクス」と呼ぶ。まず、 内部ダイナミクスを導入することが、社会における人間像と 社会のダイナミクスについてどのような意味を持つのかを論じる。 そして、社会シミュレーションに用いることができる内部ダイナミクスを 持ったエージェントのモデルとして、拡張版単純再帰型ニューラル ネットワークを提案する。このエージェントモデルで構成された マルチエージェント・システムを用いて、Minority Game をプレイする シミュレーションを行った結果について報告する。このシミュレーションでは、 少数派の手の時系列というマクロ構造が、固定点、周期、非周期的変化の 状態を遍歴するというダイナミクスが観察された。この結果等について 考察し、マクロ構造が自律的に変化するようなシミュレーションを 構成する上で、エージェントの内部ダイナミクスが必要であることと、 ここで提案する拡張版単純再帰型ニューラルネットワークがそのエージェントの モデルとして有効であることを論じる。 Keywords 内部ダイナミクス, 拡張版単純再帰型ニューラルネットワーク, マルチエージェント・システム, Minority Game, ミクロ・マクロループ