題目:「アメーバ運動のシミュレーションによる解析」 講演者:西村信一郎氏 (名古屋大学工学研究科計算理工学専攻COE) 日時: 12/21 15:30より 場所: 知識科学研究科 3棟 6F コラボレーションルーム(3) 概要: 細胞にはさまざまな形態がある。そのひとつとしてアメーバ細胞がある。ア メーバ細胞は細胞性粘菌の細胞から、ヒトの免疫細胞まで幅広い種で見られ る不定形の細胞で、多細胞生物が出現する以前から保存されてきた機構の一 つである。アメーバ細胞は、前後の濃度差を感知することが知られているが、 その機構は近年になってようやくその一部が明らかにされた。その分子生物 学的知見を基に、比較的単純なコンピュータモデルを構成した。このモデル は、濃度差を検知しその方向に進むというアメーバ細胞の基本的な性質をう まく説明する。またモデルでは、アメーバ細胞には運動の履歴、すなわち運 動方向を保ち続ける性質が見られたが、これも実際のアメーバ細胞でよくみ られる性質の一つである。この履歴には、なんらかの生物学的な意味がある のではないかと我々は予想している。ある研究では正の履歴を持つランダム ウォーク(Levy Flight ともいう)が履歴をもたない通常のランダムウォー ク(すなわちブラウン粒子)よりもランダムにおかれた点を探索する問題で は高い探索力を持つことが報告されていることは、このことに関係があるだ ろう。