担当:小林 重人 日時:04/14(火) 12:30- 場所:コラボレーションルーム2 内容:サーキットブレーカーにおける制度変化 概要:  昨年度の金融市場は世界的な金融不安の影響で株価の暴落が相次ぎ,これまでほとんど発動されなかった  サーキットブレーカー(以下,CB)が各国の証券取引所で発動された.CBは,広くは株価が大きく変動した時に発動される何らかの  措置のことであるが,本稿ではある取引所で決められたルールに基づいて取引を停止させる措置をCBと定義して取り扱う.  ここで面白いのは,CBが発動されるだけにとどまらず,前述の株式市場の混乱とCBの頻発,そして,市場の混乱に対する  市場参加者を含む市民の意見等を受け,2008年10月よりCB制度は各国の証券取引所で急速に改変され始めたことだ.  これらの変更基準の多くはNYSEの発動基準に準拠しており,各取引所や金融当局で独自の基準を新たに  創り出すといった事例はほとんど見受けられない.大きくは市場参加者の行動を規制するという方向に制度が改変されていくなか,  こうした改変に対して異を唱えるといった行動もあまり見られない.  従来の市場効率性を重視する新自由主義的な見方では是認できない動きであると考える.  こうした市場における制度変化を理解するために,本稿では複製子と相互作用子という制度・経済進化現象の基本概念を用いた分析を行う.  複製子とは「思考・行動のルール」であり,人々の認識を枠付け,行動を制約あるいは可能にする「if-then命題」の形で表わされる.  相互作用子とは複製子にあるルールを実行する主体であり,自身の持つ様々な複製子を状況に応じて活用し思考・行動を行う.  ある複製子(群)が社会において多くの相互作用子で共有されている状態を,社会制度が成立している状態と見なすことができる.  この複製子・相互作用子という観点からの市場制度変化の分析により,主要な相互作用子として取引所,市場参加者,制度設計担当部署の3者を設定でき,  それらが保持している複製子の関係を示すことができた.その結果,取引所間の相互作用から複製子の系統樹という制度進化のひとつの描像を示すことができた.  議論ではマクロ・メゾ・ミクロ・ループの話をし,メゾを想定する意義やメゾのもつ役割について話す.進化経済学会で受けた指摘のほとんどは  メゾの部分であり,ここと制度,意識をどのように関係づけられるかを皆さんと議論していただきたい.  時間があれば,系統樹で表した複製子の変化を表すシミュレーションについても考えてみたい. Presenter : Shigeto Kobayashi Date & Hour : 14 Apr. (Tue) 12:30- Title : Institutional Evolution in Circuit Breaker