担当:金野 武司 日時:4/23(木) 15:30- 場所:コラボレーションルーム2 内容:合成的言語の形成過程における意味変化と多義発話についての研究 概要: 視線や発話のインタラクションを通じて,二人が状況を共有するようになる 過程を考える.このとき,状況を共有するための道具として言語を見ると, ヒトの言語に多く発生している多義的な表現や意味の変化は,その機能性を 阻害するように思われる. 一方,全体的言語を起源とした合成的言語への進化過程をモデル化した Kirbyのモデル[1]でも,合成的言語を形成する過程で,異なる状況に対する 同じ発話の使用(多義発話)と,状況表現の世代間での不一致(意味変化)が多 く発生する. 本研究では,Kirbyモデルにおいて発生する多義発話や意味変化を抑制しつ つ,合成的言語を形成する仕組みが実現できるかどうかを調査する.この取 り組みを通じて,次の3つの知見を得る. 1.多義単語の形成を抑止すると,意味変化の頻度が大きく低下する 2.聞いた発話の保存によって意味変化を抑制する仕組みは, 必要とする記憶容量を増やすだけで,意味変化の頻度低下には寄与しない. 3.親から聞く発話の数が増えると,合成的言語の形成が阻害される これらの知見から,次のような仮説を提示する. ある状況に対して行なわれる他者の発話を遵守するよりも,内的に合成度を 高めるルールの形成を優先した方が,必要とする記憶容量を小さく抑えなが ら,結果的に集団全体で状況の共有を可能にする言語(ある状況に対して同 じ発話を用いる言語)を形成できる.ただし,この共有可能な言語の形成に は,多義単語の抑止によって意味変化の頻度を抑制する仕組みが必要とされ るものと考えられる. 今回のゼミでは,このような仮説を提示できるだけの論拠となるデータがあ るのかを議論していただきたい.またこれと併せて,基本的に上述のような 仮説の提示に不足している論点を指摘していただきたい. [1] Kirby, S.(2002), ``Learning, bottlenecks and the evolution of recursive syntax,'' in E.J. Briscoe ed. Linguistic evolution through language acquisition: Cambridge University Press, pp.173-203. Presenter : Takeshi Konno Date & Hour : 23rd Apr. (Thu) 15:30- Title : Study on Meaning Changes and Polysemic Utterances under Formation Process of Compositional Language