言語進化現象としての文法化 〜繰り返し学習モデルを用いた検討〜 中塚雅也 橋本敬 文法化の仕組みを知ることは言語進化を理解する上で役に立つ。文法化とは、 名詞や動詞などの内容語が助動詞や前置詞などの機能語がもつ文法的機能を 帯びるようになる現象である。例えば「be going to」では、動詞「行く」が 未来時制という文法的機能を帯びるようになった。様々な言語で同型の文法化 現象が見られることから、その裏には人間の普遍的な認知能力があると考えら れている。では、それはどのような能力なのだろうか。文法化の機構として、 Hopperらは再分析と類推を提唱している。我々はこの2つを引き起こす能力を 次のように仮定した。1.似た言語知識からより一般化した知識を得る、 2.似た種類の単語を同じものに分類する、3.ある特定の言語知識を知識 全体に適用する。これらの能力により言語知識を発達させるエージェントを用 いて、繰り返し学習モデルの枠組みによる計算機実験を行った結果、文法化の もとになるような意味変化現象が観察された。従って、上記の能力が文法化の もとになる認知能力の一つだと考えられる。