学会・研究会:第8回日本進化学会企画シンポジウム「言語の起源と進化」 発表者   :○橋本 敬、中塚 雅也 題目    :文法化は言語の起源・進化とどうかかわるか 日時    :2006年8月30日 場所    :国立オリンピック記念青少年総合センター HP   :http://shinka.lab.nig.ac.jp/ 概要: 文法化とは、動詞や名詞といった内容語が、助動詞や代名詞のような文法的機 能を帯びた機能語になる意味変化である。この現象は多くの言語で同型のもの が見つかるという普遍性があり、人間の認知構造が反映した言語(変化)現象 と考えられ、言語に関する認知構造を探る上で興味深い。 一方、 文法的な語 彙がない言語から現在のような様々な文法ができる過程を担うのではないかと いう考えのもと、言語の複雑化・構造化という言語進化の観点からも興味を持 たれている。本発表では、言語習得過程に着目した繰り返し学習の枠組みで構 築した、文法化が生じるプロセスのモデルにもとづいて、言語の進化、および、 起源において重要となる可能性のある認知能力・構造について議論を行う。こ のモデルのシミュレーションでは、文法化を含む意味変化が起きるためには、 新たに発見した言語的ルールを、ほかの既存の言語的知識に対して拡大適用で きるある種の汎化能力(これを言語学的類推能力と呼ぶ)が重要であることが 示唆された。この能力は、「いま、ここ、わたし」にとらわれない発話を生成・ 理解できるという、人間言語に特徴的な超越性という性質に関わる可能性があ る。