本文へジャンプ
高木研究室

生体環境ダイナミクスを探る、操る、創る

※新規の学生受入は行っていません

高木研究室 TAKAGI Laboratory
教授:高木 昌宏(TAKAGI Masahiro)

E-mail:E-mai
[研究分野]
生物機能、生物物理、バイオテクノロジー、シミュレーション
[キーワード]
ソフトマター物理、合成生物学、膜ダイナミクス、細胞信号伝達

研究を始めるのに必要な知識・能力

特に必要な知識・能力はありません。生物、物理、化学の境界領域で研究を行っています。入学後、基礎から親切に指導しますので、現時点での知識、能力は特に問いません。

この研究で身につく能力

 生命活動に代表される複雑な現象を、分子レベルで理解するためには、生物に対する強い関心と、物理、化学の基礎的な知識が必要です。私どもの研究室では、以下の能力を身に付けてもらいたいと思い活動を行っています。

  1. 分子間の相互作用や自己組織化に関する現象を、基本的な化学・物理の法則に基づいて研究・解明する能力
  2. 分子レベルから組織・個体への階層性を意識しつつ生命現象を理解する能力
  3. 与えられた条件を基に、研究の方向性を決められる能力
  4. 研究成果を魅力的に一般人にも分かり易く伝える事ができる能力

【就職先企業・職種】 大学教員、国家、地方公務員(研究機関研究員)、化学、食品、化粧品、医薬品、精密機械関連研究職等

研究内容

takagi1.jpg
図.人工細胞膜上で観察される相分離構造の顕微鏡像(白線の長さは10μm)

 細胞膜は、単に細胞内外を区別するだけでなく、痛み、睡眠、興奮、鎮静など、さまざまな生理的な応答に関わると言われています。
 その細胞膜には、流動性の異なるドメイン構造(脂質ラフト)が存在し、生命活動に重要な役割を果たしていると考えられています。
 我々の研究室では、分子を自己組織化させて作成した人工細胞膜(細胞サイズリポソーム)と、実際に生きている細胞(免疫細胞や神経細胞)の両方を用いた実験系、さらに数理科学を駆使しシミュレーションを行う理論系の両面を駆使した、生物学、化学、物理学、数理科学の境界領域における先端的な研究プロジェクトが進行中です。

■脂質分子の電荷が引き起こす膜構造変化

 生体膜は負電荷を持つ脂質を含んでおり、細胞信号伝達、イオンの流出入、膜電位等に大きな影響を与えています。しかし、脂質分子の電荷が膜構造自体にどのような影響を与えているのかは明らかになっていません。中性脂質、荷電脂質を組み合わせてリポソームを調整し、共焦点レーザー顕微鏡や蛍光顕微鏡を用いて膜表面の相状態や膜の形状の観察・解析を行っています(図)。
 荷電脂質を膜組成に加えることで、中性脂質のみの組成とは大きく異なった相挙動が観察され、脂質分子の電荷が膜構造に大きな変化をもたらすことを明らかにしました。
 この実験手法を、さらに局所麻酔薬、冷感・温感剤など、さまざまな生理活性物質の機能解析にも役立てています。

■細胞膜ダイナミクスとシグナル伝達

 ヒトは約60兆個の細胞からできており、各部位を構成する細胞の種類によって、それぞれ固有の機能をもっています。これらの機能を発揮するために、細胞にはそれぞれ特有な生体膜からなる細胞小器官(オルガネラ)が備わっています。細胞のすべての膜系は、リン脂質の二分子膜構造を基本としており、透過性をもつ障壁として機能すると同時に、細胞の生命維持に必須の機能をもっています。 細胞膜の飽和脂質やコレステロールが豊富な秩序相からなるミクロドメイン構造である“ラフト”に注目し、その動的構造変化がもたらす細胞内シグナルへの影響を明らかにすることを目的としています。

■粗視化分子動力学シミュレーション

 実験では観察が難しい部分を補うために、理論的なモデルや計算機シミュレーションによる解析も行っています。
 理論モデルでは、熱力学的なアプローチに基づき自由エネルギーを計算し、相分離や膜形状の理解を進めています。実験が困難な非対称荷電脂質膜での相分離の挙動も計算により明らかにしました。
 分子動力学シミュレーションではリン脂質を粗視化することで計算コストを減らし大規模計算を行う手法を用いています。実験では観察できなかった、荷電脂質による膜形状の安定化機構もシミュレーションを用いることで明らかにすることができました。
 シミュレーションにより、脂質膜の相挙動・変形を理解するだけでなく、ゲスト分子などとの相互作用を明らかにすることも視野に入れて研究を進めています。

主な研究業績

  1. N. Shimokawa, M. Nagata, M. Takagi. Physical properties of the hybrid lipid POPC on micrometer-sized domains in mixed lipid membranes. Phys. Chem.Chem. Phys., 17, 20882-20888(2015)
  2. H.Himeno, N.Shimokawa, S.Komura, D.Andelman, T.Hamada, M. Takagi. Charge-induced phase separation in lipid membranes. Soft Matter 10, 7959 - 7967(2014)
  3. H. T. T. Phan, T. Hata, M. Morita, T. Yoda, T. Hamada, M. C. Vestergaard , M. Takagi. The effect of oxysterols on the interaction of Alzheimer’s amyloid beta with model membranes. BBA-Biomembrane, 1828,2487-2495(2013)

使用装置

レーザー共焦点顕微鏡
蛍光顕微鏡
原子間力顕微鏡
画像解析装置
細胞培養装置

研究室の指導方針

メンバー間の親密な雰囲気に基づいた、きめ細かく、親切な指導を以下の3点を心がけつつ行います。

 1. 教員と院生の距離感が近く、アットホームな雰囲気を常に創り出します。
 2. 研究に関する知識・技術などの基礎能力については、早い段階からきめ細かく指導します。
 3. 実験結果を出すだけでなく、「思考力、判断力、表現力」など、社会に出て必要となる能力にも重点を置いた指導をしています。

[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ms/labs/takagi/

ページの先頭へもどる