激走のためのスポーツ食事学

  激走選手としてより高いレベルを目指すには、それにふさわしい栄養バランスを作り上げる事が絶対必要です。 それには、自分の好きなものを腹一杯食べるという事では成り立ちません。
 例えば、炭水化物(ご飯、パン、麺類、菓子などに多く含まれる)や脂肪を摂り過ぎると、皮下脂肪が増え体重増となり、記録がかえって落ちてしまいます。
 栄養素の役割はそれぞれ異なっているわけで、必要量もまた、普通の場合と比べて、大きく異なっています。
 さらに重要な事は、トレーニング期、調整期、試合時とそれぞれの状態によっても必要量を変える必要があります。 したがって、理想的な栄養バランスを作り上げるには、選手の置かれている状態・時期・自分としての強化すぺきポイントによって栄養素の種類・量・タイミングを決める必要があります。

具体例
   ・試合の一週間前からは、ベストコンディションを作り上げるため、ビタミンCは普通の10倍(10個分)以上必要。しかも一日3回に分けて摂取する事。
   ・試合直前のエネルギー補給には、すぐエネルギーとなりやすい炭水化物の多い食事をする事。
   ・長距離の場合には、試合の3〜4日前からエネルギーを十分蓄積するため、高炭水化物食を進める事。

などがあげられます。

 激走をはじめ、スポーツをするための原動力は筋肉です。確かに走りの上手さは必要ですが、激走でも筋肉のサイズを高めなければスプリント能力、記録の向上は望めません。
 筋力強化=筋肉量の増大のためには、筋肉に刺激を加えるトレーニング(過負荷の原則)と蛋白質の十分な摂取(これも過負荷でなければいけない)が必要です。
 この両者がバランスよく(トレーニングの過負荷及び蛋白質の過負荷…2.5倍〜3.0倍)進められなければより大きな効果は期待できず、記録の壁も破れません。
 筋肉は週3〜5回最大筋力の60〜80%くらいの刺激を一定回数加えなければ増大しません。その時筋肉の主原料である蛋白質を十分摂取しなければその効果も半減する事になります。また、蛋白質摂取不足の状態でトレーニングを続けると貧血やケガを招く事にもなりかねません。

 筋肉強化トレーニングのための蛋白質摂取量は、体重1kgあたり2.5〜3.0グラムです。
 より効果的な筋肉作りには、1日の回数や1回あたりの量も考えなければいけません。いくら蛋白質が筋肉の源といっても、いっぺんに摂り過ぎると余分なものは脂肪になってしまう事もあります。また、夕食や夜食を摂りすぎるとその傾向が促進されます。
 したがって、1回の食事の蛋白質は50gくらい(肉ならば300gくらい)を上限とし、一日5回くらいに分けて摂ったほうが筋肉作りのためには効果的です。
 牛肉や豚肉は脂肪も多く含まれているので、肉だけで蛋白質を摂るとオーバーウエイトにつながりかねません。また、低脂肪の豆腐・納豆といった植物性蛋白質も加える方が望ましいです。
 最後に、いくらトレーニングと十分な蛋白質摂取を進めても一ヶ月に500gから1kgの筋肉増が限界との事です。したがって、常に体重のチェックや主要部位の皮下脂肪厚のチェックをし、オーバーカロリーかどうかを考えて進める事が必要です。

 激走で、特に中長距離の場合には、酸素供給能力が大変重要になってきます「後半、ラップタイムが悪くなる」「ラストスパートが上手くいかない」といった場合は、まず酸素供給不足と考えるべきです。
 このための能力を高めるためには十分な走り込みを続け、酸素を取り入れる肺、ポンプの役目の心臓、酸素の運搬のヘモグロビン(赤血球)を筋肉のすみずみへ血液を届ける毛細血管といった機能・能力を高めていく事が大切なポイントとなります。顔が青白い、バテやすい、コンディションを崩しやすいといった選手は必ずといっていいほど、スポーツ性貧血で す。これでは、いくら素質や技術がよくても、このままでは多くは望めません。
 選手としてレベルアップしていくには、まず何よりもヘモグロビン(赤血球)のレベルアップが重要です。生まれついてのものでなければ、練習の量や強度に十分見合ったバランスのとれた食事(栄養補給)がなされていない事が最大の原因です。

     好き嫌いが激しい
     朝食抜きが多かったり、十分食べていない
     間食が多く、甘いものやスナックが大好き

といった選手に貧血が多いのです。
 赤血球は生まれてから壊れるまで大人では4ヶ月。成長期の子供では2ヶ月程度とされています。
 特に激しい練習に取り組んでいる選手では、さらに速くなっているはずです。そんな時、食事(栄養補給)のレベルが低ければ、壊れる方が速く、貧血となってしまいます。

スポーツ性貧血の改善・防止には
   ・朝食からしっかり食べる事
   ・鉄分を多く含むレバー、ほうれん草、豆類などをメニューにとり入れる事
   ・朝から蛋白質の豊富な食事をきちんと食べる事

 練習が終わって家に帰ると、どうしても食事が遅くなります。そんな時、目一杯食べてしまうと脂肪をつけやすくし てしまうので注意が必要です。
 また練習により筋肉も血液も消耗しますので、その回復のため、蛋白質やミネラル、そして疲労回復のためのビタミンも十分摂る必要があります。

したがって、
    消化がよく、体力の消耗を回復するためよく煮込んだ魚や肉料理(もちろん野菜もたっぷりと)。
   ・卵や肉、そして野菜もたっぷりと入れたなべや、きつねうどん等もよいでしょう。
   ・ミルクを飲むか、ミルクを加えた料理を摂る事。
   ・胃に満腹感を与え、しかも実際には過食とならないようにするには、水分のたっぷり加わっている煮込み料理が最高です。

レース前の食事について
 走るためのエネルギー源は炭水化物がベースです。でも、食べたものがすぐエネルギーにはなりません。いったん腸でブドウ糖などの形となって吸収され、筋肉と肝臓にグリコーゲン(ブドウ糖の結合したもの)となって貯えられます。レース前にこのグリコーゲンが少ないと、後半ガス欠状態となり、ラストスパートをかけようと思っても、思うようにスピードが出ないといった事になります。
 また、特に肝臓のグリコーゲンが少なくなると、血液中にある糖分(ブドウ糖)レベルも下がり、やる気も低下し、へばりやすくなってしまいます。ですから、レース前にいかにグリコーゲンを満タンにしておくかが大変重要になってきます。
 激走の場合では、競技時間が短いため、レースの前の日からは炭水化物の割合を多くして、肉・魚・卵をあまり沢山とらないようにすると効果的です。
 レース前のエネルギー源・炭水化物といえども、レースのまさに走る寸前には、完全に消化吸収されて、胃腸は空になっていなくてはなりません。消化吸収がすばやくできるものは直前で食べてもかまいませんが、ご飯やパンなどは消化に時間がかかるので、スタートの3〜4時間前、飴やシャーベットは1時間前に食べるようにしてください。
 ベストコンディションでレースに出る事も高記録達成のために重要な事です。それには、ビタミンB1・C・Eをたっぷりとる事がポイントです。

 風邪を引いて練習を休むという事がないよう、ビタミンCもたっぷり摂りましょう!!