小矢野 幹夫 研究室

小矢野 幹夫 准教授

環境・エネルギー領域
小矢野研究室 小矢野 幹夫 准教授

熱電材料と熱電変換の物理を探求

熱電変換技術は、ゼーベック効果注1やペルチェ効果注2に基づき、固体素子を用いて熱を電気に、あるいは電気を熱に換える技術です。私たちは、熱電変換材料と熱電変換の物理を主テーマに、新しい熱電材料の探索、ナノ材料の熱測定技術、インクジェット技術による熱電モジュールの作製を研究の三本柱としています。

天然鉱物から高効率な熱電材料を作製

近年、エネルギー問題の観点から、自動車や工場由来の膨大な中温廃熱(300~500℃)の有効利用として熱電発電が注目されています。現在の主な熱電材料であるビスマス-テルル系材料は使用上限温度が250℃であること、また、中温領域に対応可能な熱電材料は鉛などの有害元素を含むことから、新たな熱電材料が求められています。

私たちは、自然界に存在し、環境に優しい元素である銅(Cu)と硫黄(S)を含む鉱物テトラヘドライト注3に着目しました。その母体Cu12Sb4S13のうち、Cuのごく一部をニッケル(Ni)に置換した材料を合成し、この材料が実用中温領域400℃付近で、無次元熱電性能指数ZT注4が0.7という高い値を示すことを発見しました。これは変換効率7%に相当し、既存のp型鉛フリー硫化物の中では最も高い値です。

テトラヘドライトの高い熱電変換性能は、極めて低い熱伝導率に因るものです。その結晶構造を精査したところ、CuS3三角形の中心にあるCu原子が三角形面に垂直な方向にゆっくり大振幅振動することを確認しました。この振動が硬いCu-Ni-Sb-Sネットワークの熱伝導を阻害し、低い熱伝導率をもたらしていると考えられます。この成果は、環境に優しい高性能熱電発電硫化鉱物の開発に対して大きな手がかりとなります。

ナノ熱電材料の測定手法や熱電インクによるモジュール作製

近年、ナノスケールの熱電材料が開発されていますが、システムが非常に小さいため、その特性を測る評価手法は開発途上にあります。
私たちは、ポイントコンタクトによってペルチェ効果をナノレベルで測定する熱電性能評価装置などを開発しています。
また、熱電変換技術の応用として、インクジェット技術を活用したフレキシブルな熱電モジュールの開発にも取り組んでいます。

これまでに、ビスマス-テルル系熱電材料の微粒子を溶媒に分散させたp型とn型の熱電インクを開発し、インクジェット技術を用いた精密加工によって熱電モジュールを作製することに成功しています。このプロセスにより、従来、作製が困難だった微小サイズのモジュールやフレキシブル基板を用いたモジュールの作製が可能になります。

注1)ゼーベック効果
ゼーベック効果は、2種類の異なる金属または半導体を接合し、両端に温度差を付けると両端間に電圧が生じる現象。これを応用した発電は熱電発電とよばれ、一般に、大きな電位差を得るためにp型材料とn型材料を組み合わせる。

注2)ペルチェ効果
電圧によって温度差を得る、ゼーベック効果とは逆の現象。

注3)テトラヘドライト
天然に存在する鉱物で、一般に、(Cu、Fe、Ag、Zn)12Sb4S13などの組成をもつ。結晶構造は、CuS4四面体、CuS3三角形、SbS3ピラミッドから形成される。

注4)無次元熱電性能指数ZT
ZT=SσT/k(T:絶対温度、S:ゼーベック係数、σ:電気伝導率、k:熱伝導率)で求められ、理想的な熱電材料とは、ゼーベック係数と電気伝導率が大きく、熱伝導率が小さい物質ということになる。しかし、これら3つのパラメータは相関し合っており、例えば、電気伝導率と熱導電率は正の相関関係にあるため、大きなZTを得るのは難しいとされる。


小矢野研究室の紹介
(2:48)

ナノスペースにおけるエネルギー変換(熱電変換と低次元物性)

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