前之園 信也 研究室

前之園 信也 教授

物質化学領域
前之園研究室 前之園 信也 教授

ナノ粒子工学
―バイオ・医療や環境・エネルギー分野への応用をめざして

物質をナノメートルサイズに微細化すると、サイズに由来して、バルクとは異なる物性を示す「ナノ材料」となります。私たちは、ナノ材料の中でもナノ粒子を研究対象とし、主に熱電ナノ粒子、金属ナノ粒子、磁性ナノ粒子について基礎から応用に取り組んでいます。

持続可能エネルギー開発:熱電ナノ粒子

熱電変換素子とは、ゼーベック効果やペルチェ効果注1によって、熱と電気を直接変換する固体素子です。再生可能エネルギーとして脚光を浴びはじめ、その利用は民生用機器から宇宙探査までと幅広く、最近では車載用熱電変換素子の開発も報告されています。熱電変換素子の汎用化における最たる課題は、変換効率です。熱電変換素子の性能指数の向上には、高い電気伝導率と低い熱伝導率の両立が必要ですが、これらが正の相関関係にあるバルク材料には難題です。

ナノ構造制御された熱電材料は、キャリア散乱の抑制とフォノン散乱の増大という相反する要件を満たし、熱電性能指数の大幅な向上が期待できます。私たちは、熱電ナノ粒子を化学合成し、これをビルディングブロックとして、ナノ構造制御熱電材料を創製します。

次世代バイオセンシング技術:金属ナノ粒子

金属ナノ粒子のバルク体とは異なる物性のうち、局在表面プラズモン共鳴や表面増強ラマン散乱注2などの光学的効果は、センシング技術に応用されています。

ナノ粒子バイオセンサーの主流は、化学的安定性に優れ、生体関連分子と結合させやすいAuナノ粒子です。一方、高感度の観点ではAgナノ粒子が検討されてきましたが、Agの酸化されやすい性質が実用化を阻んでいました。そこで私たちは、AuからAgへの電子移動によるAgの耐酸化性の向上を狙い、Agナノ粒子の中心にAuの芯を置く構造を考え、Au/Ag/Auダブルシェル型ナノ粒子を合成しました。これは世界初の、Agの光学特性とAuの化学特性を併せ持つバイオセンシングプローブです。このような異種金属元素から成るヘテロ構造ナノ粒子を合成し、そのメカニズムの解明とともに、化学・バイオセンサーや触媒への応用を進めます。

ナノ磁気医療技術:磁性ナノ粒子

磁性ナノ粒子は外部磁場による操作が可能であり、医療分野での応用が期待されています。例えば診断では、液中での分散・回収を外部磁場によって制御して生体分子を分離する磁気分離、周囲に発生した磁場を変化させる現象を利用したMRI造影剤、また、治療では、交流磁場の印加で発熱する現象を利用した磁気温熱療法、薬剤の担体として磁場によって輸送されるドラッグデリバリーシステムなど、予防から治療まで幅広い技術が研究されています。

私たちは、超常磁性体注3ナノ粒子を合成し、その表面を自在に修飾することで、ナノ磁気医療分野への応用を目指しています。

注1)ゼーベック効果とペルチェ効果
ゼーベック効果は、物質の両端に温度差を与えると両端間に電位差が生じる現象。ゼーベック効果はこれとは逆に、電圧を印加すると温度差が生じる現象。

注2)局在表面プラズモン共鳴と表面増強ラマン散乱
局在表面プラズモン共鳴は、金属表面に局在する自由電子の集団振動(プラズモン)が光電場と相互作用する現象。この現象に伴い、近接するナノ粒子の間隙に吸着した分子のラマン散乱が大幅に増強される現象は、表面増強ラマン散乱とよばれる。

注3)超常磁性体
磁石(強磁性体)もナノメートルサイズになると磁石ではなく、超常磁性を示す。超常磁性とは,磁場を印加すると粒子の磁化が磁場方向に揃うが,磁場をかけないと熱揺らぎにより磁化はランダムな方向を向くため、集団平均の磁化がゼロになる性質。


前之園研究室の紹介
(3:00)

ナノ粒子工学:機能材料の創製から応用まで

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