松村 和明 研究室

松村 和明 准教授

物質化学領域
松村研究室 松村 和明 准教授

再生医療発展につながる、バイオマテリアル研究に挑む

本研究室では、高分子材料を駆使したバイオマテリアルの研究に取り組んでいます。バイオマテリアルは主に医療用材料として用いられ、最近では、再生医療発展の観点から注目されています。なかでも高分子材料は、細胞培養の機材として利用したり、添加して細胞の機能を制御したりできる可能性があることから、非常に期待されています。私たちは、高分子材料の合成や修飾によって細胞に機能を付加することを主テーマに、合成から評価までを行っています。

両性電解質高分子化合物を使った生体材料
~画期的な細胞凍結保護剤

私たちは、正と負、両方の電荷を持つ両性電解質高分子という興味深い特異な高分子を扱っています。ポリリジン(リジンが直鎖状に結合したポリアミノの一種)のアミノ基を、一部カルボキシル基に変換した両性電解質高分子を合成し、その水溶液中に細胞を懸濁して凍結すると、細胞のダメージを防ぎながら凍結保存できることを見出しました。

従来の凍結法では、細胞保護剤にジメチルスルホキシドが使われていますが、これは、細胞毒性やがん細胞分化の誘導の可能性が報告されています。そのため、数十年前より新規凍結保護剤が求められていました。高分子化合物の細胞保護剤は常識では考えにくく、これまでに開発報告はありません。

また、その凍結保護メカニズムの解明を進めています。高分子と細胞との相互作用、低温における水や高分子の挙動などを固体NMR(核磁気共鳴)で解析し、新たな知見を探索しています。
人工角膜や心筋シートなどの再生組織は保存技術が無く、再生医療の周辺技術としてデリバリーやストックの技術が必要です。そうした分野にこの凍結保護技術が応用できれば、再生医療の発展に寄与できるのでは、と考えています。

~機能性足場材料の開発

高分子は、架橋することで網目状の三次元構造を持つゲルを加工できます。再生医療分野では、細胞を増殖させる足場材料が使われていますが、そうした足場をゲルで作ると機能的なものができます。私たちは例えば、幹細胞に直接作用する、あるいは細胞を凍結保護できる足場材料を作ろうと考えています。

~両性電解質高分子の相分離構造の解明

カルボキシル基を導入したポリリジンの水溶液は、水を添加すると相分離を起こします。この現象は溶液濃度に左右され、濃厚状態では一相、水で薄めるとある濃度以下で相分離します。温度応答性も有し、低いと一相、高くなると相分離します。また、塩を加えると、両性電解質高分子の電荷の影響で相分離は解消されます。こうした物理化学的に興味深い性質の詳細を解明し、生体材料へ応用したいと考えています。

生体親和性をもつ生体材料の開発

従来の再生医療では、生体組織が主材料であり、高分子材料は補足的に使われていますが、私たちは、生体組織を人工物で代替できる部位があると考え、生体組織と適合する生体材料をポリマーで創製しようと試みています。

例えば、現在使われている人工関節は、主にポリマーで加工された関節部位と大腿骨に埋め込まれる金属ステムで構成されています。その置換手術は侵襲性が大きく、ポリマーの磨耗など耐用性にも問題があります。そこで私たちは、間接表面の置換ですむ人工関節軟骨を研究しています。生体親和性の高いポリビニルアルコールハイドロゲルを材料に、強度や生体親和性を制御して人工的な生体材料の開発を進めています。

研究室からメッセージ

現在、学会で細胞凍結保存の発表を行うと、受精卵の凍結保存を研究している医学者、種の保存に取り組む農学研究者、食品分野の研究者から声をかけられます。こうした様々な分野との連動も、私たちのような学際領域的研究の醍醐味の一つといえます。

私がバイオマテリアル研究へ進んだのは、大学時代の医療化学との出会いが始まりです。当時、化学を専攻していたものの、生物学や医学の知識の乏しい私にとって、医療化学は興味深い異分野、新分野でした。成果が出せれば医学の貢献につながるところも、実に魅力的に思えました。
学生の方にも、異分野へのチャレンジに躊躇することなく、楽しんで挑んでほしいと思います。

松村(和)研究室の紹介
(4:00)

機能性高分子バイオマテリアル

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機能性高分子バイオマテリアル

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