大木 進野 研究室

大木 進野 教授

生命機能工学領域
大木研究室 大木 進野 教授

NMRを駆使した、タンパク質の構造と機能の探索

新規の試料タンパク質調製法

私たちは、主に核磁気共鳴分光法(NMR)注1を用いて、タンパク質の立体構造や分子のダイナミクスについて研究しています。その取り組みは、NMRを活用するための新規測定技術、NMRによる実験、その実験成果の応用を柱としています。

NMR活用の新規測定技術に関しては、新しい試料タンパク質の調製法を開発しています。通常、試料タンパク質は、遺伝子組み換え大腸菌や酵母などを用いて調製しますが、この方法では調製困難なタンパク質が多数あります。

そこで私たちは、植物細胞を用いてタンパク質を調製する方法を考えました。目的タンパク質の遺伝子を持つウイルスベクター注2を植物細胞に取り込ませることで、タンパク質を発現させられます。これは、50ml培養で数mgもの目的タンパク質を得られる高効率な方法です。これまでに、安定同位体注313Cや15Nで均一に標識されたタンパク質を調製する技術を確立しています。

また、タンパク質の分子構造のうち、イソロイシン、ロイシン、バリンなど特定のアミノ酸を観察する特異的安定同位体標識の技術も開発しています。こうした調製技術により、複雑なタンパク質の立体構造を安定的に発現することが可能です。

気孔の数を増やす分子の構造を解明

私たちの新しいタンパク質調製法では、従来法では調製困難なジスルフィド結合注4をもつタンパク質の調製、安定同位体標識タンパク質の調製、さらに、調製した標識タンパク質のNMR立体構造解析が可能です。
この調製法を用いて、ペプチドホルモンのストマジェンの立体構造の解明に成功しました。

2010年に発見されたストマジェンは、植物の気孔数を増やす生理活性物質として現在唯一確認されているペプチドです。その分子内には3組のジスルフィド結合があるため、従来法では調製が困難でした。私たちは、安定同位体標識ストマジェンを作製してNMRで立体構造を解明し、ホルモンの働きを有する部位も特定しました。植物のペプチドホルモンの立体構造が明らかになったのは、世界で初めての成果です。

こうした知見と技術は、食糧の生産増大につながる植物の品種改良、また、疾病に関与するタンパク質の立体構造に基づく医薬の開発への応用が期待できます。

注1)核磁気共鳴分光法
Hや13Cなど核スピンが0でない核種は、磁場下では2つのエネルギー準位に分かれ、そのエネルギー差に相当するラジオ波を照射すると共鳴が起きる。その共鳴振動数は核種と磁場によって決まるが、同一の核種でも原子核周囲の化学的・磁気的状態が反映されるため、そこから分子構造の情報が得られる。

注2)ウイルスベクター
遺伝子導入法の一種。病原性を除去したウイルスに目的遺伝子を組み込み、細胞に感染させる。

注3)安定同位体
同じ原子番号を持つ元素の原子において、原子核の中性子の数(原子の質量数)が異なり、自然界に安定的に存在するもの。NMR法の観測には、炭素は13C、窒素は15Nなどが利用されるため、試料にはこれら安定同位体の標識が必要。

注4)ジスルフィド結合
2個のチオール基(-SH)がカップリングしてできる共有結合で、SS結合ともいう。ペプチドやタンパク質では、2個のシステイン残基の-SH基がカップリングしてできる。
R-SH+R-SH → R-S-S-R+2H2+2e


大木研究室の紹介
(4:05)

NMRによる構造生物学

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