高木 昌宏 研究室

高木 昌宏 教授

生命機能工学領域
高木研究室 高木 昌宏 教授

生体環境ダイナミクスを探る・操る・創る

本研究室は、細胞膜のダイナミクスを探る、細胞膜の現象を人工膜で再現する、細胞模倣により刺激や毒性のメカニズムを解析する、を研究の主柱とし、人工的なシステムを駆使して生命の現象を明らかにすることに挑んでいます。

膜挙動・膜局在によりAβの毒性メカニズムを解明

長年、生体膜は膜面内で一様に分布し、自由に拡散していると考えられていました。近年になり、生体膜に、飽和脂質やコレステロールを豊富に含む秩序液体相からなるミクロドメイン構造が発見され、これは脂質ラフトとよばれています。飽和脂質、不飽和脂質、コレステロールを混合することで、ラフトを含有する細胞サイズの生体膜モデル、リポソームを作製できます。

私たちは、このリポソームを用いて、アミロイドβペプチド(Aβ)の作用による膜挙動や、ラフト含有膜におけるAβの膜局在を観察し、Aβの毒性メカニズムを探索しています。Aβは、アルツハイマー病の原因物質の一つであり、細胞に対して毒性を示すことが報告されていますが、その詳細な毒性メカニズムは解明されていません。これまでに、増殖、分化、死滅の信号伝達を受容する細胞膜上のレセプターに、Aβが作用して信号伝達を阻害するという知見が示されていますが、私たちは、それだけでなく、Aβの膜への直接作用も勘案すべきと考えました。そこで、リポソーム膜にAβを凝集すると、膜の形態変化が誘起され、その形態変化には2パターンがあることを見出しました。また、ラフト含有膜におけるAβ局在については、ラフト以外の領域への局在を確認しました。

このような膜のダイナミクスによる物質の毒性検査は、ヨーロッパなどで批判の声が大きいドレイズテスト(動物を使った刺激性試験)に代替する方法としても応用できると考えています。

膜の酸化ストレス応答の解析

環境ストレスや老化によって発生する活性酸素種は、生活習慣病のリスクファクターとして知られています。また、信号機能発現の場であるラフトドメインの主成分・コレステロールは酸化されやすく、活性酵素やフリーラジカルの格好の標的です。

人工膜を用いる実験では、実際の細胞とは異なり、代謝系などを考慮せず、脂質に対する酸化ストレスの影響を光学顕微鏡で直接観察できる利点があります。私たちは、酸化ストレスによる膜ダイナミクスや、酸化コレステロール含有膜の物理化学的性質の解析を行い、これまでに、コレステロールを含むモデル膜が酸化ストレスにさらされると、揺動や出芽といった膜ダイナミクスを起こしやすくなるという知見を得ています。こうした成果を、肥満がリスクファクターとなる生活習慣病の発症機構の解明や治療法の開発に応用したいと考えています。

より本物の生体膜に近いリポソーム膜を創製

実際の生体膜は、内層と外層の組成が全く異なる非対称性を有します。これまでのリポソーム作製方法では、内外層の組成が同じ膜、すなわち対称膜しか作れませんでした。実際の生体膜では、ラフトドメインはミクロ構造を安定的に保ちますが、モデル膜では、ドメインが融合して次第に大きくなるなど、生体膜と異なります。そこで、私たちは、生体膜を模倣した非対称性の膜の作製を試みました。水相の上に、リン脂質が溶けた油相をのせ、油水界面に単分子膜を作製、次に油相のリン脂質液滴を、油水間の比重によって、油水界面の単分子膜を介して水相へ移動させることで、非対称性を有するリポソーム膜の開発に成功しました。

つぎのステップとしては、機能化されたリポソームを制御するといったバイオロボティクスへ臨みます。2011年4月には、本学バイオ系教授が参画する「バイオアーキテクチャ研究センター」が発足しました。

分解のする生物学から、創る生物学へ!

私たちの研究分野は、人工的なシステムによってより生きものに近いものを創るという合成生物学です。従来の生物学は解剖や分解など、細分化を通して生物を理解するというものでした。これに対して、合成生物学は、生物を人工的に再現して生命現象を理解するという手法をとります。

かつて、地球の誕生後、10億年足らずで生命が発生したといわれています。混沌とした物質から生命体という秩序が生まれるプロセスに迫ることこそ、合成生物学の醍醐味でしょう。私は、そうした生命の自己組織化、生命が自らを培っていく現象を探求したいと思っています。

高木研究室の紹介
(4:10)

生命現象のダイナミズムと自己組織化

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