高村 由起子 研究室

高村 由紀子 准教授

応用物理学領域
高村研究室 高村 由紀子 准教授

原子レベルの理解を基に新たな薄膜材料を創製する

現代社会において、産業の基幹を支える薄膜材料の高品質化には、薄膜-基板界面の高度な制御が欠かせません。

本研究室では、独自にカスタマイズした超高真空薄膜成長装置や超高真空走査プローブ顕微鏡、最新の透過電子顕微鏡などを駆使して、薄膜の成長過程の「その場観察」と表面・界面構造の詳細な分析を行い、原子・元素レベルの理解に基づいた薄膜材料の高品質化、新たなナノマテリアルの創製をめざしています。

二ホウ化物と窒化物半導体とによる、応用性豊かな薄膜材料

現在、私たちが取り組んでいる主テーマの一つは、環境負荷が小さい照明として普及が期待されているLEDの高効率化をめざした基板材料の開発です。

LEDの製造工程では、発光材料の窒化物薄膜を成長させる基板としてサファイアが使われていますが、サファイアは電気が通じにくく、除熱も難しいという欠点があります。そこで私たちは、導電性、除熱に優れた二ホウ化物に着目し、これをごく薄く被膜したシリコン(Si)を基板として高品質の窒化物薄膜を成長させることに挑戦しています。熱に強い二ホウ化物と窒化物半導体との組み合わせは、Siに代わるパワー半導体としても有望であり、将来的にはスマートグリッドの構成部品としても期待できます。

世界初、究極のSi超薄膜シリセンを作製、 その構造と性質の関係を解明

本研究室は学内の共同研究で、世界で初めて「シリセン」を作製し、その構造と電子状態との関係を解明することに成功しています。

シリセンは原子一層分の厚みしかない、究極に薄いSiの二次元的な結晶です。炭素の二次元結晶グラフェンの研究が2010年度のノーベル物理学賞を受賞したことから、Siのグラフェン版であるシリセンの研究が世界的に広がりました。しかし、Siの場合、その構造上、グラフェンと同様の物質を創製することは不可能とつい最近まで考えられていました。ゆえに、Si基板上のエピタキシャル二ホウ化ジルコニウム薄膜上にシリセンが形成されていることを発見した私たちの成果は、米国の科学誌「DISCOVER」が選ぶ2011年の科学に関する話題トップ100にランクインするなど、大きな注目を集めています。

今回の研究成果では、まず、大面積のシリセンを再現性よく作製できることを実証できました。また、シリセンは自由な結晶構造を有し、これに起因するバンドギャップの導入が明らかになりました。グラフェンでは、その構造を変えるのが難しく、バンドギャップの導入が大きな課題となっています。一方、シリセンは、その独特な構造によって全く新しい物性の発現も期待できます。

今後の課題はたくさんあります。目下、シリセンは金属的な下地でしかその形成が確認されていません。絶縁体上に形成できれば、キャリア輸送特性などの評価が可能になります。また、シリセンは大気中で容易に酸化されてしまうため、その解決もまた、応用研究への課題です。しかし、空想の産物だったシリセンの作製が実現した今、それらは、チャレンジしがいのある課題です。

私たちが取り組んでいる最新の顕微鏡技術を使った研究には、経験と高度なスキルが必要です。しかし、まさに「Seeing is believing」であり、原子の世界を実際に見ることにより、思いもよらない発見や感動があります。

高村(由)研究室の紹介
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原子レベルの理解を基に新たな薄膜材料を創製する

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