松見研究室 松見 紀佳 教授

Photo: 松見 紀佳 教授

〈専門分野〉高分子固体電解質、イオン液体、共役系高分子、バイオベースポリマー
〈キーワード〉グリーンイノベーション、バイオ・機能性ポリマー、二次・燃料電池、高分子化学

ヘテロ元素化学から未来エネルギーを考える

研究内容

1.リチウムイオン2次電池の課題解決を指向した電解質材料の開発

 今日、リチウムイオン2次電池は各種モバイルデバイス用電源のみならず環境対応自動車向け電源や自然エネルギーバックアップ用電源、家庭向け電源として脚光を浴びており、スマートグリッドシステムの構築においても多大なる役割が想定されています。高いエネルギー密度を有するリチウムイオン2次電池ですが、同時に多くの課題も山積しています。従来型の電解質では一般にリチウムイオンの輸送選択性が低いことが課題です。そこで本研究グループではホウ素化学をはじめとするヘテロ元素化学を駆使し、アニオンレセプターや高解離性リチウム塩を導入した新規電解質を開発することにより、リチウムイオン輸送選択性向上への問題解決に挑んでいます。例えば、高分子化イオン液体にアルキルボラン骨格を導入することにより、アニオントラップ型電解質としてはこれまでで最も高いリチウムイオン輸率(0.87)を達成しています。
 同時に、重要な課題として挙げられるのが安全性の向上です。リチウムイオン2次電池においてはこれまで国内外において発火、爆発事故によるリコール報道が相次いできました。今後大容量化への社会的要求が大きなリチウムイオン2次電池において安全対応は急務であり、本研究グループでは難燃性電解質材料の設計と評価を通して、次世代電池の基幹的な電解質の創出を目指して研究を行っています。例えば、イオン液体中における多糖類と各種ホウ素化合物との反応を経て合成された有機・無機ハイブリッド型イオンゲル電解質は優れたイオン伝導特性と難燃性を併せ持つことが見出されており、今後精力的に発展させていく予定です。


2.色素増感太陽電池向け高分子色素増感剤の開発

 無尽蔵な太陽光を利用し、燃料を必要としない太陽光発電は、低炭素化技術の切り札として活発に研究が進められています。中でも新型電池として軽量で低コスト化が望める色素増感太陽電池の普及拡大に期待が高まっています。本研究グループでは、今日の色素増感太陽電池における優れた色素増感剤であるβ-ジケトナートルテニウム錯体を高分子化し、機能向上に取り組んでいます。色素を高分子化することにより、高分子色素特有の集光効果(アンテナ効果)による光電変換効率向上が期待できるほか、高分子担持によるレアメタル(ルテニウム)の回収再利用の促進、高分子効果(多点相互作用)による電極への吸着性の向上、安価な有機色素ユニットをアンテナとして活用することによるレアメタル(ルテニウム)使用量の大幅な低減などが望まれます。例えば本グループではうこんの機能色素であるクルクミン由来ポリエステルをβ-ジケトン型高分子配位子として利用した様々な高分子ルテニウム錯体を開発し、実際に太陽電池を構築しつつ機能評価を行っています。

使用装置

核磁気共鳴分光装置、赤外分光光度計、インピーダンスアナライザー、電気化学アナライザー、高真空グローブボックス、ポテンショガルバノスタット、ソーラーシミュレータ、粘度計、示差走査熱分析装置

過去5年間の主な研究業績

  1. R. Vedarajan, Y. Hosono, N. Matsumi, π-Conjugated Polycarbazole-boron Complex as Calorimetric Fluoride Ion Sensor, Solid State Ionics, in press (2014).
  2. K. S. Smaran, R. Vedarajan, N. Matsumi, Design of Organic-Inorganic Hybrid Electrolytes Composed of Borosilicate and Allylimidazolium Type Ionic Liquids, Int. J. Hydrogen Energy, 39, 2936-2942 (2014).
  3. N. Matsumi, N. Yoshioka, K. Aoi, Synthesis of Boric Ester Type Ion-gels by Dehydrocoupling of Cellulose with Hydroboranes in Ionic Liquid, Solid State Ionics, 226, 37-40 (2012).
  4. T. Ogoshi, N. Ueshima, T. Yamagishi, Y. Toyoda, N. Matsumi, Ionic Liquid Pillar[5]arene:Its Ionic Conductivity and Solvent-Free Complexation with a Guest, Chem. Commun., 48, 3536-3538 (2012).
  5. 松見紀佳、Polymer Journal 論文賞―日本ゼオン賞、高分子学会 (2009).
連絡先

松見 紀佳/E-mail:matsumi@jaist.ac.jp TEL:0761-51-1600 FAX:0761-51-1665
URL:http://www.jaist.ac.jp/ms/labs/matsumi

合成化学を基盤にしながら、リチウムイオン電池や太陽電池など社会的要求の高い研究分野に果敢にチャレンジします。クリエイティブな発想力と失敗を恐れない実行力、社会貢献への意識などをメンバーと共に磨いていきましょう。