大島研究室 大島 義文 准教授

Photo: 大島 義文 准教授

〈専門分野〉透過型電子顕微鏡、表面界面物性、ナノ物質
〈キーワード〉グリーンイノベーション、新計測技術、表面・界面物性

透過型電子顕微鏡を駆使した未知なる表面ナノ物質の探索

研究内容

 表面ナノ物質の物理化学は、21世紀の創造科学技術と言われているナノテク、ライフサイエンス、情報技術、環境の根底と深く関わり合っています。
 表面の物理化学的現象に関する研究には歴史があり、これまでに様々な現象が解明されるとともに新物質が見出されています。しかし、金属ナノ粒子の触媒効果などに代表されるように原子スケールでの物理化学的現象の解明や新物質の探索は、大きな関心が寄せられているものの、その手段が限られているためまだまだ未開の領域と言えます。
 透過型電子顕微鏡は、カーボンナノチューブの発見に代表されるように我々には見えていない未知のナノ物質を探索する上で極めて強力な手段であります。本研究室では、世界的にも稀な超高真空電子顕微鏡にプローブ顕微鏡など計測装置を組み合わせる手法を独自に開発し、未知なるナノ物質の構造・物性を明らかにしていきます。そして、このようなまだ未知なる表面ナノ物質の探索を通じて、21世紀の創造科学技術に貢献します。

1.ナノ接点を探索する

 1990年代に金属ナノ接点が室温においても量子化伝導を示すことが見出され、「室温量子伝導」として大いに注目されました。我々は、STMを透過型電子顕微鏡に組み込んだ装置を開発し、金ナノ接点の原子配列とその電気伝導の関係を調べました。その結果、接点の結晶方位に依存した電気伝導の振る舞いや接点を構成する原子列の数に応じた量子化(図参照)などを明らかにしました。
 ナノ接点の力学的特性がマクロな力学的特性と異なることは、多くの研究報告で示唆されています。しかし、ナノ接点の原子配列とその力学的特性の直接的な関係はわかっていません。透過型電子顕微鏡に組み込める原子間力顕微鏡を開発し、ナノ接点の力学的特性を明らかにすることでナノ物質設計への指針を得ることに挑戦します。

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破断直前の金ナノ接点構造とコンダクタンス変化

2.3次元的にナノ物質を探索する

 近年、収差補正装置が開発され、透過型電子顕微鏡の空間分解能は格段に向上しました(加速電圧200kVにおいて70pmに達している)。その結果、これまで不可能であったリチウムや水素原子の可視化を実現しました(図参照)。また、観察面内の空間分解能のみならず深さ方向の分解能(焦点深度)が向上したため、シリコン結晶中のドーパント原子を検出できるようになりました。
 このような高い空間分解能を活用し、ナノ物質の原子配列を3次元的に探索する手法を確立することで、未知なるナノ物質の探索に挑戦します。

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結晶[110]方位から得られたSTEM-ABF像V-O-Li-Li-O-Vの原子配列がわかる

3.電気化学反応を探索する

 リチウムイオン電池など固液界面における電気化学反応をナノスケールから原子スケールで可視化する手法を確立し、リチウムイオン電池などの高効率化に寄与する材料設計指針を得ることに挑戦します。

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金表面に銅アイランドが電着した様子のTEM像と同時に計測した電気化学反応のグラフ

使用装置

透過型電子顕微鏡、各種計測装置、計測制御ソフトウェア(LabView)、TEM/STEMシミュレーションおよび解析ソフトウェア、試料作製関連装置

過去5年間の主な研究業績

  1. S. Lee, Y. Oshima, E. Hosono, H. Zhou, K. Kim, H. M. Chang, R. Kanno and K. Takayanagi, Reversible Contrast in Focus Series of Annular Bright Field Images of a Crystalline LiMn2O4 Nanowire, Ultramicroscopy 125, 43-48 (2013).
  2. Y. Oshima and Y. Kurui, In situ TEM observation of controlled gold contact failure under electric bias, Phys. Rev. B 87(R), 081404 (2013).
  3. S. Kim, Y. Oshima, H. Sawada, T. Kaneyama, Y. Kondo, M. Takeguchi, Y. Nakayama, Y. Tanishiro and K. Takayanagi, Quantitative Annular Dark Field STEM Image of Silicon Crystal using a Large Convergent Electron Probe with a 300-kV Cold Field Emission Gun, J. Electon Microscopy 60, 109-116 (2011).
  4. Y. Oshima, Y. Kurui and K. Takayanagi, One-by-One Introduction of Single Lattice Planes in a Bottlenecked Gold Contact during Stretching, J. Phys. Soc. Jpn. 79, 054702 (2010).
  5. Y. Oshima, H. Sawada, F. Hosokawa, E. Okunishi, T. Kaneyama, Y. Kondo, S. Niitaka, H. Takagi, Y. Tanishiro and K. Takayanagi, Direct Imaging of Lithium Atoms in LiV2O4 by a Spherical Aberration Corrected Electron Microscope, J. Electon Microscopy 59, 457 (2010).
連絡先

大島 義文/E-mail:oshima@jaist.ac.jp TEL:0761-51-1500 FAX:0761-51-1505
URL:http://www.jaist.ac.jp/ms/labs/oshima-lab/

 私たちは、透過型電子顕微鏡をベースとした計測システムを独自に開発することで、表面ナノ物質の原子配列とその電子状態・結合状態といった物性の関係を直接的に明らかにするという独創的な研究を行っています。みなさんとともに、様々な計測手法を考案し、未知なるナノ物質の探索を進めていきます。