下田研究室 下田 達也 教授

Photo: 下田 達也 教授

〈専門分野〉磁性材料、電子デバイス、マイクロ液体プロセス
〈キーワード〉ICTイノベーション、グリーンイノベーション、ソフトマターデバイス、デバイス物理、半導体物性、太陽電池、表面・界面物性、電子デバイス

微小溶液を用いた電子デバイスの直接形成

研究内容

 高度に発達したハイテク電子デバイスの世界では技術パラメータは高度に煮詰められているように思われますが、製造エネルギー、材料の使用効率、設備効率といった観点は見落されています。例えば、CVD、PVDといった薄膜作製の真空装置は、原料源から基板に堆積する材料の割合(歩留まり)は10%以下で、さらにフォトリソで削り取るので最後まで残る分は1%以下になってしまいます。高価なハイテク素材の99%が無駄になっているわけです。同様に、製造エネルギー面でも大いに改善の余地があります。このように、現状の電子デバイス産業をエネルギー効率、資源効率的な観点から検証すると極めて低水準にあると言ってよいでしょう。環境問題の観点からその効率を抜本的に改善することが強く求められます。
 上記の課題解決のために機能性液体から電子デバイスを作成する「マイクロ液体プロセス」と呼ぶ手法が脚光を浴びています。このプロセスは、(1)出発材料として機能性液体を用い、(2)必要最小限の材料で付加的に電子デバイスを作成する手法、と定義され、世間ではインクジェット印刷法などと呼ばれることもあります。このプロセスによって、製造エネルギーの低減、資源の利用効率向上、等が実現でき、現在ディスプレイ等の製造法が根本から変わろうとしています。
 図1にマイクロ液体プロセスによる薄膜形成過程を図示しました。このプロセスは、(1)機能性液体の作製、(2)微小液滴の生成、(3)液体パターニング、(4)乾燥による固体膜形成、という四過程からなります。機能性液体とは、半導体、絶縁体、金属薄膜に変換できる前駆体溶液であり、微小液滴の生成にはインクジェット法あるいはLSMCD法(図2)を用います。表面エネルギーによって微小液滴の自己組織的な精密パターニングを実現します。また微小液滴では表面積が体積に比べて相対的に大きいので、急激な乾燥が起こり、溶質が外側に向かって移動します。この現象を正しく理解して制御することで所望のプロフィールを持つ薄膜を形成できるようになります。
 本研究室ではマイクロ液体プロセスの基礎となる微小液体のパターニングと製膜挙動の理解と解明を通じてこのプロセスの体系化を行うとともに、マイクロ液体プロセスを用いた新規有機デバイス研究と有機トランジスタの回路研究を行い、有機デバイス特有の性質を明らかにする。

使用装置

LCMCD装置、インクジェットデバイス描画装置、粘度計、接触角計、電気特性測定装置、スパッタ装置、フォトリソグラフィー装置、電子顕微鏡、原子力間顕微鏡、等

過去5年間の主な研究業績

  1. Toshihiko Kaneda, Daisuke Hirose, Takaaki Miyasako, Phan Trong Tue, Yoshitaka Murakami, Shinji Kohara, Jinwang Li, Tadaoki Mitani, Eisuke Tokumitsu and Tatsuya Shimoda, Rheology printing for metal-oxide patterns and devices, J. Mater. Chem. C, 2, 40-49 (2014).
  2. Tatsuya Shimoda and Takashi Masuda, Liquid silicon and its application in electronics, Japanese Journal of Applied Physics 53, 02BA01 (2014).
  3. Zhongrong Shen, Yasuo Matsuki and Tatsuya Shimoda, Selected Deposition of High-Quality Aluminum Film by Liquid Process, J. Am. Chem. Soc. 134, 8034-8037 (2012).
  4. Takaaki Miyasako, Bui Nguyen Quoc Trinh, Masatoshi Onoue, Toshihiko Kaneda, Phan Trong Tue, Eisuke Tokumitsu, Tatsuya Shimoda, Totally solution-processed ferroelectric-gate thin-film transistor, APPLIED PHYSICS LETTERS 97, 173509 (2010).
  5. Jinwang Li, Hiroyuki Kameda, Bui Nguyen Quoc Trinh,Takaaki Miyasako, Phan Trong Tue, Eisuke Tokumitsu ,Tadaoki Mitani and Tatsuya Shimoda, A low-temperature crystallization path for device-quality ferroelectric film, APPLIED PHYSICS LETTERS 97, 102905 (2010).
連絡先

下田 達也/E-mail:tshimoda@jaist.ac.jp TEL:0761-51-1550 FAX:0761-51-1149

材料として有機半導体、有機導電体、有機絶縁体を用い、インクジェット法でいろいろな回路を描いてみよう。究極はCPUを短時間に描いて完全に動作させることを目指そう。このような研究を通じて、微小溶液プロセスと有機デバイスの真の姿を明らかにしてゆきたい。