研究指導について
1)教育方針
JAISTに入学された皆さんには、学部とは一味も二味も違うものを経験したい、将来に向けて確かな力を身につけたい、自分をもっと磨き伸ばしたい、など、自分を大きく変化、発展させようとする心に秘めた思いがあると思います。堀田研究室ではそういう学生皆さんの思いを助け、実現させようと、学生さんと一緒に修士研究に取り組み、そして研究を一緒に楽しんでいます。
また、堀田研究室では、将来、社会に出て、その荒波にくじけない、強い心と実力をもった人材育成に取り組んでいます。現在、会社に入社しても3年で辞めてしまう社会人や、大学を出ても、定職につかない、またつけない人が増えています。これは、若者個人の責任だけではなく、もちろん、社会の体制にも問題があると思います。しかしながら、そのような厳しい社会だからこそ、本物の力を持って、修了していただきたいと考えています。
今までに堀田研究室を修了した学生さんは、
全修了生 42名 (2007年4月現在)
(内、博士後期課程4名(出身学科、機械系1名、化学系1名、物理系2名(内1名ベトナム国籍))
内訳(出身学科別)
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電気系 24名(内1名、修士1年間留年)
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材料系 8名
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物理系 4名
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化学系 4名 (内1名、修士1年間留年)
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機械、金属系 2名
となっています。堀田研究室は、電子デバイスを研究する研究室なので、出身学科の約半分は電気系ですが、電気とはかけ離れた化学系から来る学生さんも少なくなく、その中には博士号を取得する者もいます。また、博士後期課程では、逆に電気系出身者はいなく、他の分野の人で占められているのが、堀田自身、少し驚きです。修了生は、2−3名を除き、殆どが電子、電気に関係した企業に就職しています。(詳しくはホームページの「修了生の就職先」を参照して下さい。)しかし、残念ながら、留年してしまった人がわずか2名ですがいました。留年は他分野からの人がなりやすいのでは、ありませんでした。理由は、物理系の科目が全く取れない、あるいは1科目は取れたが、修士研究をこのまま進めていくには、かなり無理があったからです。また、この状態で修了するのは、本人や会社の人にとってお互いにためにならず、人生を長い目で見て、もう1年勉強した方が、社会に貢献できる実力をつけれるとの判断もありました。実際に、期待通り、電気系の会社で生きがいを持って(自分を必要とされていることが身も持って感じ取れ、また、その期待に応えれる)、ずーと働いています。
このように、電気、物理系学科出身者ばかりでなく、それとは異なる出身学科の学生さんが、約1年半という長いようで短くもある期間で、社会に貢献出来るための多くのことを如何に学び、また結果を出すのでしょうか。それは、堀田研究室では、修士を修了する修士2年3月までに、幾つかの段階を踏んだ活動メニューが功を奏しているように感じます。以下に、それについてお話します。
2)具体的な研究指導
a) 7月の配属
希望を入れた研究室(仮)配属は7月になると思いますが、そこで先ずしてもらうことは、第一に、授業をちゃんと受け、修了に必要となる単位をできるだけ多く取ってもらうことです。ですから、具体的な実験などは始まらず、せいぜい、先輩の実験の様子を見学し、皆さん自身の修士研究テーマを決める期間としています。また、堀田研では、毎週土曜日の午前中に1週間の研究をまとめ、発表する研究会がありますが、そこで新M1の人は、修士研究で必要となる個別の演習問題(新人演習)をしてもらいます。1問か2問です。もちろん、どんな研究テーマになるか分からないのに、個別の演習問題というものが出せるのかという疑問はもっともなのですが、出す演習の問題は、基礎的なものであり、どの研究テーマでも当てはまります(人によっては、学部ですでに終えているものもあるとは思います)。また、個別といっても結局、解答はみんなが揃っている研究会でしますので、その情報はみんなで共有することができます。つまり、1人でやると大変な量の基礎知識をみんなで分け合って報告し合うということです。詳しいことは、最後の注釈を参考にして下さい。
授業では、物理系基幹講義である、応用電磁気学特論、量子力学特論、統計力学特論、固体物理特論第一を受けてもらうように指導します。おおよその想像はつくと思いますが、これの科目の知識は、堀田研究室の研究テーマに関する電子デバイス、及びそれらの薄膜作製にとっては、必ず必要となるからです。少なくともRP提出までには4科目のうち2科目の単位の修得をお願いしています。(できれば、応用電磁気学特論、固体物理特論第一)
b) 夏休みから9月
1−2期が終わると夏休みの8月ですが、M1の人は、この時期を利用して先ほどの演習問題と、大まかに研究テーマを決めてもらい、装置の操作に慣れるようなメニューを用意しています。また、その研究テーマに関する修士論文など、日本語で理解しやすい資料を準備して渡しますので、それを読んでもらいます。分からないことや疑問点は、堀田や先輩などに気軽に聞くと良いでしょう。分からないままにして放置したり、不確かな理解のままにしておくと、修士研究中につまずいたり、大きな失敗に繋がったりしますので、積極的に聞きましょう。
おそらく配属したての頃は、新人演習などをすると知らないことや正確に理解できないことが多くあり、戸惑い、苦しい状況になると思います。他分野から来た人はなおさらでしょう。でも、この戸惑いや苦しさが、大きな達成感、満足感、充実感を後で与えてくれると思います。スポーツはうまくなり、試合に勝つと、面白くなると思いますが、でも、そこに到達するまでには様々な苦労を伴います。研究の場合も、面白くなる、つまりいままで分からなかったものが、知らなかったものが分かり始めると、意外と昔の苦労が笑い話になるくらいに研究を楽しめると思います。あきらめずに、地道に、こつこつと、不完全でもいいのです、出来る範囲内で日々積み重ねていけば、知らない間に実力が付き、M1の終わりごろには、自分の成長を自分自身が感じ取ることがきると思います。ただし、スポーツと異なり、1ヶ月ぐらいでの練習ではなかなか効果が見えてこないのが、もどかしいのですが。
なお、研究室での夏休みは、1週間程度と少し短めかも知れませんが、これは、今後来るRP(Research Proposal, 修士研究計画提案書)の作製や就職活動を考えると、早め早めの対応が大事との判断からです。
c) 2−1期(10、11月)
2−1期では、今後必要となる科目に絞って履修することになると思いますが、1−1や1−2期に比べて履修する科目数が少ないので、そろそろ先輩の実験のお手伝いをしてもらい、実験に慣れ、本格的な修士研究の土台を築いてもらいと思います。もちろん、基礎的な知識は、研究会での演習で補い、それが修了すると、研究テーマに関係した学術雑誌(英文)の概略を日本語で紹介してもらいます。はじめは、堀田の方から本人の研究テーマに関係した論文を幾つか与え、次第に自分で論文を選べるようにしていきます。この時、見たことも聞いたこともない様々な専門用語や研究のやり方が出てきますが、そこから、研究の質を学び、より深い知識をもらうことができると思います。
またここから、輪講という研究室の勉強会に本格的に参加してもらいます。(7月からの配属からでも、講義時間が許せば聴講参加してもらいます。)輪講とは、参加者みんなで研究に関係する一つの専門書(通常英文)を読みまわし、参加者みんながその内容を深く理解するための会です。堀田研の場合はKittelのIntroduction to Solid State Physics をやっています。毎回、1人の担当者が、文章を1段落ずつ英文で音読し、その後、日本語訳、そして必要ならば読んだ文章の説明を行い、その後、参加者から質問があれば、それに応えます。もし、質問者の納得が得られなければ、その質問は次回までの宿題となります。これは、固体物理の知識を修士研究に生かすためもありますが、それ以上に、真に、世間で認められる技術者、研究者になってもらうために、また社会に出た時必ず皆さんの身を助けてくれる知力と粘りという実力をつけるために、やっています。(詳しくは注釈を参考にして下さい。)
d) 2−2期以降(12月から翌年3月まで)
2−2期以降からは、本格的に自分の手で実験結果を出し、それを2回に1回の割合で研究会で発表します。あとの1回は、英語論文の文献紹介をしてもらいます。これらは、RP作製に役立ち、ひいては、就職活動の実質的な1部となっています。3月のRP最終提出までに、かなりの論文数を読み込み、自らの手で実験しデータを取り、修士研究に関する土台をしっかりと築いてもらい、修士2年の修士研究、就職活動に備えてもらいます。ここまでくれば、配属当時の不安は殆ど消え、出身学科に関わらず、ほぼ同じスタート点に立ったような感じになると思います。例えば、異分野からの人にとっては、配属当初あった電気のことをあまり知らなくても大丈夫なのかという不安が無くなり、電気、物理系学科出身者にとっても、より専門に深みを増したものを感じると思います。ただし、未知の開発に取り組み、その問題を解決したり、新しいもの生み出すという実力は、まだまだ付いていない感じだと思いますので、それを身に付けるために、次の修士2年からの修士研究を本格的に始めます。
e) 修士2年
修士2年は、基礎知識ばかりでなく、自分で悩み、苦労し、様々な壁を自らの手で破る経験を積むためのものです。堀田研究室では、修士2年の修士研究で立ちはだかるその壁を、皆さんが破って前進できるように、出来る限りお手伝いします。修士研究での議論は主に、週に1度、土曜日で行う研究会で行いますが、個人的には常時議論できる体制になっています。自分の研究には直接関係のない友達も参加する研究会で話すことは、自分の研究内容を知ってもらい、他の人から見た客観的な意見を聞くことができます。時には、少し外れた意見も出ることがありますが、客観的で新鮮な意見ですので、「そういう見方もあるのか」とよりよい刺激になることもあります。実は、それ以上に大事なのは自分の研究ばかりでなく、他人の研究を知ることです。通常、就職での仕事は、修士研究に多少関係していても、ほぼ同じテーマのものは、殆どありません。この時、意外と友達がやっていた研究に近い仕事に携わることがありますので、他人の研究報告を聞くことは、実は発表者ばかりでなく、聞き手にとっても大変ためになることなのです。また、各研究テーマは、世の中のごく一部の現象を扱っているだけであり、今後様々な異なる分野の仕事に入るであろう皆さんにとって、他の研究領域の知識を身につけておくことは、実は、学生時代にしか得られないとっても大きな財産であることを、将来、気がつくことでしょう。
このように修士2年では、精力的に修士研究をしてもらいます。そして、教員は時には厳しく、時には褒め、叱咤激励を繰り返しながら、皆さんの活動を見守っています。このように修士研究を進めていくと、やがて、研究に対して独自の意見を持つようになり、「こうしたら、もっと良くなるのではないか」、「先生の言うこともそうかもしれないが、後でこれを試してみよう」などと、研究内容がかなり分かってくると面白くなり、自主的に研究を進めるようになる、つまり研究を楽しむことができるようになると思います。なお、さらに研究を深め、発表技術を身につけ、技術者あるいは科学者の卵としての実力を伸ばしてもらうために、9月頃及び3月に行われる応用物理学会で、皆さん自身の手で出したデータで研究成果を発表してもらいます。
このようにして堀田研究室では、学生の皆さんを社会に十分通用する技術者、研究者に育て上げ、多くの修了生を輩出してきましたし、今後もこれを続けていけるように努力をしていくつもりです。
f) その他
1)堀田研究室には、現在、海外からの留学生(博士後期課程)が2名在籍しています。彼らとのディスカッションは、基本的に英語ですが、M1の時にはまったくコミュニケーションできない人も、修了するころには意思疎通ができるようになっています。これも、皆さんにとっては大きな財産となることでしょう。
2)堀田研究室では、通常のコンパに加え、毎年7月か、8月当たりに、1泊2日の根性合宿なる合宿を行います。その一部は、ホームページの課外活動に載せています。これは、今後行う修士研究で立ちはだかる壁を乗り切るための根性を養うためもありますが、実は、体がヘロヘロになるまで運動するという特訓を通じ、研究室内の精神的な融和を図るためです。また、最近はあまり行っていませんが、修士論文発表後あたりに、スキーツアーをしています。あと、たまにリフレッシュを兼ねて、テニス、ソフトボールなどの運動もしています。
注釈
ここでは、以下の項目についてより詳しく説明します。
・ 配属初期に行う演習(新人演習)について
演習を解くに当たり、資料などを事前に与える場合がありますが、多くは、図書館などにある専門書を読み、あるいは友達などと相談しながら、自分で探し、考え、まとめ、そして研究会で発表してもらいます。これによって調べたことは、本当に生きて使える知識となると堀田は思っています。もちろん、疑問は堀田にも聞いてください。よくあることですが、公式だけ覚えて、その使える条件などを無視して計算して出た数値から誤った概念を持ち、研究の進展を大きく阻む場合があります。事実、私自身がその悲哀を経験しているので、そういうことを無くしたいのです。多少間違っていても、研究会で修正されますので、何が何でも完全なものでなければならないことは、ありません。要は、皆さんのこの時期には、自分で探し、悩み努力することが、大切なのです。そうやって、本物が見てくるものだと思っています。また、学部でやってきた学生さんもいるかも知れませんが、そうであったとしても、もう一度基礎からそれを学び起こすことは、修士研究の中身を根本から理解し、発展させるためには必要なことだと私は思っています。その時期は、忙しさに追われ、理解できないかも知れませんが、このことは、今後来るであろう就職活動の面接、筆記試験に絶大なる効果を発揮することでしょう。
・ 輪講について
輪講では英語で書かれた原本を用いますが、その訳本は固体物理特論第一のtextとなっており、「エネルギーバンド」までは、授業でします。本輪講では、その章より先の章をやります。時間は、朝の9時から1時間40分ぐらい行い、授業の2限目には間に合うように終わります。Kittelの固体物入門は物理の基礎を十分理解している人にとっては、入門かもしれませんが、通常の学部卒出身者にとっては、とても難解な本となっています。そのため、その担当者になった人は、例え、担当ページが1ページであったとしても、その内容を参加者全員に理解してもらうように、自分自身が理解しようとすることは、とても多くの時間を使い、悩むものとなります。「時には、こんなことをしていたら、修士研究が進まないじゃないか」とじだんだ踏むこともあるでしょう。というのは、私自身が学生時代にこの本を輪講し、悩み苦しんだからです。今で思えば簡単なたった1つの問題を、2週間ほど頭の中をめぐり、実験中も頭を悩まし、いつ放棄しようかいつ止めようかと自分との戦いがありました。また、図書館に行き、専門書を調べ探しまわり、足が棒になりましたが、結局、期待するようなものはなく、ぐったりした記憶もあります。(ただ、多くは、分からないところを含め、関係するところをはじめからじっくり読み、自分で基本から論理立てて考えていけば、おのずとわかり、「なんだ、こんなことだったのか、筋道を通して考えれば、簡単ジャン」と思ったことがよくあります。つまり、はじめから基本に立ち返り、腰をすえて理解しながら進めばよかったのですが、なんだか、答が載っている本を探し出そうと、安易な気持ちが先立ち、結局遠回りしていたようです。急がば、回れですね。)でも今思えば、この徒労とも思える「調べよう、理解しよう」とする時間が良かったと思います。このことは、研究での粘りと考える力を、知らず知らずに養ってくれたと今でも、信じて疑っていません。(効率的にやることは大事ですが、一見無駄と思われることをやることも、長い目で見ると、本当は大事な訓練になっていることもあります。)もちろん、固体物理に関しての知識も人一倍付いたと自負しています。もし、ある程度考えても、また誰かに相談しても分からなかった時、ヒントを堀田に聞くことも出来ます。修士研究の進行が著しく遅れるまでに悩むことは、本来の目的から外れるからです。これを思うと、化学や機械出身者の学生は、本当についていけるのかと心配になると思いますが、いままでの先輩が不思議と挫折することなく、来ています。研究室のみんなの助け合いが功を奏したということは、良く聞きますが。
・ 授業科目について
過去にどうしても2科目取れなかったために、1年間、人より多く勉強してもらった人が稀に(2人名)いますが、その分実力が付き、会社では大変重宝され、自分の仕事に生きがいを持って働き続けている修了生がいます。当時この決断は、彼も辛かったと思いますが、私自身も辛かったものです。今思えば、この時了解してくれた彼の勇気に脱帽すると共に、私自身も勇気をもらえたと思っています。
・ 今までの反省
今までの研究会、輪講、研究指導を通じて堀田は反省すべきことがあります。過去に堀田の舌足らずと短気で出た言葉で、学生さんに辛い思いをさせた可能性があります。可能性というのは、口から出た言葉自身の問題もありますが、受け手の気持ちが大きく関係すると思うからです。ある人にとっては、その言葉はすんなり受け入れられる内容であっても、ある人にとっては、ものすごく痛烈で、許しがたい感じになることもあるからです。もちろん堀田自身は「これぐらい分かってくれよ」という強い思いと、じれったさからどうも自分自身を制しきれず、出たものなのですが、まだまだ教育者としては、半人前の様です。反省至極です。