4.聴覚モデル

 耳に入ってきた音(音声)が聴覚系内でどのように符号化されているかを調べるために、生理学の知見を取り入れたモデルの構築[25][26]を行なっている。

4.1 聴覚末梢系および蝸牛神経核のモデル化[25][26] (研究期間:1995 - )

 蝸牛神経核は音声などから最初に意味ある情報を取り出している部位として知られているが、このモデルを構築する場合にその高度に特殊化された機能を解明するためには、平均的な情報ではなく、神経発火パルスそのものを入力として用い、出力としても神経発火パルスを出力するモデルを考える必要がある。

 そこで、外耳、中耳から蝸牛を通って聴神経に至るまでの聴覚末梢系を生理学の知見に忠実に計算機上に構築し、聴神経における神経発火パルスの再現を試みた[26]。生理学データとの定量的な比較の結果、良い一致を示した。

 また、この神経発火パルスを新たに構築した蝸牛神経核モデルへの入力として用い、蝸牛神経核での母音の特徴抽出機構について検討を行なった[27]。

4.2 上オリーブ核のモデル化[27] (研究期間:1996 - )

 音源方向定位に深く関わっている聴覚系内の部位である上オリーブ核のモデルを計算機上に構築している。この場合も、機能を解明するためには神経発火パルスそのものを入力として用い、出力としても神経発火パルスを出力するモデルを考える必要がある、との考えから、ニューロンの活動電位、シナプス伝達機構、神経発火などを生理学的知見に忠実なモデル化を試みている。