Daily Archives: 2012年3月4日

屈託のない音楽は楽しい

暖かい日がしばらく続いたお蔭で庭の雪が完全に消え、1メートル以上積み上がっていた駐車場の雪も縮んでほぼ消えかけている。

朝は普通に起きて朝食をとった後、リストに関する本を読んで過ごした。リストが世間的にあまりよいイメージを持たれていないのは、ネガティブキャンペーンを幾度も喰らったからだろうという気がした。レッスン料をとらなかったり、宗教曲を沢山書いたりして、無私の精神で働いたというのに気の毒だ。寛容だったから、精神を病んだ人が近づいてきても遠ざけられなかった。

今日はピアノを弾かないのかと家人に言われ、一考。腱鞘炎の疑いがあり、指が痛むのだが、弾かないのも落ち着かないのでとりあえず消音に使っていたマットを取り外してピアノに向かった。ベートーベン後期のピアノソナタ第30番を弾いてみる。結構いけそうだったので31番、32番と進む。この3曲についてはこの世の物とは思われない。暗い雲が切れて陽の光が差してくるような感じがする。32番を弾き終えてペダルを外したところ、さらに20秒くらい残響音が聞こえて(幻聴)唖然とした。

これらの曲を指して内省的という人は多いが、内省的とはどういうことをいうのだろう。古くからの友人と先日会って話していて今も記憶に残っているのは「霊性」についての彼の説明だった。肉体、魂、霊の三要素から人が成っているとする。肉体は乗り物で自動車みたいなもの。魂は運転手。自動車をタクシーとすると、霊というのは乗り込んでくるお客さん。お客さんがどこへ行こうとしているのか、運転手である我々は彼/彼女に聞かなければならない、「お客さんどちらへ?」、と。ところがこの客はどこへ行ったらいいのか教えてくれない。何処へ行ったらいいんでしょう、と戸惑いながらハンドルを握り、タクシーを動かす運転手みたいなものだ、我々は。と教えてくれた。

ベートーベンのピアノソナタ、とくに最後の3曲を弾いていると、そういう運転手の気持ちになる。この場合、客は曲であるのだが。

痛みがほぼ消えたので、29番から24番まで遡っていった。といっても29番は第1楽章だけに留めた。この曲は興味深いのだが、最後の方がまだよくわからない。ベートーベンが書いた32曲のピアノソナタの中で一番過激というか、破格なのだが(と私は思うのだが)、CDで聞いてもなんだかしっくり来ない。もう少し楽譜を読み込まないと手を付けられない感じ。

日曜日の朝ということもあって、あまり複雑なものはやりたくない。久しぶりにモーツァルトを弾いてみた。最後のソナタから遡っていく。数曲弾いたところでストップがかかり、終了。

モーツァルトというのは、時代のせいもあるのだろうけど、感情がほんの少ししか発露されていなくて、ベートーベンなどと比べると10倍くらい慎ましく感じられる。その微妙なニュアンスを表現していくのが面白さなのだろう。簡潔で、慎ましい音楽だ。

夕方、外から帰ってきて、また少しピアノに向かってみた。腕の筋肉が痛い気もしたが、動かさないよりは少し動かした方が楽になるように思った。フォーレの即興曲第2と第3をさらってみた。夜想曲は日が出ているうちは弾けないから。短い曲だからこれらを弾き終えてもまだ明るい。当たり前だけど。こんな時は何がいいのだろうと考えた末、ショパンの24のプレリュードにした。最初から最後まで弾いてみたが最後の曲は腱鞘炎の指にはちょっときつかった。左手までおかしくなる気がする。それはともかくとして、昼でもなく夜でもない、鬱々とした曲調は夕暮れ時に合う。

まだ何か弾きたかったが、夜想曲という気分でもなかったので、これも久々にマズルカをいくつかさらってみた。こういう屈託のない音楽は楽しい。心の綾は透けるように聞こえてくるけれど。

薬指のしこり

先日、ホーム整体師に肩関節および肩胛骨の使い方に関する指導を受け、自分で気づいていなかったが結構肩が凝っていたことを理解したのだが、それを受けてピアノ演奏のフォームをいろいろ修正しているうちに異変に気づいた。右手薬指の根本に軟骨みたいなものが飛び出している。。。 なにかまずいことをしたらしい。痛みの走り方からいって腱鞘炎だろう。やってしまった。しかし指の関節をおかしくしたのは初めて。いい年して弱い指を酷使した。いや当たり前の老化現象というべきか。

思い当たることと言えば、ここしばらく(数週間かな)リストのメフィストワルツ第一番を一日三回くらい弾いていたこと。今日はラフマニノフの「6つの楽興の時」を通しで弾いたけど、たぶんそれくらいではこんなことにはならない。ラベルの「鏡」「ソナチネ」(も通したけど)はフォルテッシモで弾いたりしないし。。ベートーベンのソナタ(30番)も安全なはず。ショパンの「革命」は左手が主だし。(というか、これだけ弾いたら指を酷使しているのは明らかだな。。)

しばらくリストの曲は弾かないことに。楽しくていいんだけどな。年齢的に無理なのかも。全体的に音量を抑えればいいのか。

薬指の様子を見ながら、夜はフォーレの夜想曲を結局通して弾いた。8番から始めて12番でやめるつもりが、また1番に戻って7番まで行き、13番に飛んで終了。こんなことしているからいけないんだよな、、と思いつつ、これは心の栄養だから仕方がないと言い聞かせる。

ふと思ったが、ピアノの後ろにマットレスを置いてミュートしたのが原因かも。大きな音で弾いた時に音が耳に痛かったので消音になるものを置いてみて、効果も確認したのだが、そのせいで無意識に大きな音を出そうとして指に負担がかかっていたのかもしれない。