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見るための場所

北の方の海岸を目指した。着いてみたらいつもJohnが自分の好きなところ、と言って連れてきてくれるところだった。(なんとなくそうじゃないかという気がしていた。)ゴールデンビーチというのが有名で、近くに来てみたので見に行ってみたが、幅50mくらいしかない砂浜に人々がひしめいていてびっくりした。マルタ島は花崗岩でできているので砂浜が少ない。そういう意味で貴重なビーチなので人々が集まるわけだが、あまりマルタらしくない場所のような気がした。

ビーチを離れて物見台の方へ歩いていった。これまでは3月とか10月にしか来たことが無く、いつも強い風が吹き荒れているところという印象だったが、この日は風も穏やかで静かだった。物見台は外からの侵入者を見張り、事あればのろしを上げてとなりの物見台の担当に伝えるという、警戒線の役割を果たしている。さすがに見晴らしのよいところにあり、遠方の岬がいくつも確認できた。

テオリアとは元来、ものをはっきりと見ることという意味であるが、それはギリシアの空気が澄んでいて遠くまで見通せるからだと教わった。マルタもこの日のように空気が澄んでいればかなり遠くまで見渡せる。もうひとつ気づいたのは、海の底もまたよく見通せることであった。岩の浜なので水が濁ることなく海底がみえる。澄んでいるのは空気だけでなく、水もまたそうだと気づいた。

さて水の中まで見通せるということは、どのような影響をテオリア概念の形成に与えたのであろうか。少なくともそういった影響は、北方ヨーロッパに伝えられていく過程で失われたであろう。なぜなら海がないから。ニーチェが南仏(エズ)滞在中に海を見ながらツァラストラを着想したと読んだ覚えがあるが、写真を検索してみると(エズとマルタ島では海岸沿いの)光景がよく似ていることに気づく。

としてみると、ツァラストラは古代ギリシア哲学の失われた側面を復活させたという一面もあるように思われる。もともとニーチェにはそういう傾向が強いが。(テオリアは観想と訳され、理論 theory の語源。)それ(海の底まで見通すこと)がどこまで意識されて現代に至るまで継承されているのかは知らない。西田幾多郎が鎌倉に移り住んだことを指して海の哲学、と形容している人がいることを知った。

物見台からはすべてがよく見通せる

物見台からはすべてがよく見通せる

海の中さえも

海の中さえも

高いところに上るのは気持ちがよい

高いところに上るのは気持ちがよい

海をだきしめてゐたい

という言葉が唐突に思い浮かんだ。さて誰の言葉だったか。兎にも角にも暇さえあれば宅を抜け出して海に向かう。泳ぐわけでもなく(たまには泳ぐが)、サンダルを履いたまま少し海には行って波と戯れる。遠くの方を眺めて今日は蒼くてきれいだと思う。その程度のことをして、30分くらいしたら満足して帰ってくる。何が楽しいのかよくわからない。

今日は風も落ち着いてよい天気だった。海に行ってみると、昨日の強風の影響なのか、潮が満ちているのか、波が高かった。普段は乾いている岩も波に洗われている。面白いから岩の上に立って波が足下を洗っていくのを眺めていた。それにも飽きたので乾いた岩を探し、座って海を眺めていた。どこからか猫がやってきて、挨拶したらそのまま居着いてしまった。体をすりつけてもたれかかってくる。私の体の陰が快適だとわかったらしく、背中に張り付いたまま動かなくなった。

まだ水温が低いし、泳いでいる人も少ないから眺めるだけにして帰ろうと思った。しかし地元のおじさんが元気よく飛び込んでいる。それなら大丈夫だろうかと思い、立ち上がってゆっくり水に入った。そのまま飛び込んだ。猫は去っていった。5分ほど波と戯れて上がった。まだ少し水が冷たかった。

「海を抱きしめていたい」とは誰の言葉だったか。戻って調べてみたら坂口安吾の小説の題名だった。正しくは「私は海をだきしめてゐたい」だ。安吾のこの短編は好きだ。自分もいつか海で遊んでいて溺れ死ぬんじゃないかと思うことがある。元気なうちに事故死するとしたらたぶんそうなるだろう。

晴れたが波は高い

晴れたが波は高い

猫がやってきて陰で涼んでいった

猫がやってきて陰で涼んでいった

最近小ぶりの白桃が出回りだした。甘酸っぱくて美味。

最近小ぶりの白桃が出回りだした。甘酸っぱくて美味。

ゴミ回収車に見慣れた文字が。町田市で働いた後、マルタに渡ってきたものらしい。(ほかに「伊藤ハム」というトラックをよく見かける。)

ゴミ回収車に見慣れた文字が。町田市で働いた後、マルタに渡ってきたものらしい。(ほかに「伊藤ハム」というトラックをよく見かける。)

マリア様に灯火。家の入り口の飾りに相応しいもの。

マリア様に灯火。家の入り口の飾りに相応しいもの。

金曜日夜は町を行き交う人も増え賑やかである

金曜日夜は町を行き交う人も増え賑やかである

砂を含んだ雨の跡

前日の強風は夜から雨に変わり、一晩中降り続いた。翌朝にはそれもおさまってまた綺麗に晴れた。風は依然として強い。大学への通勤路にて。マルタに到着してすでに4週間が過ぎた。もう3分の1かと思うと寂しい。

よく晴れた。気持ちの良い天気。赤い車に近づいていってみると、、、

よく晴れた。気持ちの良い天気。赤い車に近づいていってみると、、、

砂を含んだ雨の痕跡が。日本でも黄砂が降った跡も車はこんな感じになる。

砂を含んだ雨の痕跡が。日本でも黄砂が降った跡も車はこんな感じになる。

トラックで売りに来る魚屋さんで買ったマグロ。1キロあたり1000円くらい。赤身もトロも関係なく同じ値段。トロをステーキにして食べる、なんて贅沢はここでだけ可能。

トラックで売りに来る魚屋さんで買ったマグロ。1キロあたり1000円くらい。赤身もトロも関係なく同じ値段。トロをステーキにして食べる、なんて贅沢はここでだけ可能。

スタジオに早めについて機材をセットアップ。後ほどデータを取らせてもらった。

スタジオに早めについて機材をセットアップ。後ほどデータを取らせてもらった。

途中で屋外に移って動きの探求。あとからJohnに理由を尋ねた。

途中で屋外に移って動きの探求。あとからJohnに理由を尋ねた。

5月25日(土)「おはよう日本」にて

今年4月初旬にNHK金沢にて放映された介護スリッパに関する研究が5月25日(土)「おはよう日本」(NHK総合)にて全国放送されることになったそうです。(ありがたいことです。)詳細はわかりませんが、土曜日なので7時半からの「各地の放送局から」というコーナーになるのではないかと思います。5分ほどの内容ですが、お時間ありましたらご笑覧ください。(詳細判明次第、追記します。)

競馬場へ馬を見に行く

5月末で今シーズンが終わってしまうとのことだったので競馬を見に行った。Vallettaから少し離れたところにある。5ユーロの入場料を払って中に入るとゆるりとした空気が流れていた。

レース直前の試走

レース直前の試走

レースの間が20分くらいあいていて、その間に馬や騎手の様子をみて馬券を買いに行くものらしい。アイスクリーム売りみたいに、簡易印刷機を持ったお姉さんが会場を巡ってその場で券を売っていた。真剣に買っているのはやはりおじさんたちだが、老夫婦や子連れも多い。日本の競馬場には行ったことがないので比較できないが、たぶんマルタの方がずっと穏やかでまったりしているのだと思う。

子供も自由に見ていた

子供も自由に見ていた

ハーネスというのは初めて見たが意外に早い。興味を持たれた方は動画もどうぞ(短いですが)。

常歩(なみあし)なのにえらく早いぞ

常歩(なみあし)なのにえらく早いぞ

マルタ島へは2000年前にローマ人が馬を持ち込んだとのことでそれ以来の馬とのつきあい。イギリスに長く統治されていたものの、古来からの競技は廃れなかったものとみえる。プロ競技ではなく、ハイアマチュアの競技のように思われた。