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柳生新陰流と「縫う」展

4週間ぶりくらいにのんびりと土曜日を過ごした。家人がNicolas のビーンズバー(!)というので自転車に乗って出かけた。漕いでいるうちに単語が蒸発して「シングルビーン」に置き換わり、自信満々に買い求めて帰って勘違いが発覚した。でも結局こちらの方が「当たり」ということになり事なきを得る。産地によってこんなに風味が違うのか、、とびっくり。ちょっと値段は張るけど味覚で発見があるのはうれしい。

石浦神社にて柳生新影流の奉納と体験会があるというので出かけていった。今日は加賀百万石祭りなので町中は多くの人で混雑していた。私は(出身地ながら)知らなかったのだが、名古屋を拠点に活動している古武道の流派らしい。真剣を使った演武は迫力があった。当年80歳という当主(?)は年齢を感じさせない構えと身の捌きで、300年以上の歳月を経てきた技の価値を感じた。

柳生新影流の表演

柳生新影流の表演

その後、石浦神社の向かいにある21世紀美術館に向かい、コレクション展「Nous ぬう」を見た。お目当ては沖潤子 OKI Junkoの作品。ネット上で作品を見つけて以来、実物を見たいと思っていたのだがようやく念願が叶った。興味深いのはこういう作品を作り始めたきっかけで、母親の遺品であった服を娘が切って裁縫して作品を作ったことに刺激されて自分でも作り始めたということ。Victorian のシャツ(袖)を切って刺繍している作品があったが、そういうアンティークみたいな服を集めていたということと、それを思い切って切り刻んで新しい命を吹き込むという行為に感じ入った。この人の作品にはどこかしら血の匂いや死を感じていたのだが、服を巡っての親子3代の因縁が作品の背景にあることがわかり、いくぶん腑に落ちた。

沖潤子 OKI Junko さん作品

沖潤子 OKI Junko さん作品。Victorian のシャツに刺繍。

沖潤子 さんの作品。強烈な赤が血を連想させる

沖潤子 さんの作品。強烈な赤が血を連想させる

その他、どの作品も興味深かったが、こころ惹かれたのは山本優美さんの作品「うつしみ ー 自分が居てもいいっていう場所」だった。最初、服にペンキを塗ってこういう感じに仕上げたのかな、と思ったが、実はこれが陶器(焼き物)だったとわかり、とても驚いた。

山本優美さん作品(うつしみ - 自分が居てもいいっていう場所)

山本優美さん作品(うつしみ – 自分が居てもいいっていう場所)

「うつしみ」シリーズは、山本優美が個人的に親しい関係にある人と、思い出の衣類をなかだちに会話を楽しみ、録音された言葉を繰り返し聞きながら、その衣類に刻まれた記憶を陶に丹念に彫り込んでいく作品である。本3部作は山本の学生時代の友人の衣類がモチーフとなっている。親交のなかでその友人が気分障害を悪化させていく姿を目にしており、その背景として彼女が幼少期より家庭の中での「自分の居場所」について、心もとなさ、自己を肯定できない不安感を抱えてきたことを知っている。思い出の衣類を介して改めて友人の話に耳を傾け、その思い出をともにたどり、記憶の形として新たに存在させていく。そこには作家である山本自身の生も多分に編み込まれ、縫い留められるように刻まれている。(会場にあった解説より)

じっと見ていたら作品を覆っているガラスに雲間から顔を覗かせた太陽が映り込んだ。その「はかなさ」や展示室全体を包む淡い白のトーンに見とれた。写真を撮っても良いとのことだったので同じような光景が現れるのを待ってシャッターを切ったが、あまりうまくいかなかった。まぁでも気に入った。また見に来たい。

今調べていたら、自分にとってのお気に入りの作曲家の、とある曲(フランソワ・クープラン 神秘的な障壁)がお好みらしいことがわかり、作品の背景が少しみえたように思われた。この曲はたぶん初めてVeneziaを訪れたとき、Kenneth Gilbert のチェンバロコンサートに行く機会があり、そこでアンコールで弾かれた気がする。Chiesa di San Giorgio Maggiore の中にホールがあってそこへ船で渡り、真夏の昼間、暑さでぼーっとした状態で聴いた。Pleyelのピアノが長旅の末ようやく自宅に届いたとき、最初に弾いたのがこの曲であった。この曲(Les Barricades Mystérieuses)が「神秘的な障壁」と訳されていることを初めて知ったが、題の意味を考えていなかった。ここでいう「障壁」とは何かということについて諸説あるらしい。好きに解釈すればよいと思うが、近づきつつも交わることのない二つの流れ(存在)を表現しているのでしょう。メロディなのか和音なのか、よくわからないこの曲の特徴をそう表現したものだと思う。判断はScott Ross の演奏を聴いて感じるのがよいでしょう。自分にとってはvenezia での思い出と結びついていて、夢の世界と現実世界の境目にいるという感じかな。

美術館から出たら百万石祭りのパレードの最中だった。初めて見た。

美術館から出たら百万石祭りのパレードの最中だった。初めて見た。