Daily Archives: 2018年11月6日

車を買い換えた

https://www.autoexpress.co.uk/audi/a1/13851/audi-a1-sportback-pictures

見た目はこんな感じ。日本のナンバープレートをつけると間が抜けた感じになるのが残念。

車を買い換えた。日常的に車に乗るようになったのは今の職場に勤めるようになってからで、この20年間で3台ほどの車にお世話になったが、1台目は赴任直後の車無し生活があまりに不便だったため義理の弟に頼んで数ヶ月貸してもらったもの、2台目と3台目は義父が新車を買ったときに古い方を譲ってもらったものだったもので、要するに自分で車を選んだことがなかった。あまり車に関心がないのだが、3台目が数えで17歳となり、走行距離も19万キロを越え、ここ二年間でエンジン周りに様々な不調があって30万円近くも修理にかかったので次の車検(約半年後)を通すのをあきらめ、車を探すことにしたのである。特に去年、セルモーターが壊れてエンジンがかからなくなったときは焦った。幸いホームセンターの駐車場だったので事なきを得たが。こういうことがまたあると辛いので決意した。

8月から探し始めて都合二ヶ月はかかった。以下、体験談&感想など。自宅のガレージが狭く、全長4メートルくらいのものが望ましいので、対象は小型車に絞られた。自分用に排気量3kの大型車、妻が軽自動車を使っており、近所に駐車場を借りてそこに大型車を、自宅の駐車スペースに軽自動車を停めていたが、軽自動車の方も10年近くが経過し、走行距離7万キロを越えているので数年後には寿命が来るかもしれない。そうなったら車は一台だけにして駐車は自宅のガレージで済ませたい。という希望があり、自宅の駐車スペースに収められる車を探した。

最初、妻に連れられてシトロエンのお店に行き、C3に試乗した。いきなり外車かと思うが、同居人の好みも考慮しなければならないし、出来る限り網羅的に探索すべきなので試してみた。軽快に走り面白い車だなぁと思ったが、何だか頼りない感じがした。自分が乗っていたウィンダム(トヨタ社製)は大型車で馬力があったので、それと比べるのは不適切だが落差が大きかった。C3はお前の運転スタイルには合わないと同乗者にも指摘され、早々に候補から消えた。しかしヨーロッパでは昼間でもライトをつける決まりと教えられ、そういう工夫で事故が減るなら結構なことと思った。ひとつの学び。それと対応してくれた営業の人がおしゃれだった。妻の観察に依れば車内で流す音楽も選んでいるとのこと(同居人は2回目の試乗だった)。外車を売る人にはそういう感性がある。これも発見。

次にVWに行き、新しいポロに乗せてもらった。1,000ccのエンジンなのに小気味よく走る。ここでダウンサイジングという概念を知った。車体に剛性感があって安定しており、ウィンダムと比べてもそれほど落差を感じない。これでいいかもと思ったが、引き続き探索を続ける。試乗から1週間くらい経って営業の方から売り込みの電話があり、熱心だなぁと感心した。物を売るには努力がいる。これも学んだこと。

それからスバルに行って、インプレッサの車高の高い奴に乗せてもらった。大型車だが、外に借りている駐車場なら停められるのでその可能性も考慮した。先の冬は大雪で大変だったので雪に強い車を探していたこともある。試乗した感じは悪くはなかったが、この大きな車を日々の通勤で使うのは気が引けた、乗るのは1人だけだから。加えて接客の仕方が非常に淡泊で何らアピールがなかったのが物足りない。接客をしつこくやらないのはいいが、何もないと体験を消化できないと感じた。試乗した感想くらい聞いてくれたらよかった。技術重視なのはスバルの社風なのかもしれない。そのあたりがマニア受けする由縁だろうか。ちなみに妻の乗っている軽自動車はスバルのR1です。

同じく大型車狙いでヴォルヴォにも行ってみた。そこそこのサイズの車に乗せてもらったが、インプレッサと違いをあまり感じない。費用対効果を考えたらインプレッサでいいと思った。ただ接客は非常によかった。お店に入っていったら最敬礼される勢いで出迎えられた。隣の店がプジョーを売っており、同じ系列だというのでそこにも寄ってみた。小型車を選んで乗ったが、何の印象も残さない平凡な車だった。自分としてはそれでも構わないのだが、敢えて外車にする意義はない。とにかく経験を積むための試乗と割り切る。同じく接客は大変よい。経営学的学びがあった。

アウディに行った。サイズが小さい車ということでA1に乗せてもらう。軽快に走るし、安定感もあり大型車の乗り心地と比べても違和感が少ない。ブレーキの効きがよく、安全のためクラウンと同じレベルのブレーキを使っていると教えられた。運転席からみえる操作盤も簡潔で見やすい。アウディ車で一番安い車なので使える素材も限定されているはずだが、デザインに心がこもっていて感心した。15年くらい前に日産の人たちと活動していたときがあり、その時にフェアレディやスカイラインなど高級車を専門に担当していた方にお話伺う機会があったのだが、彼が言っていたことが実感できた。日本のメーカーに高級車を作れる者がいないと。お金をかけて高価な部品をふんだんに使うという意味ではなく、車の使われ方をよく知っていて人と車の関わりをよく考えているということだ。一貫性と統一感がある。ドイツ音楽と同じだ。

営業の方には社用車がもうすぐApproved (中古車)として売りに出るからいかがですかと勧められた。一年経っておらず走行距離も5000キロ程度だからお買い得ですよという。とりあえず店の駐車場で同じくApprovedの赤いA1を見せてもらった。すると銀と青で塗り分けられた別のA1が公道を走っていった。あれと同じ色です、うちの工場長が乗っていますと教えられた。赤の方が目立って事故に遭いにくいからいいなと思いつつ、判断を保留した。来年モデルチェンジするらしいが、サイズが大きくなるので現行モデルの方がわれわれの要望には適っている。

A1でいいかと思ったが、さらに4社まわった。スズキでスウィフトに乗った。剛性感があってよかったが、ブレーキを踏み込むと異音がすると同乗者が言うので候補から消えた。同居人はブレーキ性能を重視する。ついでに新型ジムニーに乗せてもらったが、日常的に乗るには大袈裟な感じがした。この前の大雪の影響もあり大人気で納車まで二年待つと知る。この点でも候補にはならない。

すぐ近くにマツダがあってデミオに乗った。デザインが秀逸だ。窓ガラスに映るデジタル速度計もおしゃれだ。走りもなかなかで自分としては合格点。ただA1より少し前後に長い。それから対応してくれた兄さんが本社の設計部から修行のため営業に来たとのことで、営業力が不足していた。そもそも車を持っておらず、車に興味がないのこと。あの人から買う人はいないでしょう、と同居人がコメント。実際、これまで一台も売っていないと言っていた。自分はそういう人から勧められるのも構わないし、冷静に車のことを判断できてよいと思うが。金沢人の間でマツダは営業が今ひとつとの評判である。車は素晴らしいのに勿体ない。A1の中古を勧められなければデミオを買っていたかもしれない。内装のデザインがすっきりしていてよかった。

それから消化試合的に日産へ行った。コンパクトでラグジュアリーな日産ティーダを試乗したいといったら、それはなくなりましたと言われる。ティーダを設計した人達から話を聞いたことがあって興味を持っていたのだが乗れなくて残念だった。もう一台、初代X-trailの設計者の話もよかったので現行モデルに乗せてもらった。よく出来ていて運転しやすい。バックミラーが液晶ディスプレイになっていたのには驚いた。大きいのに取り回しがしやすく、技術力が高いと感じた。それからノートのE-poweredが展示してあったので乗せてもらった。エンジンを回して発電し、電気で走るという仕組みである。加速が効いてよかった。エコでもあるし、こういう車こそ積極的に買うべきものかと思った。この車も候補に残った。

最後に家から至近距離にあるトヨタのお店に行った。サイズの希望を伝えたところ、ヴィッツを勧められる。乗ってみたけど普通の車だった。ただし、立ち寄ればいつでも洗車してくれるサービスに感心した。見積もりをもらったのだが、カタログにスポーツタイプの記載があってこれにも乗ってみようという話になった。スポーツ仕様のヴィッツに乗れるのは専門店と言われ、紹介してもらってそちらに行った。運転した感じでは剛性感があってよかった。ただ心地よいかというとそうでもない。もう少し若い人が運転を楽しむためのものなのだろうという気がした。ゴーカートみたいだ。20分くらいなら楽しく運転できるが、それ以上は体に応えそうだ。

ということでアウディA1、マツダのデミオ、日産のノート(疑似電気自動車)が候補に残った。社会と環境に責任を持つ一市民として日産ノートを買うべきじゃないかと考えたが、中途半端に先端技術を詰め込んでいるような感じで、あと一歩が踏み切れなかった。それに燃費がよいとはいえガソリンエンジンを積んで電気を作るという設計がいいのだか、悪いのだか、判断に困った。その辺が「もやもや」して、潔くないところが引っかかった。

マツダのデミオは気に入った。アウディA1と迷ったが、A1の方が前後に短くて車庫入れしやすいこと、ブレーキの効きがいいことがポイントとなって、こちらに決めた。総合的にみればデミオの方が最新技術を盛り込んでいて今風なのだが、数年たったら陳腐に見えるのではないかという点も気になった。

[総括]いろいろ試乗したが、技術盛り沢山な車が多くて、そういうのがあまり好みではないと気づいた。雑然としてわかりにくい。こうなってしまう理由は会社の意思決定の仕組みにあるのではないかと想像した。ひとつの機能をとりあげて、これを付けた方がいいか、付けない方がいいか議論したら、「付けておいても悪いことはない」という結論になりがちだ。それが多々積み重なって、総合的・全体的にバランスが悪くなる。全体をみて決定する人がいないのだろう。比べてアウディは頑固に伝統的スタイルを守り、安易に新しい技術を取り入れない感じがした。こういうのは国民性だろうか。

数週間待ってA1を受けとった。トランクを開けたら花束が出てきて、奥様に渡して下さいという。演出が凝っているなぁと感心した。丁寧に説明してもらって小一時間ほど過ごしただろうか。では運転していきますという時になって全従業員が出てきて我々を見送ってくれた。さすが高級車を売る店は違う。他店の人とは車の話しかしなかったが、アウディの人とは古武術やバッハが話題になった。そういう人が車を売るというところがアウディの強みなのかもしれない。

二週間ほど乗ってみたが、工夫されている点が何点かみえた。オーディオや空調などの操作計が夜間は暗めの赤で鈍く光り、目に優しく邪魔にならない。計器類はエンジン回転数と速度、ドライブのモード、気温だけが読み取れる簡易表示モードにし、ナビの画面も畳んで収納している。ハンドルとブレーキ、アクセル操作に集中できて運転しやすい。これまで無意識に計器類を見ていて疲れていたと知る。駐車のため後進するとオーディオがソナーからの警告音に切り替わる。サイドミラーが少し上を向く。停止するとオーディオに戻り、エンジンを切っても鳴り続ける。ドアを開けると止む。細かい演出だ。あまり運転が苦にならなくなった。これなら少し遠出しても楽しいかもしれない。エコではないけれど。あと不思議なことにジャズをよく聴くようになった。

日本の自動車を作る人達はメカ中心に物を見ているのだろうが、もう少しヒューマンマシンインタフェースの研究者が関わってもよいような気がした。認知工学的なところが弱い。視線追従装置など使ってデータを取り、効果を確認しつつ操作系をデザインしたらいいのに、という感想を持った。