ピアノは空を飛ぶ

ロンドンの倉庫に収まったピアノは10月21日、日本の運送業者に回収され、日本への旅路につく。

日本への移送を待つピアノ(その1)

日本への移送を待つピアノ(その1)

日本への移送を待つピアノ(その2)

日本への移送を待つピアノ(その2)

輸送前に一旦箱を解体し、台となっている木材4本が認証済みのものに取り替えられた。すべての手続きを終えて11月6日、成田空港へ到着した。そして11月9日土曜日、関西空港へ移送された。そこで11月11日に通関の手続きを済ませ、名実共に国内に入った。7月15日にピアノを購入する決意をして以来、18週間(約4ヶ月)の月日が流れていた。

あとは国内に輸送のみ。11月15日に国内輸送の業者に引き渡され、ピアノは一旦神戸にある倉庫に収められる。関西空港からすぐにも富山にあるピアノ技術者のもとへと送られるかと思ったのだが、、、輸送に時間がかかるようで12月初旬か中旬になると言われた(!)。ロンドンから空輸したのに、国内で一ヶ月足止めか(?)と途方に暮れたが、まぁここまで来たら仕方がない。山は越えたのだから後は構えて待つことにした。

その後、体調不良となり、帯状疱疹との診断を受ける。ピアノの輸送だけが原因とは思えないが、それもストレスになったのかもしれない。痛む胸を抱えつつ、お世話になった人たちにお礼のメッセージを送った。Aさんには無事ピアノが届いた旨、報告した。お礼の品を贈ろうとしたが何もしていないからと辞去され、Tさんを紹介できてよかったですとおっしゃった。まったくその通りでTさんの助けがなかったらピアノは運べなかった。Tさんにも謝意を伝えたが、迅速に情報を頂けたので的確に処置できましたと謙遜された。

思うに、ピアノを運べたのは運が良かった。AさんとTさんに出会えなかったらピアノをマルタから運び出せなかっただろう。日本の便利さに慣れていると何でも輸入できる気になるが、ヨーロッパは依然として秘境だ。特にマルタのような辺境の島は。経験のない者が手を出すと痛い目に遭う。

とはいえ話としてはこの方が面白い。Rubinsteinがいみじくも書いていた。悲惨な体験ほど後になって面白い話になると。彼はナポリの離れ小島に観光に行った際、騙されて帰りの船に乗れず、男色の男に誘拐・監禁されそうになったところを二階から飛び降りて逃げた。その箇所でそう書いていた。とんでもない体験の方が話としては面白くなるということだ。マルタから古いピアノを運んだ話はこれでほぼ終わる。楽しんでもらえるほど悲惨な体験だったかは疑問だが。

今日、ピアノを調整してもらうピアノ技術者の人に問い合わせたところ既にピアノは工房に届いていた。そういうわけで明日はそれを見に行く。ピアノはここから80 km の距離にある。車で一時間のところに。

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