輪針編みの位相分析

1本の輪針で二つのものを同時並行に編むことはできたのだが、線が短く、窮屈な感じがしてよろしくない。いろいろ調べてみたところ、2本の輪針で二つのものを同時並行に編む技があるとわかったので解読してみた。

基礎から順番に説明していく。通常、輪針はその全長を使って円筒状のものを編むために使う。この編み方(基本)の問題は作られる円筒の径が輪針の長さによって規定されてしまうこと。23cmから60cm、80cm、100cm、120cmなど様々な長さのものが市販されているが、これらの長さにおおよそ合う径のものしか作れない。

この問題に対して、マジックループと呼ばれる解決策が提案されている。アイデアは簡潔で、必要ない部分(長さ)から先をねじってしまうことでその部分を使わないようにする。この方法により、輪針の長さ以下のものであればどのような径のものでも編める。

マジックループの原理

マジックループの原理

マジックループの発展形で、1本の輪針で二つのものを同時に編むことが出来る。理屈を以下の図に示す。輪針の輪が一周する間に二つのものを編む。編む対象の上をA、下をBとする。一周する間にAの左、Bの左、Bの右、Aの右を編む。理屈はこれでよいのだが、このままだと隙間が大きくなってしまうので、実際に編むときは下半分をねじって反転させるとよい。こうすると隙間が小さくなる。(本当はもうひとつ何も編まれない輪があって、そこで長さを調節するのだが、図をわかりやすくするために省略してある。)

1本の輪で二つのものを編む

1本の輪で二つのものを編む

次に2本の輪針を使う場合を考える。2本の輪針で一つのものを編む場合と二つのものを編む場合、その理屈は以下の図のようになっていると思われる。

2本の輪針で1つもしくは2つのものを編む場合(右の方の走り書きは無視してください)

2本の輪針で1つもしくは2つのものを編む場合(右の方の走り書きは無視してください)

理屈がわかっていない状態で、とりあえず2本の輪針で二つのものを同時に作ってみたところが以下の写真です。

2本の輪針で二つのものを同時に作り出したところ

2本の輪針で二つのものを同時に作り出したところ

この状態がいったいどうなっているのかが問題。現時点での解は以下にある図の通りです。長さ調節のために何も編まれていない輪が中央に来るところがポイント(だと思う)。

2本の輪針で二つのものを編んでいるときの位相関係

2本の輪針で二つのものを編んでいるときの位相関係

この解を思いつくまでに結構考えました。

苦闘の跡

苦闘の跡

いろいろな方が「輪針+マジックループ」を応用して、1本で二つのものを作ったり、2本で一つもしくは二つのものを作る「方法」は紹介してくれているのですが、理屈を説明しているものが皆無で、何が起きているのかまったくわからない。(人から人へと伝わっている技法なので理屈は不要なのでしょう。)何をしているのかわからず、すっきりしないし、応用も効かない。なので考えてみました。

少し理屈が分かって落ち着いた。2本の輪針で三つ以上のものを同時に作れるかという問いについては、おそらく可能という答になる。やっている人はいないみたいなのでそのうち挑戦してみたい。

編み物で何を作るかということより、理屈に興味が移るのは性分だからしかたがない。一応これで手袋を一組、同時に作れる目途がついたわけですが、たぶんこの冬はそれをやって終わるだろういう予感。理屈がわかったところで満足してしまい、そこで終わる(飽きる)のが短所です。はい。

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