慎ましやか

手染めや椿姫」さんより入手した草木染めの糸を使って試作していた。小物を3つ作ってみて、化学染料にはない慎ましさを感じた。化学染料と比較すると淡い色合いだが、目に優しい。ただ柄とか編み地に工夫を凝らさないと弱いというか、存在感が薄い。アラン模様のセーターはケーブルをくっきりと表面に描き出すが、色彩のないモノトーンの世界ではその方が目を引くだろう。自然素材で作ったものを組み合わせてもなかなか華やかにならないので、陰影や質感を工夫する方向に進んだと思われる。北欧(エストニアなど)やフェアアイルなどは凝った模様が印象的だが、それらのデザインは化学染料を前提としていると思った。それらの色彩に凝った模様が出てきたのは比較的最近、おそらく19世紀になってからと考えられる。伝統柄といっても新しい。そういったことが実感できた。

草木染めの糸の良さは優しさだろうか。触ったり、編んでいたりしているときに和む。200年くらい昔まで遡れば自然由来の染料しかなかったから、我々の生活もトーン(色調)としてはもっと落ち着いていたはずだ。木目と白壁だけの環境であれば、草木で染めた糸もしっかり存在を主張していたに違いない。かといって生活環境を変えるほどの勇気はないのだけれど。

色を変えて編んでみた(左)・・・のだが慎ましい色調になった

色を変えて編んでみた(左)・・・のだが慎ましい色調になった

JAI山を散歩。藤の花が咲いているのだが風景に溶け込んでいてはっきりしない。自然の中での色とは本来こんなものなのだろうと思う。

JAI山を散歩。藤の花が咲いているのだが風景に溶け込んでいてはっきりしない。自然の中での色とは本来こんなものなのだろうと思う。

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