初めてのシャチハタ

生まれて初めてシャチハタで判を作ってみた。これまでは町の人間国宝みたいな職人気質の人に彫ってもらった判を使っていたのだが、時々うんざりするくらい何度も続けて(30枚とか)書類に判を押さなければならないことがあり、いちいち朱肉を使うのが面倒になったのである。シャチハタを半ば軽蔑していたところもあるのだが、朱肉を使わず連続して判を押せる誘惑に負け、とうとう作ることにした。

ネットで調べてみるといろんな字体を選んでシャチハタの印が作れることがわかった。さらに自分でデザインした文字で作ってくれることもわかった。そうとなるとむくむくとオリジナルな判が欲しいという気持ちが湧き上がり、資料を探して自分で「藤波」の二文字をデザインした。

私は中国の古代文字が好きなので、亀の甲羅に亀裂を入れて書いていた頃の文字を参考にした。「藤」の字も「波」の字も、二千年前には存在しないのだが、もしその頃に存在したらどうだったかと推察してくれている人がいてそういったものを見ながら作ってみた。

今回知ったのだが、「藤」のなかに含まれている月は天体の月ではなく、「舟」らしい。川面に浮かぶ舟から藤の花を愛でるといった趣が浮かび上がった。また「藤」には「水」の代わりに「糸」を使った異字があることがわかり、そちらを採用した。(起源はよくわからないのだが、藤の蔓を表したものか。)「波」の「さんずい」と被るので変化を付けたかったこと、また最近、繊維に興味があるので糸の文字に惹かれたこともあって「藤」は異字体を使った。

これをまた判にするとなるともう一工夫いるのだが、円の中をできるだけ自然に線で埋めるよう、ふくらみをつけて形を整えた。亀の甲羅の亀裂といった趣は失せたが、別の味わいが出てきて面白くなったので、よしとした。

忙しいくせにこんな手間をかけるなんて馬鹿だなぁと自分でも思うが、誰でも作れる判で書類に印を押すのは納得がいかない。オリジナルでなければならないという気持ちを抑えられなかった。我ながら面倒な人である。

ブルガリアから帰ってきたら出来上がって届いていたので、さっそく手持ちの書類に押して秘書の方のところへ持って行った。私はしつこい性格なので、押印したものをみてくれるよう彼女に頼んだ。驚いて欲しかったのだが、「おしゃれですね」と言われて、戸惑った。そういう感性もあるかもしれない。おしゃれな印が作れてよかった、と満足することにした。

古代文字を参考にシャチハタで「藤波」の印をつくってみた

古代文字を参考にシャチハタで「藤波」の印をつくってみた

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