重心の動かし方

Halfbikeが届いて2週間ほど過ぎた。新しい乗り物は面白く、土日は晴れていれば昼間、週日は夜寝る前、30分くらい近所を走っている。慣れるまで時間がかかるものと覚悟していたが、組み立てた翌日、家の前の道路を走ったとき、何の問題もなく直進できたので拍子抜けした。まだ二度目だったのだが。いつのまにかバランスをとることを覚えたらしい。右折・左折はたどたどしかったが、これも三日目くらいには曲がれるようになった。さらに遠乗りして(といっても5kmくらいだけど)、一般道では車を避けて歩道を走ってみたのだが、多少の段差や悪路にも対処できた。ただ、車両出入口になっていて傾斜がきついところではさすがに直進できず、地面の傾きに影響されて車体を流されてしまう(車道側に突き進んでしまう)。自転車だと傾斜があるからといってずり落ちたりはしないのだが、Halfbikeは後輪が2つあるので傾斜に合わせて車体が傾くと理解した。

課題は U-turn である。自転車のように前輪の向きをハンドルで変えられないので、重心移動だけで車体をコントロールしなければならない。いろいろなやり方を実験し、なんとか道幅が5メートルくらいあればターンできるところまで持ち込んだ。もっと狭い幅、たとえば2メートルくらいの幅でU-turnしたいのだが思うようにいかない。その原因は後輪にあるようだ。似たような乗り物の動画を調べて、一番近いのはスケートボードだと考えた。ハンドルでカーブが切れないところが似ている。どちらも重心移動で曲がる場合、車輪の動きに制約を受け、弧を描くようにしか回れない。Halfbike に乗っている動画をいくつかみて、車輪の制約から自由になるにはジャンプするのがよいのではと考えるようになった。一旦、地面から離れ、空中で回転して向きを変え、着地する。スケートボードではよくやっている技だが、これをHalfbikeでやればいいだろうと考えた。ひとりだけHalfbikeでジャンプ+回転に挑戦している人を見つけた(動画では4分40秒くらいのところで見られる)。成功している人はいないようだ。

Halfbike でジャンプしながら180度回転する

Halfbike でジャンプしながら180度回転する

とりあえず目標は宙での回転としたが、いきなりそんな技は繰り出せないので、重心のコントロールの仕方を冷静に検討してみた。ターンの仕方を観察すると、慣れている人(開発グループの一人)は体の軸を保ったまま方向を変えている

軸を保ちながら全身を傾けてのターン

軸を保ちながら全身を傾けてのターン

しかしこの姿勢、とるのが結構難しい。倒れ込むような感覚なので、できるという確信がないと怖くてこの姿勢がとれない。ある程度のスピードも必要だ。緩いと倒れてしまう。すぐにはできないと思い、別の方法として、自転車に乗るような感覚で腰を落とし、腰で重心を動かすという方法をとってみた。自転車で重心移動のみで曲がるときと同じ感覚なので、割と安心してやれる。同じように自転車に乗っているような姿勢でターンしている人をみつけた。

自転車に乗る姿勢でターン

自転車に乗る姿勢でターン

悪くないのだが、エレガントではないし、中腰姿勢を取り続けるのでかなり疲れる。それが難点とわかった。なかなかポイントがわからない。ほかに、曲がり方を考察してくれている人がいて、彼の説によればlean in する(曲がる方向に向かって内側に傾く)のがよい

体を内側に傾けるターン

体を内側に傾けるターン

ということで再度、lean in に挑戦してみた。スケートボードの人達もそうしているみたいだったので。しかしなかなかきれいに lean in できない。どうしても体の軸がぶれ、安定しない。工夫しているうちに、ふとポイントをみつけた(ような気がする)。首の向きでコントロールできる。もう少し詳しくいうと、第7頸椎のあたり、肩からの骨とつながるところが動きの中心と感じた。

赤丸あたりで動きを制御するとうまくいった

赤丸あたりで動きを制御するとうまくいった

ここを起点にして向きを変えると、体の軸が保たれ、調子がよい。ふらつかなくなった。こういった現象についてどのような知見があるのか調べてみたところ、第7頸椎直下の動きと重心の安定性の間に相関があるとの報告を見つけた(立位バランスに寄与する要素の一考察)。というのが今日の発見。(と思ったら間違いだったので訂正:論文で指摘していたのは胸骨だった。頸椎ではなかった。やりなおし。)

第7頸椎を中心とした運動を緻密に制御するには、「どこを見るか」を意識するとよい。実のところ、Halfbikeの乗り方アドバイスに「遠くをみるように」とある。「遠くを見る」ことは首の位置を正常に保ち、重心を安定させる効果がある。太極拳だと力を出すときにその方向をしっかり「見る」ようにと指導されるのだが、そのことが重心を動かすことにつながっているのかもしれないと思い至った。ばらばらになっていた知識が統合されたようでうれしかった。

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