• バビロンに行きて歌え (1997/12/19)

    • DATA

      著者:池澤夏樹
      出版社: 新潮文庫
      出版年度:1993

    • 感想

      ひさしぶりに池澤夏樹の小説を読んだのですが、あいかわらず いいです。あいかわらずっていう言い方は変ですね。別に新作 というわけではないですから。よかったんですが、『スティル・ ライフ』とかの他の作品とは違った感触でした。ほかの作品は もっと静かな澄み渡った感じがするのですが、これはもうちょっ と動きが感じられる。テーマが音楽だからかな。

      ストーリーは中東の革命の戦士が日本に不法入国し東京で生き て行く姿を追ったものです。当然まったく知合いのいない中で、 老獣医と出会うところが第2章にあるんですが、この章の最後 の部分で、主人公が出て行ったときに老獣医が自分が老境にあること を感じるのですが、ここが非常に感動的。感動というのは、えて して共感から来るものだと思うのですが、僕はまだまだ老境に はさしかかっていません。でも共感のようなものを感じること ができたんですね。これが作家の力というものなのかな。

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    • キッズ・リターン2 (1997/12/6)

      • DATA

        著者:ビートたけし
        出版社:Web新潮
        出版年度:1997

      • 感想

        昨年公開され話題だった北野武の映画『キッズ・リターン』の 続きをたけし自身が書いています。とてもビジュアル を喚起されます。映画監督が書いているからでしょうか、『キッ ズ・リターン』を見ているから場面が浮かびやすいからでしょ うか。なにか、映画の脚本というかほとんど絵コンテを読んで いるような気がしました。カメラ割まで頭の中に浮かび上がり ます。

        映画の最後、

        「オレたち、これで終わったわけじゃないですよね」
        「バカ、まだ始まってもいねえよ」

        と、言っていた二人は3年後、ヤクザをやめたマサルはおでん の屋台を、ボクシングをやめたシンジは米屋の配達をして働い ているが、やがて二人は再びヤクザ、ボクシングの道へと帰っ ていく。そこにしか生きる場所がないことを自覚して。

        短篇なので、感想を書いていると最後の部分に触れてしまうの で、読みたい人はこちらを どうぞ。

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        Takashi Hashimoto <takashi@brain.riken.go.jp>
        Last modified: Wed Dec 24 00:53:47 1997