第5回北陸先端科学技術大学院大学運営諮問会議議事要録



日  時平成14年10月10日(木)14時15分〜16時50分
場  所北陸先端科学技術大学院大学事務局大会議室
出席委員大柿委員,大崎委員,大須賀委員,後藤委員,諏訪委員,千葉委員,村上委員,山田委員
欠席委員野依委員,松本委員
大学出席者示村学長,吉原副学長,杉山知識科学研究科教授(知識科学研究科長代理),二木情報科学研究科長,川上材料科学研究科長,本木事務局長 他

  議事等
(1) 示村学長から,開会に当たっての挨拶があり,運営諮問会議の会長が選出されるまでの間,学長が司会進行役を務めることの了承を得た後,運営諮問会議の趣旨・目的等について説明があった。
(2) 示村学長から,運営諮問会議の委員及び大学関係者の紹介があった。
(3) 示村学長から,当日の会議日程について説明があった。また,今後の運営諮問会議の開催予定としては,定例的に年2回(6月及び2月頃),原則として東京において開催することの説明があった。
(4) 示村学長から,本学の創設の趣旨や理念・目標の説明の後,現状や諸課題について説明があった。
(5) 示村学長から,前回の会議以降における大学の主な学事等について,次のような報告があった。
  平成14年2月13日に札野 順(金沢工業大学工学部)教授を迎えFD講演会を開催した。また,同2月26日に鶴野 省三(防衛大学校機械システム工学科)教授を迎え平成13年度FDフォーラムを開催した。
  3月1日に仙台電波工業高等専門学校の専攻科学生を対象に,また5月27日には宮城・仙台電波・木更津・鈴鹿・津山・北九州工業高等専門学校の専攻科学生を対象に,SCS(スペース・コラボレーション・システム)を利用した大学説明会を開催した。
  3月11日にイタリアのナポリ大学科学技術カレッジ,4月22日に大韓民国の国立忠南大学,4月26日にロシア連邦のロシア科学アカデミーヨッフェ物理技術研究所,6月26日に大韓民国の国立慶尚大学,8月10日にバングラデシュのラジシャヒ大学とそれぞれ学術交流協定を締結した。
  大学評価・学位授与機構による平成12年度着手分の全学テーマ別評価「教育サービス面における社会貢献」の評価結果が,3月20日に大学評価・学位授与機構より公表された。
  3月20日に放送大学大学院と単位互換協定を締結した。なお,同大学院が大学 院間で単位互換協定を締結するのは本学が全国で初めてである。
  平成14年3月修了の学位記授与式を3月22日に挙行し,9月修了の同授与式を9月25日に挙行した。3月は博士前期課程修了者311名及び博士後期課程修了者28名に,9月は博士前期課程修了者7名及び博士後期課程修了者4名に学位記を授与した。
  4月1日に,「新素材センター」が「ナノマテリアルテクノロジーセンター」に改組拡充された。また,同センターにおいて開講する授業科目を科目等履修生及び特別聴講学生が履修できる「ナノマテリアルテクノロジーコース」を設置した。
  平成13年度の第2次補正予算により設置が認められた,ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーの開設に向け現在準備を進めている。また,開設に先がけて起業家育成の一環として,「ベンチャー・ビジネス実践論講座」の集中講義を9月に実施した。
  平成13年度に財団法人大学基準協会の加盟判定審査を受けた結果,平成14年4月1日付けで同協会に正会員として加盟・登録が承認された。
  国立大学の法人化に対する具体的な検討を行うため,本学に「組織及び運営の在り方に関する検討会」を設置し,同検討会に目標・計画,人事制度及び組織・運営の各専門部会を設置した。また,法人化へ円滑かつ計画的に移行できるよう「法人化準備事務検討委員会」を設置し,同委員会に組織業務・人事制度,目標評価及び財務会計制度の各作業部会を設置した。
  平成14年度の入学式を4月4日及び10月2日に挙行した。4月には博士前期課程281名,博士後期課程48名,また10月には博士前期課程15名,博士後期課程24名が入学した。
  いしかわサイエンスパーク内に,通信・放送機構が整備した「北陸IT研究開発 支援センター」が4月20日に開所した。
  2000年ノーベル物理学賞を受賞されたロシア科学アカデミー副会長であるヨッフェ物理技術研究所のジョレス・イワノヴィッチ・アルフョロフ所長に「名誉博士」の称号を4月26日に授与し,同日,特別講演会を開催した。
  1986年ノーベル物理学賞を受賞されたIBM研究員のハインリッヒ・ローラー博士を招待し,6月6日に特別講演会を開催した。
  材料科学研究科機能科学専攻に学内措置として,6月1日に界面化学プロセス工 学講座,10月1日にストレスシグナル研究講座の連携講座が設置された。また同専 攻に11月1日からナノバイオテクノロジー講座及びマイクロ・ナノバイオデバイス 講座の連携講座が学内措置で設置されることが了承された。
  平成14年度のオープンキャンパスを,本学において6月1日に開催し,810 名の来学者があった。
  平成13年度歳入・歳出状況,その他教員の現員状況は本学概要(資料4−2) の40頁に表示しているとおりである。
  平成13年度以降の本学における受賞状況は資料4−8のとおりである。
(6) 示村学長から,本会議の会長及び副会長を選出する必要があり,会長は委員の互 選,副会長は会長の指名による選出方法の提案があり,各委員の了承を得た後,大 須賀委員から会長として大崎委員の推薦があり,了承された。
(7) 大崎会長から挨拶があった後,副会長として千葉委員の指名があり,了承された。
(8) 千葉副会長から挨拶があった。
(9) 大崎会長から,本学の概要説明及び学事報告を踏まえて,最初に大学運営一般に ついての意見をいただきたい旨の発言があり,次のような質疑応答及び意見交換が あった。(◎:会長,○:委員,●:大学出席者)
  科学研究費補助金2億1300万円は,歳入の雑収入の一部になるのか。
  科学研究費補助金は,全ての研究課題について,文部科学省から審査を経て交付 される補助金であり,経費の性格上,歳入には入れていないので別会計で処理して いる。
  研究に使用できる費用は,11億4000万円から5億円を引いたものに2億1300万 円を足した規模と理解してよいか。
  一般的な物件費の中には教育用,研究用及び事務用があり,それらが歳入歳出で は混在しているので,研究経費・事務経費が明確に表示されない。
  民間等の共同研究,受託研究,奨学寄附金及び科研費の合計金額が外部資金と捉 える場合,国の予算も含まれており,本学の場合には,国の予算で研究に使用され ている3倍は外部資金による研究費である。その他詳細に分けるのは難しい。
  その点は独立行政法人になった時に,財務諸表で整理されて分かり易くなると思う。特許や知的財産収入はその他の収入に入っているのか。また,独法化後の運営費交付金は,現在のどの部分が想定されるのか。
  人件費については,全額運営費交付金の基礎になる。施設整備費については,運 営費交付金とは別に補助金で措置され,毎年同じ金額ではなく,大きな建物を造る ときなどは,その都度別に措置されることとなる。また,物件費のうちの産学連携 等研究費は,外部資金を受入れたものを歳出化するための必須項目なので,運用費 交付金とは別である。それを除いた物件費全体が運営費交付金として期待されると 思う。
  全体の費用の何割ぐらいにあたるのか。
  これは歳出に「国立学校」とある55億円が基本的には運営費交付金と考えていた だいてよい。合計が66億円なので,55/66ということである。
  大学の歳出はもっと多いのではないか。
  66億円と科研費を合算したものが全体である。その66億円のうちの産学連携等 研究費や施設整備費は運営費交付金に入らないと思う。
  一般会計は別なのか。
  一般会計は,留学生に対する奨励費として大学に配分され,それを留学生に渡し ているのが大半であり,これも運営費交付金とは別の経費になる。
  半分以上が運営費交付金になるのか。
  国立学校特別会計の(項)国立学校が運営費交付金に相当する。科研費は,研究 プロジェクトの責任者が申請をして,責任者に対して交付されるため,特別会計に 入ってない。実際は全て大学のプロジェクトに対する研究費に充てられる。また, 今年から科研費及び産学連携等研究費では30%の間接経費が計上されているが,こ の中に含まれているのか。
  歳入の民間等との共同研究,受託研究及び奨学寄附金には入っていないが,その 他のところに含まれている。   
  科研費の2億1000万円のうちの30%近くは間接経費として含まれているのか。
  全てに該当するものではなく,間接経費が該当するものは含まれる。
  大型の研究種目に限定されている。
  ナノマテリアルテクノロジーセンターと同コースが,現在日本の大学でいくつあ るのか,またセンターの特色を教示願いたい。
  他大学で行われているかは分かりかねるが,かなりユニークだと思う。一つは, 最新の設備があることと,それを活用しての実習が行われること。一学部や研究科 のカリキュラムの一部に実習という形であるかもしれないが,ナノテクノロジーだ けでカリキュラムを作成し提供するのは,おそらくないと思われる。
  非常にユニークなものであれば特色になるので,教示願いたい。
  特許関係について,特許出願件数,あるいはTLO(技術移転機関)を通じて出 願した件数を教示願いたい。
  出願件数はかなりの勢いで伸びている。権利化されて大学へ実施料が入っている ものはまだ僅である。基本的な考え方として,独自のTLOの導入は考えていない。 なぜなら,大学が独自で特許を持つことが,発明を世の中に生かしていくという議 論がある。むしろ企業が実施しなければ生かせないため,企業が実施できる形で特 許を持つ必要がある。本学は企業との共同研究の中でノウハウを提供したり,様々 な形で貢献する。基本的には本学は独自でTLOを持つ考えはなく,他のTLOや 県,科学技術振興事業団等を活用しながら,JAIST−TTS(Technology Transfer System)というバーチャルな仕組みで考える姿勢でいる。特許の件数は, 平成11年度の出願件数が23件,平成12年度が42件であり,非常に大きく伸びて いる。平成13年度についても出願件数は増加している。
 独自にTLOを持たない基本的な考え方は,大学はそういうものを提供する使命 があることと,実務的にも大学がTLOを立ち上げるには大変なスタッフを要する ため,外の力を使うという考えがある。
  国立大学の場合には,発明者にその権利が帰属するのが原則であり,特別の場合 にだけ大学に帰属する。ただし,法人化後は原則的に大学に帰属する動きがあるの で,大学で検討されると思う。
  TLOについては,設立後の運営状況が良くない話に強く印象を受けており,金 沢大学や富山大学以外の大学でも,TLOを検討するところまで行っていない感じ を受けている。また本学のナノテクが非常に素晴らしく,最たる設備を持って様々 な取組みが行われているが,何かの際に地域として共同で行うことを教えていただ けるのか。
  具体的に行っているのは,本学に「客員技術研究員制度」を設けて,石川県の工業試験場の技術者及び研究者を受入れて指導している。その目的は一定の訓練をして技術を習得し,オペレーターとして本学の施設を取扱うことができるレベルに育成することである。これは,地元の企業から測定依頼されても,我々はサポートする手立てもないので,依頼は県の工業試験場で受けていただいており,その場合に本学の施設を使用されており,この制度により,数人受入れて卒業されている。また,民間等との共同研究でも,そこを使用している状況でもある。
  施設使用者から経費を徴収することも考えているのか。
  現段階では,受託研究や共同研究の形で,企業に一定の経費を負担いただきながら,両者の共同プロジェクトを実施していくことにしている。
  以前に尾身大臣(沖縄・北方・科学技術担当)から,料金制度を導入して企業が大学施設を積極的に利用しやすいように検討したいことを発言されていたと思う。
  先ほどの運営費交付金について若干訂正させていただくと,(項)国立学校の歳出から「授業料及び入学検定料」の歳入を差し引いた金額が運営費交付金に該当する ことになる。
(10) 示村学長から,本会議に対して「本学における国際的な連携及び交流活動につい て」の審議依頼があった。
(11) 大崎会長から,議題である「本学における国際的な連携及び交流活動について」に係る現状や取組みの状況を説明の上,審議願いたい旨発言があり,示村学長から, 配付資料5に基づき,次のような説明があった。
  国際的な連携及び交流活動に対する考え方は,世界に通用する研究を行うととも に,世界から研究者や学生が集まるような研究と教育の両方を行うことが基本であ る。
  世界に通用する研究を行うには,研究者個人の間の密接な連携・協力関係を維持 し,それを大学としてサポートする必要がある。さらに公のサポートが必要なレベ ルになったときには,協定を結ぶという考え方を基本的に持っている。協定は現在 30件あり,現在でもアクティブに生きている。<
  海外の研究者との共同研究の支援として公的制度の活用を奨励している。そのほ か,大学独自に国際共同研究プロジェクトの制度を設けており,積極的に支援して いる。
  様々な規模の研究集会を開催し,海外の専門家が集まって一定期間集中的な議論 をすることは非常に成果が上がるため,本学では奨励している。個人間の密接な協 力・信頼関係をベースとして,ポスドク及び留学生の推薦,あるいは短期の留学, 早期の交流が徐々に広がりつつある。これが本学における国際的な連携及び交流を 進める上での基本的な考え方である。
  国際活動を推進していく上での非常に重要な規範が,ボーダレスの徹底である。 ボーダレスとは,教員の採用,学生の選考,研究員の受入れ等において国籍や言葉 の違いで障壁を作らないことであり,本学の原則としている。
  ボーダレスの政策としては,本学の教員や学生が世界で通用する活動を行うため に,テクニカルコミュニケーション能力の開発向上にも力を入れており,今年度か らミシガン大学と提携をして専門家を招聘し,英語による本格的な教育をスタート させている。10月からは教員向けのコースを設け,その能力向上に努めている
  JICAについては,今年から日系の長期技術研修員を2人受入れており,JE TROへの協力については,昨年及び今年,インドとの関係で受入れ並びに専門家 を派遣している。
  学術交流協定の締結状況は,現在30件で,今月には31件になる。毎年同じくら いの件数が交流活動の結果として増えており,締結先をアジアとヨーロッパに多く 持っている。
  学内の国際共同研究は,人の往来を中心として,比較的ソフトな側面を奨励して おり,その相手先は協定校との関連が色濃く反映されている。
  本学は常に国際共同研究プロジェクトやシンポジウムの経費について,最初に外 部資金獲得に挑戦することを要請し,それを条件に本学でもサポートしている。
  アジア太平洋科学技術研究フォーラムは第5回を迎え,国連大学との共催により 「アジア・太平洋地域の持続的発展」という課題で行った。これに付随して,専門 家だけの集会をこの後2日間連続して開催した。
  著名人による特別講演会は,これまでノーベル賞受賞者の3人を招待し,そのう ちの2人に「名誉博士号」を授与した。このような講演は学生・教職員だけでなく, 一般の方も聴講できるように可能な限り金沢で開催している。
  本学は外国人教員を積極的に採用しており,現在,教授の割合は,国立大学全体 の0.6%に対し本学では8.5%である。また助教授は,国立大学全体で2.5%,本学 では2.3%,助手は国立大学全体で2.8%,本学では18.5%であり,非常に高い割 合で外国人教員が占めている。
  教員の海外渡航は,最近5年間の平均で年間294人であり,一方,外国人来学者 は平均で年間33人である。
  外国人研究員の受入れについては,重要に考えており,受入人数は年々増加して いる。出身地はアジアと北米,ヨーロッパが多数である。
  留学生の受入れは非常に増加しており,平成14年度で100人を超えている。基本 的には,よくわかっている相手先からの推薦を重視しており,協定機関の出身者が 全体の半数以上を占めている。
  学生の派遣状況は,教員の共同研究による交流が基本になっている。
  国際大学院コースの開設により,国費留学生の枠が確保できることとなった。本 コースは英語での授業が条件になっているが,ドクターコースも同様に行っている。 この留学生については,インターネット入試が非常にサポーティブルで,去年に比 べると約2倍になっており,今後さらに増加する期待を持って頑張りたい。
  事務組織には,研究協力課による国際交流関係と学生課による外国人留学生関係 の業務がある。
  事務局職員の語学研修については,職員全体の語学能力の向上及び英会話能力の 付与,語学要員の養成を目的として3コースに分けて行っている。
(12) 各委員から,次のような質疑応答,意見交換が行われた。(◎:会長,○:委員, ●:大学出席者)
  外国人教員のうち助手が多いが,これはどういう考えか。
  積極的に外国人助手の増を図っているのではない。原則として教員は公募してお り,一部には特定の目的を持つ募集もあるが,外国籍の人の応募が多々あり,公平 な審査の結果である。特には外国籍の助手の割合は決めていない。
  本学の研究成果を国際学会にPRした結果としてこのように増加していると思う。 どのくらいの件数を学会に発表されているのか。
  本学の教員の海外渡航は,過去5年間,助手も含めて1人平均2回であり,大部 分が研究集会,国際共同研究で研究打合せによるものである。通常,研究集会での 発表を契機に共同研究が始まるパターンが多く,これだけの共同研究が進み交流協 定校ができる基本は,国際社会への発信と理解している。
  個人ベースで国際交流に対して,大学としての間接的なサポートは重要である。
 個人ベースだけの国際交流では,積極的に取り組んだ教員が他大学へ異動すると, 組織間の交流が不安定な状況になる。国際交流については,組織としてもう少し積 極的な取組みを推進する必要性もあると思う。簡単なケースとして,協定に基づく 交換教授の定期的な実施,あるいは交換留学生制度の設置等がある。いずれにして も単位互換の問題等もあり,大学間の組織としての対応も非常に重要であると思う。
 国際交流は各国とも力を入れており,ヨーロッパではEU化して,場合によって はEU内の大学が基盤的に同じものになる可能性がある。そうなると日本も積極的 に交流しなければ,地理的にも遠く孤立する可能性がある。
 組織的な国際交流の難しさは,制度まで変える必要が生じる側面があり,実際に 交流をする場合に要員が不足するという問題が起こることがある。多くの大学を相 手にすると同様の問題があるので,現実問題としては難しい点もあるが,検討すべ き課題ではある。
  研究は共同で行うことで互いのメリットがあるため,相手を選んで実施している。
 情報関係が特にそうだが,アメリカが世界の技術の先端を行っている。企業はアメ リカや一部のヨーロッパ等の最も進んだ企業と共同しているが,日本の大学は主に アジアと交流しており,留学生も多い。この矛盾を日本の大学に時々感じているの だが,このような状況と将来を踏まえて今後どのようにするのか。
  共同研究の相手先はアジアだけではなく,北米,ヨーロッパも多いが,協定先機 関としてはアメリカは非常に少ない。これは協定を結ぶメリットを感じないで共同 研究を行っていることであり,協定を結ぶメリットをどこで見いだすかは共同研究 のそれとは別のものである。つまり,共同研究を活発に行うことと,協定を結んで いる機関数とは必ずしも対応しないということである。
  国際交流の始まりは大学の先生同士が個人的ネットワークで繋がり,研究が進む 中で,当該分野以外の研究者を紹介することで,その先生が大学全体の窓口になり, 必然的に企業と大学の共同研究に発展する。それが現実の姿であると思う。やはり 企業と大学の関係が国際的な研究機関同士の相当な交流に発展することだと感心し ている。
 もう一つ,企業側からは,世界的にトップクラスの研究による新しい技術を先方 だけでなく,日本にも取り入れて,我が国に諸外国の研究者の研究成果が定着する ように産業振興に寄与してほしい。国際交流で海外の優秀な研究成果を,我が国の 産業に帰すうできる施策を我々自身も考える必要がある。
  世界から多くの人が集まり国際的な研究環境を作る面では,資料の具体的な数字 で素晴らしい成果を挙げていることがよく分かった。さらに今の傾向に戦略性を盛 り込むことが重要ある。
 もう一つは,ある程度目標を持って一つのものを作っていくこと。企業活動の中 では,研究者のコミュニティをつくる意味で中国戦略を視点に入れることである。 世界に通用する研究を外へ出すことで活動が活発化すると思う。その実績の存在 をアカデミックの世界や企業,産業界及び官界に国際的な立場で周知していくこと が非常に大事である。実績や,オンリーワン,ファーストワン,ナンバーワンの数 を明確に国際社会へ表示すると,さらに良くなると感じた。
  産業界では,ハイテクノロジーを緊急に開発し,他国で真似できない特許を取得 し,製品・サービスを生み出していく重要な役割を担っている。そのためにも,本 学では最先端の人材を世界中から集めてアウトプットを出していく素晴らしい取り 組みを行っており,数年後には大きな成果が生まれると期待している。
 優秀な留学生が日本に残ること,あるいは外国の優秀な教授または助手が,日本 でハイテクのベンチャー・ビジネスを行うこと,そのことが日本にとって大きな良 い材料になると思う。ベンチャー・ビジネス・ラボを立ち上げた構想も期待したい と思う。
 また,国内・国外の比率,例えば論文発表の件数やそれらの指標の把握は非常に 大事だという指摘に全く同感である。今立ち上げている最中なので,その整理段階 だと思うが,本日の資料でのグラフや表を拝見させていただき,大変感心している。 これからも更なる取組みを期待する。
  大変よく行っているというのが率直な印象である。
 一つ,世界水準の研究大学を目指すことは異論のない目標であるが,無限定なの ものであれば,具体的な戦略がないと思われる。また本学は,科学技術大学の性格 から産業界のニーズにどう応えるかを大きな使命とする大学である。よって,単に 国際水準の研究大学を目指すのであれば,無限定すぎるのではないかと思う。 特に,修士課程の教育は本学の基本的な部分を占めているので,修士課程の教育 を研究者養成に特化するものではない。もう少しブレークダウンしなければ戦略に 繋がらないという危惧の念が若干ある。
 研究の国際協力は,大学としての国際交流戦略がなければ発展の方向が見えない ことが心配だろうと思う。大学として戦略を決めるうえで,場合によってはヘッド ハンティングすることで外国から教授を採用するという大学としての国際協力・交 流の要素を加えることが必要になってくる。それは海外の強いところを持ってきて, 日本の技術に貢献してもらうことを含めてである。それから対欧米と対中,環アジ アと二正面作戦の方法は国際関係においては非常に大事である。これらの面で戦略 が加わるとさらに,他の大学に比べてはるかに先進的になると思う。
 最後に,学生派遣数が非常に少ない。日本の発信能力は基本的には言語能力と不 可分なので,学生を在学中に外国へ派遣し訓練させなければ,国際競争で活躍でき る人材が育っていかないのではないか。科学技術・学術審議会の国際化推進委員会 においては,日本学術振興会の特別研究員は原則1年間は外国での研究を義務づけ るという議論もある。派遣制度には,外国人招へいに比べると予算措置が欠如して おり,そのことも含めて反省する必要があるという印象を持っている。
  学生を外国に派遣することは非常に大事である。長期の場合も,マスターのとき に必ず外国に派遣させ,学会で仕事をさせることである。日本の社会は生温い環境 で安住しており,外国の状況を見るだけでも変わってくる。その意味で学生を外国 へ派遣することは,日本にとって本当に焦眉の急である。
  我々が大学に期待をするのは人材の育成である。例えば,良い人材が育ったポス ドクは指導者からノウハウを教えられ,かなりの戦力である。ところが,その人材 を引き続き組織で受け取る場合は,様々な障害があり,外部からの引抜への対策を 我が国として少し考えないと,良いポスドクがキャリアパスに進むほど,その人材 を持っていかれる現象が起きる。これに対して,海外に学生を派遣することの逆の 現象としてアメリカでのポスドクまたはドクターコースも,日本人が極端に減少し ている状況である。コミュニケーションのリンクを作ることは非常に大事である。 今日の資料にポスドクの受入状況があり,本学の学生あるいはポスドクについて, その後の国際的な活動を見る必要があり,その対策を作っておく必要があると思う。 また,独法化になると,必ず評価が出てくる。独法化への対応として二つの委員 会を立ち上げられ,一つは先生方,一つは事務局側で検討されているが,特に事務 局側で気になるキーワードは,「評価」もされることである。これからは評価の設計 が重要になるが,評価は独り歩きし,多くの数字が評価リストに簡単に上がるため, 注意して取り組んでほしい。また,先生方もその場面に,積極的に参加する必要が あると思う。
(13) 以上のような意見交換等の後,大崎会長から,閉会の挨拶があった。
(14) 最後に,示村学長から,本日の審議に対する謝辞及び次回の開催は来年2月を予定している旨説明があった。

以 上




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