第6回北陸先端科学技術大学院大学運営諮問会議議事要録

 

1 日  時  平成15年2月25日(火)13時30分〜15時30分

2 場  所  ホテルフロラシオン青山・孔雀西の間(東京都港区南青山4-17-58) 

3 出席委員  大崎委員,千葉委員,大柿委員,大須賀委員,後藤委員,松本委員,

村上委員

  欠席委員  諏訪委員,野依委員,山田委員

  大学出席者 示村学長,吉原副学長,中森知識科学研究科長,二木情報科学研究科長,

川上材料科学研究科長,片山附属図書館長,山崎事務局長 他

 

4 議 事 等

(1) 示村学長から,開会に当たっての挨拶があった。

(2) 示村学長から,運営諮問会議の委員及び大学関係者の紹介があった。

(3) 示村学長から,前回の会議以降における大学の主な学事等について,報告があった。

(4) 示村学長から,本会議に対し,「法人化への対応について」の審議依頼があった。

(5) 大崎会長から,挨拶があった。

(6) 大崎会長から,議題である「法人化への対応」について,まず,本学における

検討状況をお聞かせいただいた後で審議に入りたい旨発言があり,示村学長から,

配付資料5−1〜5−6(資料5−5を除く)に基づき,次のような説明があった。

  ・ 国立大学法人は,平成16年4月1日に設置され,各法人がそれぞれ国立大学を

設置する形態となる。

  ・ 国立大学法人の組織については,役員会,経営協議会,教育研究評議会で構成さ

れる。そのうちの役員会は監事を除き,学長と理事で組織され,中期目標の原案,

年度計画,予算の編成,組織の設置改廃等を審議する。

また,経営協議会は学長,学長が指名する役員及び職員,学外有識者で構成され

ており,経営に関する重要事項を審議し,議長は学長をもって充てる。

    教育研究評議会は,学長,学長が指名する役員,学部長,研究科長,附置研究所

長その他の重要な教育研究組織の長,学長が任命する職員で構成され,教育研究に

関する重要事項を審議する

  ・ 学長の任命は,国立大学法人の申出に基づき文部科学大臣が行う。これは独立行

政法人と違い,国立大学の場合は大学の自主性が尊重されている。また,学長選考

については,経営協議会の学外委員のうちから選出される者と教育研究評議会の代

表者が,各同数で構成される「学長選考会議」で行われる。国立大学法人の学長に

求められる資質は,経営手腕を発揮することである。

  ・ 理事は学長が任命し,監事は文部科学大臣が任命する。その際に,学外者を含む

ようにしなければならない。

・ 学長の任期は,2年以上6年を超えない範囲内で,学長選考会議の議に基づき法

人が定める。理事の任期は,6年を超えない範囲内で学長が定めるが,学長の任期

を超えることはできない。監事の任期は2年である。

        文部科学大臣は6年間の中期目標を定め,各国立大学法人に示す。ただし,中期

目標を定めるにあたり,あらかじめ国立大学法人の意見を聴き,当該意見に配慮

しなければならず,この点は大学の自立性・自主性を尊重したものである。その

中期目標に対して,各国立大学法人は中期計画を作成し,文部科学大臣の認可を

受ける。

  ・ 評価に関しては,国立大学法人の業績評価を行うため,平成15年10月1日に

「国立大学法人評価委員会」が設置され,現在の大学評価・学位授与機構が行う教

育研究評価の結果を尊重した上での評価が行われる。

  ・ 中期目標・中期計画の中心は,大学の理念・目標を設定し,それを実現するため

のカリキュラムの作成と,それに沿った教育を行うことである。その主体は研究科

のみでなく,センターの果たす役割も非常に大きくなる。また,連携講座等を積

極的に活用して,外部からの意見等を取り入れる。さらに,学外の企業人に対する

教育サービス行うことである。

  ・ 今回の6年間の期間中には,現在の教育実施体制のあり方を見直す時期が来るこ

ともあり,知識科学研究科の改革を検討している。

(7) 大崎会長から,まずは国立大学法人化についての意見をいただきたい旨の発言が

あり,次のような質疑応答及び意見交換があった。

(◎:会長,○:委員,●:大学出席者)

○ 法人化後の教授会の機能と権限について教示願いたい。

 現在でも学校教育法で規定されており,各大学の慣行による部分も多く,大きく

変わらないと思う。特に,本学は法律に則した体制であり,変化はないと思う。

◎ 法制上明確に変更することは,教育公務員特例法の適用対象でなくなるため,各

大学で教員人事のルールを決めることである。また,教授会の審議事項は,そのま

ま引き継がれると思う。さらに,副学長,役員を置き,学長が全権者になる法的構

造であるため,トップマネジメントを強化することと,教授陣の意向のバランスを

とることが,学長の手腕による重要な点である。今までよりは,全学的な意思形成

を重視する運営が期待されている。

○ 6年間とは,6カ年計画なのか,あるいは毎年6年を見直していくのか。

● 6カ年まとめて計画を立てることである。

◎ ローリングプランではないため,変更はあり得る。ただし,変更するときは文部

科学大臣の認可を受ける必要がある。また,年度ごとに国立大学法人評価委員会の

評価が行われ,その時点で計画の変更を勧告されることがある。

○ 評価とは組織評価か,個人評価であるのか。また,報酬については,学長又は経

営協議会がどの程度決定権を有するのか。

● 評価については,各大学で実施する自己点検・評価では個人評価も含まれるが,

国立大学法人評価委員会が行う評価は,業務に対する全体評価と思われる。報酬に

対し評価をどの程度反映させるかは分らない。また,給与の規定も各法人で決める

こととなり,報酬の基準についても一定のモデルに近い形で決めることになると思

う。

〇 その点は自由度があるということか。

        給与決定は各大学で行われるが,人件費の見積りは明確にする必要があり,財源

との比較ということになる。

〇 文部科学省の示す中期目標には,評価指標が設定されているか。

● 中期目標は,大学側から6年間に実施することが提出されて,文部科学省がそれ

を十分に尊重した上で示すものであるが,そのときに評価指標まで含めた形ではな

いと理解している。

〇 資料によると,中期計画を立てる場合も,指標を設定する必要があるのではない

か。

● 先行独法の場合は,数量的,定量的になっているが,国立大学法人においては,

そこまで求められないようである。

(8) 引き続き,中森知識科学研究科長から,知識科学研究科の改革について,配付資

料5−5に基づき,次のような説明があった。

・ 現在,知識科学研究科は12講座あり,文理融合したように見えるが,各分野の

扱う知識の種類に違いがある中で,それらを一緒に扱っている。また,新領域を編

成し,科学研究費を申請できる分野の分科細目が設置されるには至っていない現状

である。

・ 改革では,現在の12講座を社会・経営系,知能・情報系,システム・複雑系の

3つにグループ化する。

知能・情報系のグループは,知識科学教育研究センターに連動した知識科学研究

科全体を「知識創造ビルディング」と名付け,知識が相発できる情報技術の支援と

いう面では,かなり進歩したシステムになる。

 社会・経営系のグループは,科学技術をマネジメントするところに力点を置いた。

 システム・複雑系のグループは,情報科学研究科及び材料科学研究科と協力して,

科学技術創造を支援することに目標を設定している。

これらの3つのグループごとに役割りを果した上で,共同で一つの研究科体制を

組織することを検討している。

・ 社会・経営系を中心に,技術マネジメント関係の教官を強化するため,4月に関

係の教授4名を採用する。

・ 社会・科学系の教員と情報系の教員が多数であったが,今後は横断的に行うプロ

ジェクトを積極的に推進したい。

・ 経営学においては,企業の従業員が持つ知識マネジメントに重点を置いており,

それはかなりの評価を受けているが,今後は「科学技術の戦略的管理システム」を

構築したい。

        人材養成の目標は,「経営のわかるエンジニア,科学技術のわかるマネージャー

のような知識社会のパイオニアを組織的に養成すること」である。

・ 技術経営ができる人材,フロントランナー型研究者を育成して,幅広い視野を持

った研究者の育成を導入したいと考えている。

・ 科目は,MOTコースカリキュラムを作成する。既に知識科学研究科で講義をし

ている科目に,management of technology,技術マネジメント等のコースを1科

目ずつ設定し,これを全学に提供したいと考えている。

・ 「修士(知識科学)−MOT専修−」の設置を計画している。他の大学院や本学

の情報科学研究科,材料科学研究科,また本研究科を修了した学生が,このJAI

ST−MOTコースを1年間受講し,知識科学の修士を与えられるコースを設けた

い。知識科学研究科の学生がこのコースを取得した場合,知識科学の修士号とMO

T専修という称号も与えたいと考えている。

(9) 各委員から,次のような質疑応答,意見交換が行われた。(◎:会長,○:委員,

●:大学出席者)

  〇 非常に難しい世界であり,こういうことができたら良いと思う。知識科学研究科

が設置された当初は,ある課題に半年取組んでいたものが,1カ月でできるという

ものを目指していると期待していたが,そのような世界をつくろうとしているのか。

● 知識創成学という学問分野をつくりたいことと,MOTの下でしっかりした学問

分野をつくることとの2段の構成を考えている。

〇 非常にすばらしいことであり,期待している。

● 現在,知識科学研究科と材料科学研究科及び情報科学研究科との間で,大きな議

論をしている。

〇 国際学会の設立は,具体的にどのようなものか。

● これは世界システム科学連合会という中において,5年前から知識とシステムに

関する国際学会を主宰しており,主として日本人,中国人,イギリス人が中心であ

ったが,今後はアメリカ人を含めて,この秋に開催する第4回大会で国際学会設立

を検討している。ただし,これはシステム部門が中心であり,これをどう広げてい

くかが課題である。

〇 北陸先端科学技術大学院大学に知識科学研究科が設置されていることが非常にユ

ニークである。知識科学をさらに明快に示していくにあたり,北陸先端科学技術大

学院大学に事務局を置いて国際学会を開催することは,素晴らしいと思う。中期目

標の6年間の活動の中でこれが位置付けられて,成長していくことを期待したい。

他方,MOTについては,社会的要請が非常に強く,幾つかの大学でも行われて

いるが,その中でJAISTの特色は何かあるのか。あるいは今の社会的な流れの

中で位置付けていくことになるのか。

● 本学でMOTの教育をすることは,一つ有利な点がある。それは第一線の自然科

学,技術の開発を行っている情報科学と材料科学の先生方が同じ場所にいることで

ある。MOTとは,社会科学者を中心に組織されている場合が多いが,本学では工

学系と社会科学系の相互作用で他のMOTとは違うと思われる。現在は自然科学創

成学を土台にして,MOTを上に置いたコースを考えており,これを有機的に結ん

でいきたい構想である。MOTについては,本研究科の亀岡教授を中心に組むよう

に考えている。

〇 グループ化による再編成とMOTをつくることは違うことか。

● 違うものである。

〇 グループ化については,うまくいくように進めていただきたい。ただし,知能情

報は情報科学と非常に密接に関係しており,今後どうしていくか考えておいた方が

よい。

● 情報科学研究科との相違点は,本研究科の情報グループは,知識創造や発想を支

援するソフトづくり,環境づくりが中心であり,情報科学そのものを追求している

ているものではない。

〇 その点が分りにくいため,その区別が明確の場合は整理していただきたい。そう

でなければ,一緒に行う印象を受ける。「情報」とは,非常に広い言葉にとられる。

● その点も,企業では情報技術で行っているので,我々も意識して,その議論を深

める必要はあると思う。

〇 法人化以後,大学にとって知識科学のあり方は特色であり,非常に重要な問題だ

と思われる。現在の知識科学に対して,一番期待されることは,従来の教育ではで

きなかったような人材育成である。最初の目標もその点にあったと思うが,この人

材教育は,今回の改革においてもできないと思う。現段階でできることは,教える

ことができる人材を連れてきて事例を見せることである。知識科学への最大の期待

は,もともと一人の人間が全てをすることは無理があるため,自分が知らない部分

に他の人の知恵をどう使うのか,という考え方ができる人材を育てることである。

この育成にあたり,大学として何が必要か,教員をどう探してくるか,また,そ

ういうことができるためには障害をどう取り除くかを考えることが重要である。

● 学生には,文系及び理系の両科目を強制的に取得させているので,そういうこと

ができる学生は育ちつつあると自信を持っている。現在苦心していることは,文理

融合したアウトプットが出せないことである。融合することはすぐには難しいので,

自分の今までの研究分野で知識科学の研究を行い,MOTという目標を設定し,ア

ウトプットを出す作戦を考えている。

〇 研究のアウトプットに関して,複雑なシステムによる方法では,日本では研究成

果と評価されないため,融合を高く評価する学会をつくる努力をしていただきたい。

その母体になれるのは,知識科学だけである。

● 日本での知識科学の進め方については,平澤(併任)教授の意見を取り入れて,

横断的な学問分野の研究者へ声をかけることとし,現在,その研究者名簿の作成に

取組んでいる。

〇 非常に新鮮な感じで内容を受け止めている。ナレッジサイエンスをどうテクノロ

ジーというか,専門分野にどう応用していくかが難しいというのが第一印象である。

一方で,物の考え方を追求する意味では,貴重な新しい学問分野だと痛感している。

    また,今回の改革による人材を社会へ送り出すことは,まだ早いと感じる。むし

ろ,他の材料科学や情報科学にも共通した基礎的なものを与えていく取組みを行い

ながら,一方では最先端のナレッジサイエンスを追求していく方法が現実的である。

学生や企業側の反応はどうなのか。

● 修士課程のうち,企業から派遣された者は,自分の職場で生かせると喜んでいる

が,学部卒から上がった学生は,就職先が元の学部の分野に戻っており,残念であ

るようだ。

〇 限られた人数の教員で新しい分野をつくったとき,実態は急に変わるとは思えな

く,本当に新しいものにならない恐れがある。むしろ,この枠にとらわれず,他の

研究科と共同研究して,マネジメントの理論を生かすことを考えたらよい。確かに

これだけ幅広いものに対してカバーできない面もあると思うので,外部との連携も

重要であると思う。

また,実践に近い分野の経験者による講義等を事業に取り入れて,外部との連携

を強めることが重要である。

● 情報科学や材料科学との連携はあまり行ってないので,これからは進めたいと思

う。

〇 第5世代プロジェクトが,知識科学を狙ったプロジェクトであり,厳しい評価を

されている。日本全体が,アメリカのこの分野の研究について,盛り上げていくた

めの仕組みをつくっておかなければ厳しい世界になると懸念している。

● コンピューターの使用は,形式化された知識のみを扱うことであるが,形式化さ

れていない人間自身の知識の扱いを探求するために,知識科学ができたと思ってい

る。

○ 産業界では,知識を科学的に扱うことに対するニーズが強まっていることから,

MOTを設置することは,進めていただきたい。

    今回の改革は,知識からテクノロジーのマネジメントへ範囲を拡張された感じを

持っている。企業は大学を卒業した経営のわかる技術者を必要としないが,もし知

識をマネージできる人材が出てきた場合,その点には強い関心を持つだろうし,ま

た産業全体も知識産業化していく中で,この分野は重要になると思う。

しかし,従来の知識科学をさらに深めること等の必要性があると思う。ブロード

バンド化した環境の中で,知識創造や知識マネジメントがどう行われるかについて,

基本的なものに対するニーズは高まっており,初志貫徹も忘れないでいただきたい。

◎ 先生方の話を総合すると,知識科学研究科を研究科として置くことについて基本

的な問題がある。つまり,学問分野を形成する段階のものは,人材養成を含めて,

研究科という形で運営できるのかという疑問があると思う。分り易くするためグル

ープ化すると,既存のものに依存する度合いが高くなり,単なる組織の組換えとの

相違が分らなくなる。

○ 知識科学研究科は重要である。現在は,従来の科学のあり方と違うものが要求さ

れており,そのニーズに対して応えるところがなく,唯一組織の再編があると思う。

◎ 文理融合とは,自然科学者の持つ発想であり,社会科学者の大半はその発想はな

い。自然科学者が社会科学者に対して期待しているものと,社会科学者が現実に行

っていることにかなりギャップがある。ともかく社会科学者を引き込んで,特定の

使命を念頭に置き,共同研究をすることが第一段階であり,まずは文理協力ぐらい

から始めることが現実的である。

○ 科研費等については,どの分野に申請しているのか。

● 最初,知識や知識経営に応募したところ,採択されなかったため,元の研究領域

で申請を行っている状況である。学長,副学長とも相談しているが,新しい分野で

応募できるように運動したいと考えており,まだ時間がかかると思われる。

◎ 目標・計画は,文部科学省でも今の時点では重視していないが,エンプロイアビ

リティーというのが各国の例を見ても非常に評価基準としては強く,人材を育成し

て社会へ出す過程は,大学に任せてよいと思う。その場合,どういう人材が社会で

どのように機能を果たすかが非常に重要である。また,改革のイメージでは,MO

Tは共同のコースとして,知識科学研究科が責任を持って運営しようというもので

あり,知識科学研究科のエンプロイアビリティーに対する説明責任が求められる。

● 少なくとも2つの分野に精通することであるが,両方とも精通することは数年で

は不可能であるため,他の分野として少なくとも一つは理解できる副テーマを取得

させている。なお,できるだけ遠い分野を選択させている。

○ 知識科学のプロパーの領域としては,もっと広げておくことが必要である。知識

に関しては発掘から創造,管理,運用,保護があり,これらについて,様々な方法

論を立てることができる。

● 創造の部分のみができていないので,強調している。

○ MOTについては,政府も重要な分野であることは認識しており,研究費の方針

について,人材が必要な分野であれば,現在少数の分野に多少有利になる配分方法

を検討することになっているので,貴重な研究科があることを社会にわかるように

シンポジウム等を開催して,積極的に情報発信することがよいと思う。

● 年に2回,東京において知識科学シンポジウムを開催しており,第4回として3

月8日に学術総合センターでMOTに特化した内容のシンポジウムを開催する。

        「知識科学」はハイレベルの議論では通じる言葉であるが,中小企業の場合,

「知恵」という言葉の方が生きている。management of technologyはかなり広い

範囲であり,何か課題を見つける知恵,課題が出れば,さらにそれを超える知恵を

JAISTの卒業生が中心となって出していくと非常に有り難い。知恵という言葉を

使用することにより,普及度は高まると思う。

○ 知恵は科学研究の対象ではなく,知識はかなり複雑なものである。

10) 以上のような意見交換等の後,大崎会長から,閉会の挨拶があった。

11) 最後に,示村学長から,本日の審議に対する謝辞及び次回の開催は6月を予定し

ている旨説明があった。

以 上

 

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