これまで、脳の一部を欠損するなどして、脳機能に障害を生じた症例は、通常の認知 活動の研究に関する資料となってきた。これらの脳機能障害に関する症例のひとつに、 カテゴリ特異性障害がある。発表当初、この障害を持つ患者らは、脳に先天的な意味 記憶に関する欠陥を持っていると考えられた。
 しかし、現在では、カテゴリ特異性障害が意味記憶よりも、視覚情報の処理過程に関 係した障害であるという報告されている。本論文では、カテゴリ特異性障害の症例の一 つであるcategory-specific visual agnosia(CSVA)に着目し、物体の形状が視覚物体認 知に与える影響から、現時における基本的な視覚物体認知のシステムに関する推測の概 観が示されている。