研究指導の考え

 「研究は文化活動の一種だから楽しくなければやる意味がない。」

 これは私の恩師の潮田教授もいわれることで、私も同感です。もちろん「楽しい」という 言葉には個人差がありますが、義務感で研究をやるのであればやめた方が いいと思います。現在の私の研究室の学生さんがどう思っているかはわかりま せんが、私は、「わあ、おもしろい」「世界を相手に戦おう」という気持 の連続で楽しんでいて、できるだけ、その気持ちを学生さんと共有できるように しています。特にdisucussionは楽しいし研究の原動力であるので、なるべく discussionを多くできるようにしています。

 ここで「面白い」と思うことはとても強いことです。最先端の研究では往々 にして意外で理解不能な結果がでたりして、次の一歩に困惑することがあ ります。どんな教科書の枠組みからもハズレてしまうような状況に遭遇し ます。でも、私は、思い通りにいかない実験ほど面白いと思っています(失格寸前 の発言かも知れませんが)。そして、そう言うときにたよりになるのが「面白 い」と思う心です。「こうしたら面白い」とか「こうなったら面白い」とい う考えで進む状況になるわけです。ここで1つ注意して欲しいのは、こうなっ たら学生さんも私も対等な立場にいる、ということです。discussionは、どっ ちが面白がっているかの勝負に変化します。ここで学生さんの方が私よりも面白がっ ていると思ったら、思い通りにやってもらうことになると思います。

 さて、もう1つの私の方針として、各人に一人前の人間になって世の中に 巣立っていって 欲しいという気持ちがあります。そのために研究室内には結構系統的なトレーニング プログラムを用意して、各人の基礎力を充実してもらう努力をし、またいつ人前に 出ても恥ずかしくないような態度や行動をとれるような心がけ(プロ意識と私は 呼んでいます)をもってもらっています。 そのお蔭か、就職などもいままで(ユニークな個性のために苦労した人もいますが)、 希望した人は100%成功しています。