水谷研の研究内容

 具体的な研究内容は 研究室のトップページ に各テーマ毎に書きましたので、ここではその裏に流れ ている私達の研究のココロイキについて話します。私たちは研究の舞台を表面に設定していますが、 「表面を知りたい」というよりは、「表面で新しいことをしたい」という考えを強くも っています。ですから、表面を見るのに、電子やイオンなどを用いたいろいろな確立 された手法は用いることはせず 、普通用いられない「レーザー非線形分光」を表面分光に適用する方法を強く押し 進めています。「レーザー非線形分光」を選ぶ理由は、他の方法よりも プローブであるレーザー光が非常によくできた光であるからです。すなわちレーザー 光は理想的な単色平面波で、偏光も規定でき、強度も非常に強く、パルスの 長さから、 粒子の統計性まで非常によく制御できます。フェムト秒という非常に短い時 間のパルスもつくることができます。他の粒子ビームでは、 とうていこういう性質は得られません。 こういう性質を用いれば、電子状態の形状、稀な現象、統計的情報など、 他の表面分光法では得られない表面の情報が得られることが期待できます。 また、最近では可視光から紫外赤外の広い領域(0.1eV〜6eV)にわたって、手軽に レーザー光(またはそれに準ずる光)が得られるようになってきました。 このエネルギー領域は表面物性的に非常に興味深い領域で、ここで他の方法では 得られないエネルギー分解能とtunabilityを発揮できるレーザーには、表面バンド構造の観測や 表面状態の観測などに関連して大きく期待していいと思います。私たちはこのよう な期待がもてる新たな分光法を開発したいと思っています。

  もう少し具体的に問題意識をのべてみましょう。まず、上に書いたレーザー光と 表面との相互作用、特に非線形な相互作用は、どういうモデルで記述していいのか 、まだあまり確立されていません。表面では電子はどのように束縛されていて、 光が来たらどの程度喜んで動くのか。 これも誰も知りません。 私たちはまずこういうことから明らかにするという観点で表面を探っています。

 次に 表面でおきる現象を観察するためのいろいろな光学的手法の開発をしています。光で 表面を探る手法を開発する際の重要な点は、感度をよくする様工夫する点です。いままでの 光の分光法は感度がないために表面への適用がおくれていました。この観点から 超高感度表面ラマン分光システムを開発しています。また表面準位の観測に威力 を発揮する波長可変表面光第二高調波発生(SHG)観察装置、試料表面の非対称部位の 二次元分布をみることに威力を発揮するSHG顕微鏡、表面光和周波(SFG)分光 装置、そして光和周波(SFG)顕微鏡などを開発しています。

  これらの装置をフル稼働させ、いろいろな表面界面を見ています。 空気中や超高真空中における、触媒表面、半導体表面、 半導体微粒子、金属膜界面、金属ナノ細線で面白い観測結果が得られています、低温における超 電導体でも超電導状態の統計効果が関連すると思われる面白い結果が得られて います。超高真空装置の中では、原子の配列を制御した表面が得られるので、 より規定された触媒現象、結晶成長現象の観察ができます。

 3つめの観点は、表面で新物質をつくろう、という観点です。表面は原子や電子に とっては、「先にはなにもない崖っ淵」の様なものです。このような場所におかれ た原子、分子、電子は、安定なバルク中におかれた時とは違った特異な性質を示し ます。ちょうど追い詰められたねずみが猫を噛むようにです。この性質をうまく利用 すれば表面でとても新しい性質をもつ物質が作れる事が期待できるわけです。さらにこれ を繰り返し構造にすれば、超格子様の新しい物質がつくれます。通常の超格子の作成と の違いは、そこに表面物性の考え方が入ってくるというところです。

 本当に最後になりましたが、私はロマンチストです。いままで研究をする際 にも、研究内容にドラマ性を求め、それをもって「人を驚かせよう」 「人を喜ばせよう」というような考えで仕事をすすめて きた面も多かったと思います。人が思い通り驚いてくれないことも多いのですが、 でも、そういう意味で、私は科学にロマンを求めています。

研究 室ホームページにもどる
水谷 教授のホームページへ