project: 身体的スキルの秘密を探る

co-worker(s): 阿部真美子(卒業) 三輪威 藤波努 (JAIST)



職人技など、身体的スキルはなかなか人に伝えにくいものです。なぜでしょうか?
自分では簡単に出来る動作でも、人に伝えるとなると、とたんに言葉に困ります。ビデオや実演をみても、動作の概形はわかりますが、どうすれば再現できるのかはわかりません。手を取って教えてもらっても、いつ・どこに力を加えるかという情報は直接わかりません。主観的な情報を基に教えることは難しいです。しかし、客観的な情報を使って、それをヒントとして修得に役立てることは可能ではないかと思いました。
そこで、モーションキャプチャを使って、職人技の解析を行いました。技能の題材は、陶芸の土練りの一段階である「菊練り」です。丁度大学の近くは九谷焼の産地ですから。職人技は、素人の動きよりも解析が難しいと思うかもしれません。しかし、同じ品質のものをいくつでも作れる、というのが職人の条件ですから、視点を決めれば思ったより簡単でした。むしろ、素人の動きの方が乱雑度が高いです。
もちろん、解析が簡単というのは周期性・局在性が高いという意味で、素人や経験者では一体だった運動サイクルが、いくつかに分化するという特徴が見えてきました。つまり、運動自体は複雑化しています(しかし、目で見ると「きれい」に見える、というのは不思議です)。非線形動力学的にみると、階層的な構造が見えていることに相当すると考えますが、これは今後明らかにしてゆきたいと思います。
2003年度は、投球動作という瞬発的な運動の研究も始めました。ここで得た知見を基に、瞬発動作の出来る機械の製作も行う予定です。


publications:

Mamiko Abe, Tomoyuki Yamamoto and Tsutomu Fujinami
A Dynamical Analysis of Kneading Using a Motion Capture Device
proceedings of Epigenetic Robotics 2003, pp 41-48