ふりこのふれはば

ふりこのふれはばを,角度という表現では確実な表し方ではない。
というのは,半往復(端からもう一つの端の間の角度)か,
静止したおもりを引き上げる角度(半往復の半分)を意味するのか,
どちらともとれるからである。
教科書には,ふれはばは角度で表わすが,
おもりが半往復する角度であると明らかにされている。

ところが,NHK for Schoolでふれはば(ふれの角度)を静止からの角度としています。
これは誤りではなく,力学解析するときには角度を静止状態を基準に考え,
+-のふれで解析するからです。
 一方,バネの場合も往復運動をするのでふりこと同じです。
静止状態からの伸びであるから,ふれはばの考え方は論理的です。

  では教科書のふれはばは間違っているのでしょうか。
「はば」というからには行き来の角度です。
したがって,ふれはばはふりこの端から端への移動角度です。
NHK for Schoolの表し方の2倍です。小学校では力学は出てきません。
「はば」は出てきます。「ふれはば」は教科書に従う方がよいというのが結論です。


なお,ふれはばについて,2年前には90°,60°,45°が用いられていましたが,
これは物理的に疑問であります。

すなわち,ふれはば90°においては,近似解である 

 が成立しません


その理由は角度が小さい時に
 
 の近似をしているためです。



もう少し厳密に解を求めるには,級数展開した式を用います。



  ただし,
はふれはばの1/2である角度を示します。

 

つまり,1往復する時間はふれはばを大きくすると近似値よりも大きくなることを示しています。

【問題が起こる】

因みに近似解との増分割合は,ふれはば20°では0.2%,40°では0.8%,60°では1.7%ですが,
90°では3.8%,100°では4.7%と1往復する時間が増えます。
  もし,
25㎝,10g10回測定するとして,
ふれはばが
20°の時には10.0秒ですが,90°の時には10.4秒,100°の時には10.5秒になります。
 実験において計測時間やふれはばの誤差を考慮すると,
1往復する時間がふれはば
60°では1.0秒と得られ,
90°では1.1秒と得られることが多いと推測されます。

結局,90°から60°へ改訂されたのは,
ふりこの等時性がふれはばによって変わらないことを示すため,
実験条件最適化が考慮された結果であろうと推察されます。

 従って,以前どおり
90°の角度板を使う実験をするのは良くありません
つまり,子どもに有意な差を実験誤差という誤りを伝えることになるからです。

【こんな配慮まである】 なぜ,長さが25㎝の倍数になっているか?

こんなことを考えてみたことがありませんか。
40cm70cm100cmでもいいのに,と思えますね。ところが,25㎝の倍数がいいのです。

これは,




の式に関係しています。Tは秒,πは円周率, は長さm,gは重力の加速度9.81 m/
25㎝=0.25mで計算すると,T=1.003と求まります。
つまり,
1.0秒です。の平方根に,Tは比例するから,
長さ
2倍の50㎝では 1.414となり,75㎝では 1.732となります。

子どもたちの測定結果もこれらの値に近い数値になりました。

【別の質問】
 では長さを
1mとすると,何秒か? 誰か予言できる人はいますか? 

出鱈目に答えた子がいて,「
2秒」と言った。
「えっ,正解」というと,皆,驚いていた。「計算上は
2.0秒です」 

√の話をするのは早いが,
1m25㎝の4倍です。4は2×2です。
それで2というのが決まるのです。
1往復する時間は2秒ということになります。
1往復する時間を4秒にするには,長さを何mにすればよいでしょうか?
皆考えた。4×4=16 25cm×16=400cm そうです,4mです。
理科室の天井が高ければこの実験はできます, くらいの話をしてみた。


教科書の実験では,長さに対する配慮はこんなところにされているのです。

今年は,実験が早く終わるグループがあったので,1mの長さの実験をしてもらった。
3
回の測定結果からちょうど一往復の時間は2.0秒でした。
そのグループの誇らしげな姿は各グループ内の協力を表していると実感したようでした。

【補足】
  ふりこの一往復する時間の測定する位置について

  教科書では端にふりこのおもりがきたときにスタートするようになっている。
しかし,これは測定精度からいって中央と比較して悪い。
もし,中央を通過するときにすれば,精度は良くなる。
理由は通過の瞬間はふりこが速く動くので捉える瞬間に幅(誤差)が小さくなるからです。
ただ,これには問題もあります。どちらから通過するかを決めておく,
前後のふれを小さくする,静止位置の目印を書いておく,おもりとひもの結び目印をつける,
これらの細かいことをしなければなりません。
これでどの程度の測定精度が得られるか,実験してみたところ
誤差は1%以下で求めることができました。(端での実験は数%に対して)
だから,推奨するということではありません。
この種の実験はみんな同じようにできることが大切です。
端なら簡単明解です。小学校の実験は精度を問題にしていません。
ある原理を学ぶことが大切で,振り子の等時性が最重要です。

平成30年3月18日 作成
 平成30年3月25日 改訂