植物の水の通り道

6年生の理科において,

 植物に水をやると,根から取り入れて先端にある葉や花へいく。
これを調べるため,ホウセンカを使う。この実験にホウセンカが優れているのは,
蒸散が速い,ある程度通り道が透けて見える,顕微鏡切片をつくりやすい,
取り扱うため大きさが適していることを挙げることができる。

しかし,色水をつくって水の通り道を調べるためにどのようにするか,
実験準備は簡単とは言い難い。問題点を明らかにして解決方法を例示する。

1. 色水の種類  教科書に書かれている「食紅」は安全性は高いが,
濃い色水をつくることは容易ではない。
特に,食紅は食用赤色102号であるニューコクシンを使うことが多い。
この色素は分子量が604と大きい。構造にはナフタレン,スルホン酸塩,ジアゾ官能基を持つ。
また,水に溶け易くするためデキストリンを85%混ぜてある。氷酢酸に溶かして濃度調製する。

1‐2. 赤インキは色素としては綺麗だが,
合成色素であるアゾ色素やフタロシアニン系色素を使っている。
濃度を高くすることは難しい。

1‐3. ファンタジー色素の成分は不明だが,原液そのまま使うと染まりやすい。
値段が650円/100mL と高い。しかし,回収して使うことができるので,
実験をした後には流さないようにして,回収する。
なお,手についた色素は液体洗剤を使って擦ると比較的容易に落ちる。

2. 根から吸い上げて葉まで染色するには,根の半分ほど根毛側を少し切り捨てるとよい。
理由は根毛には細胞膜があり,大きな色素分子が透過しにくい。このため,染まりにくいからである。

3. 根から水分をあげるためには,送風機で風をあて,日光にさらして蒸散を進めるとよい。
実際に,3分ほどで根近くの茎は染まり始めた。30分で茎,2時間で葉の先まで染色された。

4. 断面を観察するので,片面だけを切れば見ることが可能であるが,
薄くカッターでスライスするとよく観察できる。葉脈の横断面を見るには,
薄い切片になるように切る。葉脈の染色状態を見ると葉の表裏で異なることが分かりやすかった。
ただ,薄く切るのは難しい。そのため,葉の付け根の近いところを切ると少し硬いので切りやすかった。

5. 根からの水の流れは道管を通じて上がっていく。これは中学生の理科であるが,
小学校でも観察して学んでおくとよい。水に溶けた養分の吸収は毛根を含む根で行われる。
根の中央部で水の流れが見られる。
 しかし,ファンタジー染色では中央部より外側周辺部が特に染色された。
根の道管を見つけるには根毛から水とともに吸収される色素を使うことが考えられる。
茎の道管ははっきり染色でき,顕微鏡観察できた。道管は染色されるが,師管は染色されなかった。
師管は染色されないが,管壁があるので顕微鏡観察することはできた。
勿論,師管は,光合成された養分を根に送る役目をしていると書かれている。

上がっていった色水が葉でUターンするわけではない。そこで,フィルターがあるように見える。
このような水の流れを概念的にとらえることが小学校でも必要であろう

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2017.6.16 記
2017.6.18 変更
 2021.7.12 改稿