リトマス紙

 小学校6年生の理科にはリトマス紙が登場する。

リトマス紙の使い方は水よう液にひたすと,赤・青の変化を調べ,

産生やアルカリ性がわかるという「試験紙」です。

子どもたちは5~6種類の水よう液を調べる実験をする。
初めの操作を繰り返すと,次のような想像や疑問が出てきた。

 1.リトマス紙の色は何を使ってつけるのか。

 2.なぜ,酸性で赤,アルカリ性で青なのか。

 3.食塩水は青くなったのでアルカリ性なんですか。

これらに即座に答えるのは難しい質問です。

[質問1の回答] 色の元はリトマスゴケの色素である。リトマスゴケをアンモニア水などで発酵させてつくると,

酸化されて色素ができます。なお,リトマスゴケは地衣類ですが,名前がコケになっていますが,

コケ植物(蘚苔類;スギゴケなど)とは違います。地衣類の多くは藻類と共生しています。

リトマスゴケに似た地衣類にウメノキゴケがあり,これは日本中でよくみられます。

NHK for Schoolでリトマス紙の製造(作り方)が紹介されています。

https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005400431_00000&p=box

[質問2の回答] これに答えるのは色と構造式の関係が分かれば早いのですが,

大雑把な理解をする試みをします。今,小さな色の「つぶ」を本のような形とします。

閉じたままだと「青」いろです。ところが,酸を加えると開いた形になります。すると本の中身が見えてきます。

それが赤色です。色の「つぶ」の形が酸によって変わるのです。


(キリヤ化学のQ&A43 より)

[質問3の回答] 期待される実験結果ではなく,教科書とは違うので,戸惑います。

これには,教科書の不完全さがあるのですが,子どもには「塩化ナトリウム」言葉が分からないので,

よく知られている「食塩」を使ったからです。厳密に言えば教科書におけるこの物質名の記載は間違っています。

逆に,子どもたちの実験結果,少し青色というのが正しいのです。理由は以下の通りです。

 食塩は塩化ナトリウムではありません。食塩は生産場所,精製方法が違います。pHは濃度によっても違います。

5年生の実験と並行することが多いので,共用した食塩のpHは一定ではありません。

 対策として準備する方は量は要らないが,純度が高い「塩化ナトリウム」を用意し,濃度を低くしたものを使うようにしましょう。

準備で間に合わないときに,Mgイオンが少ない(水酸化マグネシウムによる影響が少ない)大粒の塩を

低濃度で使う工夫をとります。

つまり,市販の食塩の飽和に近い濃度(25%)ではpHは9前後(弱アルカリ性,リトマス紙が青くなる)のことが大半です。

参考; 新野ら,日本調理科学会誌,32,133-144(1999).

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/32/2/32_133/_pdf/-char/ja

令和2年1月2日 作成